57 ウホウホの不在
翌朝、目が覚めると、ウホウホはいなかった。
しばらく待ったが、帰ってこない。
気配を探ったが、とらえることはできなかった。
僕は、隠れ家の木を降りて、魚を獲った川に向かった。
そこにもウホウホは、いなかった。
滝に行ってみた。
やはり、いなかった。
洞窟にもいなかった。
座って、集中した。
大きな気配が集まっている。
それが、何か所かある。
猿は、集団で行動する。
なんでウホウホは、いつも1匹なんだ?
僕は、一番近い集団に近づいた。
大木が集まっているところに、ウホウホの隠れ家を大きくしたみたいな住処があった。そこには、20匹以上の猿がいた。
ウホウホくらいの子供の集団と、大人の集団に分かれている。
ウホウホより大きな猿には角が生えていた。
おとなになったら、生えるのだろう。
子供の集団は、前に感じた気配だ。
ヤツらに聞いたら、なにかわかるかもしれない。
大人の角猿も、それほど強そうではない。
それでも、これだけの数を、一度に相手にするのは、たいへんだ。
しばらく、様子をうかがうことにした。
小猿たちが、はしゃぎながら走って移動を始めた。
僕は、気配を消したまま、追った。
果物の実がたくさん成る木の前で、小猿たちは実をもいでは食べ始めた。
探知の気術で小猿たちの話を聞いた。
『あいつは、仲間じゃない』
『あいつは、俺達の果物を採った』
『あいつが、悪い』
『あいつは、いなくなった方がいい』
『あいつは、落ちて当然だ』
僕は、小猿たちの前に出た。
小猿たちは、目を見開いて驚いている。
しかし、相手が人間の子供がひとりだとわかると、ニヤニヤ笑いだした。
『コイツはなんだ?』
『弱い、人間だ』
『弱い人間が、何でここにいる』
『弱い人間が、俺達の果物を取りに来た』
『弱い人間を、やっつけろ』
小猿たちが、いっせいに飛びかかってきた。
僕は、殴りかかってきた最初の1匹目の腕を掴み、力まかせに振り回した。
2匹目に叩きつけ、3匹目の腹を蹴り上げた。
たたらを踏む4匹目に飛びかかり、顔面に頭突きを叩き込む。
逃げようと背を向けた5匹目の尻を、蹴り上げた。
僕は、戦意を失った5匹の小猿を見下ろした。




