62 大穴の中央
僕は、壁際に戻る前に、大穴の中央を振り向いた。
生き物の気配ではない。
でも、なんかある。
なんか、嫌じゃない、知ってるような知らないような気配。
僕は、考えていた。
トゲアリも、その他の攻撃的な気配もずっと感じていない。
少しぐらい目立っても、大丈夫なんじゃないか?
『もっと、明るくしてもいい?』
ウホウホに聞くと、けげんな顔でマグマの短剣を見て、コクコクとうなずいた。
僕はマグマの短剣を大穴の中央上空に向け、精気を爆ぜさせた。
マグマの短剣は、答えてくれる。
赤く明るい巨大な火の玉を、剣の先端から吐き出す。
僕は、火の玉にごっそりと精気を持っていかれたようで、ひざの力が抜ける。
火の玉は、辺りを照らしながら大穴の中央付近まで、飛ぶ。
そして、僕のイメージのままに、弾けて無数の明るい雨粒のようにゆっくり降り注いだ。
大穴の中は、昼間のような明るさになった。
すると、大穴の中央に巨大な山があるのがわかる。
全体的に普通の三角の山だが、表面がおかしい。
小さく直角に角ばった表面に、もっと小さな四角い穴が、無数に開いている。
この巨大な、表面に四角い穴のあいた山を、僕は見たことがあるかもしれない。
そして、その巨大な山の周囲には、ずっと小さな山が、点在する。
小山の表面は深く凸凹していて、穴は影になって見えない。
僕は、感情のない、でもとても不気味な気配が、数え切れないくらいに湧き上がるのを感じた。
そして同時に、小山の表面の凸凹から、何かがわらわらとあふれてくる。
『ウホウホ、かくれるぞ!』
僕は、近くで一番巨大な、シダのような植物に、ウホウホとともに登った。
葉が異常に多く、毛深いおかげで、僕たちの体はすっぽりとかくれた。
火の玉の明かりは、すぐに散って燃えつきた。
その後も、地面を巨大なアリの大群が覆いつくしていて、小さな虫や小動物は跡形もなく、じゅうりんされた。
小さな下草も、踏みつぶされ、土にかえった。
僕は、自分でも知らぬ間に目に精気を込めていて、暗闇の中をぼんやりと見ることができた。
ウホウホを見やると、野生の視力は人間とは違うのか、やはり地面の上の惨劇が見えているようで、ガタガタと震えていた。
僕らは、ただ時間が過ぎるのを、待つだけだった。




