55 猿の隠れ家
猿のいる大木に登ると、上が開けていた。
枝と枝の間が平らで、その上に曲がった幹があった。
草を敷いてあり、この猿の寝床なのだろう。
ばあちゃんちのように広くはないし、家のように屋根も作っていないが、それなりに居心地のよさそうなところだった。
「あいつらは、敵か?」
僕は聞いてみた。
猿は首を傾げて困った顔をしている。
「あいつらは、味方か?」
もう一度、聞いてみる。
やはり、困った顔をしている。
言葉は、通じていないようだ。
あの複数の気配は、この猿の気配に似ていた。
でも、もっと攻撃的で、嫌な感じがした。
「僕、ゴロゴロ。おまえ、名前はあるのか?」
僕は、聞いてみた。
「ウホッ、ウホッ。」
「そうか、ウホウホか。よろしくな。」
僕らは、友達になった。
僕らは、猿の森の中を歩いた。
やはり、地上よりも木の上を移動したほうが楽だった。
僕はウホウホのあとを、ウホウホの真似をして移動した。
僕の手のひらは、猿のように大きくないので、ウホウホのように枝をつかんでの移動は、難しかった。
でも、僕のほうが身が軽く、ジャンプ力があったので、木の上を移動することには、慣れていった。
川の近くに行ったが、さっきの気配はもういなかった。
僕が岸から、弓で水中の魚を射った。
けっこう大きな魚で、2尾でじゅうぶんそうだった。
僕は、マグマの短剣で火を起こすと、さばいた魚を焼いた。
魚からはよい匂いが漂ってきた。
ウホウホは、僕が魚をさばいている段階で、よだれを垂らしていた。
それを待たせて、塩を振って焼いている。
ウホウホは乗り出して、僕と魚を見くらべている。
「ウフンフン?」
僕に、聞いてくる。
僕は、面白いことに気がついた。
探知の気術を使っていると、言葉はわからないが、相手が言っていることの意味がなんとなくわかるのだ。
「まだ、食べちゃダメ?」
ウホウホは、僕に聞いている。
じゃあ、逆もできるのか?
「いいよ、食べても!」
僕は、気術に気持ちをのっけて、相手に送ってみた。
「ウホッ」
ウホウホは、うれしそうに串に刺さった魚を食べ始めた。
夜は、ウホウホの隠れ家で、眠った。




