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丈夫なだけが、取り柄です…  作者: かたこり
1章 始まり - 森の中
67/97

67 小部屋

僕らは、大クモの部屋を通り過ぎ、先へ進んだ。

穴はもとのせまさに戻り、通路のような洞窟だった。

生き物の気配はなく、右に左に曲がっているが、一本道だった。

洞窟は、唐突に行き止まりになった。

行き止まりの壁面の前に、大きな岩があるが、それだけだった。

念の為に大岩の裏側を見てみたが、何もない。

『ウホッ?』

ウホウホが首をかしげている。

「どうしたの?」

ウホウホが、自分の長い腕の毛を指差している。

毛はサワサワとそよいでいる。

僕が近づいていくと、ウホウホは大岩の裏に廻り、しゃがみこんでいた。

大岩の陰になった下の方の壁面に、地面と平行な隙間があるようだ。

ウホウホがふせて、やっと通れる隙間だった。

ウホウホは、隙間に消えていった。

ためらわず入って行ったところを見ると、怖い生き物の匂いも音もしないようだ。

僕も後を追って入った。


中は漆黒の闇。

目に精気を込めても、それほど広くはない部屋のようになっているのが、なんとなく分かるだけだ。

僕はマグマの短剣に、精気を流した。

あたりが照らされ、部屋の状況が見える。

ここは、誰かが住んでいた隠れ家のようだ。

大穴の底にある植物で作った、簡素なベッドや棚や机があった。

ベッドが3つあるところを見ると、3人いたのかもしれない。

ひとつのベッドに、骨になった亡骸がある。

亡骸は、綺麗な糸で複雑な模様を織られた生地を使った、手の込んだローブを着ていた。

ベッドの脇には、不思議な光を放つ石の埋め込まれた、黒光りのする木の杖が立てかけてある。

サイドテーブルには、革表紙のノートが広げてあり、ペンは机の下に落ち、インクつぼは倒れて、インクは乾いて机のシミになっている。

ノートを見てみたが、知らない文字が並んでいる。

「知らない文字?」

ふと、我に返る。

僕にも知っている文字が、あるような気がする。

ベッドから離れた棚には、質素な手作りの食器、ローブと似た生地で作られた肩掛けカバン、柄にどこかで見たようなしるしの彫られたナイフなどが、置かれている。

ここに持ち込まれたもののほとんどからは、何かしらの精気を感じる。

カバンの中からも、強い精気を感じる。

カバンを開けてみると、中には古い4つ折りの紙と、イガイガの玉が3つ入っていた。

イガイガの玉は、おそらく爆裂玉。

投げて衝撃を与えると、爆発するものだと、聞いたことがある。

4つ折りの紙は、強い精気を放っている。

開いてみると、地図だった。

おそらく、この洞窟の地図だ。

ただの地図が、どうして強い精気を放っているのかは、わからない。

もう一度、棚や机、部屋の中を見回してみた。


ここにあるものは、これですべてのようだ。

僕は、なんとも言えないせつない気持ちになった。

ここから出られなくなった者が、この程度の荷物しか持っていなかったことが、気の毒でならなかった。

そして、最後には一人きりになってしまったのだろう。

どんなに、寂しかったことか。

どんな絶望の中で、身体が弱っていったのか。

僕は、どうにかして、この亡骸の書いたノートの内容を知りたくなった。


僕は、ここに亡骸が持ち込んだ道具を、なるべく多く持ち出すことに決めた。

亡骸からローブを脱がすのは、申し訳なく感じたが、このローブには何らかの強い力があり、ここで終わらせるのはローブが気の毒だと思った。

ローブを脱がせた亡骸には、毛布だったと思われる布をかけた。

僕は、ウホウホにローブを着せ、カバンをかるわせ、杖を持たせた。

ウホウホは妙にたかぶって、はしゃいでいる。

杖を片手に持ち、前に突き出し、

『ウホへっ』

と唱えると、電光が杖の先からほとばしった。


ウホウホは、目を丸くして驚いていた。

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