58 角猿の言い分
僕は5匹の小猿を見下ろした。
小猿といっても、僕よりもずっと大きい。
小猿たちは、恐怖と困惑で、落ち着きなく視線をさまよわせている。
『あいつをどこに落とした?』
小猿にわかるように伝えた。
『あいつがわるい』
『あいつはぼくらのくだものをとった』
『おとされても、しかたがない』
小猿は口々につぶやいている。
『どこに落とした??』
僕は、怒気を爆発させて、怒鳴った。
『やめて、いじめないで』
『むしのあなだよ』
『とうぜんのばつだよ』
僕は、自分の耳を疑った。
あの、深くて怖い虫の穴に、同類を落とすのか?
『どこから、落とした?』
僕は、怒りで自分を見失いそうになりながら、聞いた。
『どうくつのそば』
『すべりおちるところがあるんだよ』
『すぐにはしなない』
『しなずにおりられる』
『でも、ぜったいあがってこれない』
僕は目をつぶって、頭を振った。
『僕を連れていけ』
と、急に大きな気配が現れ、殴りかかってきた。
大人の猿たちが、小猿の危機を感じ取ったようだ。
僕は両手で頭を守り、足に精気を込め、大きく下がった。
身体が小猿の倍近くある、7匹の角猿が小猿の前に立ち、こっちをにらんでいる。
小猿たちから、状況を説明されているようだ。
『なんだ、なにがわるい?』
小猿の説明が終わると、角猿が言った。
『ここは、おれたちのなわばり』
『おれたちのくだもの、ぬすんだ』
『まえから、ぬすまれてた』
『あいつがわるい』
『おれたち、わるくない』
『なんでこどもいじめる?』
口々に言いながら、角猿たちの気配が攻撃色に変わっていく。
『ウホウホは、僕の友達だ』
僕が、怒鳴った。
『ともだち?』
『にんげんのくせに?』
『どろぼうの、ともだち?』
『ともだちってことは、こいつもどろぼうだ』
1匹の角猿が腕を振りかぶって殴りかかってきた。




