54 猿と果物
僕は、荒れ地を離れ、新たな森の中へ入っていった。
だんだん木々が増え、荒れ地は見えなくなった。
木々の密度はどんどん増し、元いた森よりも濃くなった。
下草も背丈よりもあり、上からツルがぶら下がっている。
植物の種類も違うようだ。
しばらく行くと、すこし開けた場所に出た。
よく見ると、それほど広くない川が流れている。
僕は、川に近寄り、気配を探った。
川の中に、大きな気配はないようだ。
水は、キレイだ。
飲んでみたが、冷たくはないが、うまい。
僕は、水袋を水で満たした。
水袋のフタをしていると、後ろから何かが飛んでくる。
修行のおかげで、常に周りの気配を探るようになっている。
僕は振り向いて、ゆっくり飛んでくるそれをつかんだ。
黄色い果物だ。
飛んできた方を見上げると、大きな木の枝の上に、巨大な黄色い猿がいた。
気配は緑色で、疑問、好奇心、の黄色が少し混ざっている。
首をかしげて、僕を見ている。
「これ、くれるの?」
僕は、聞いてみる。
猿は、手のひらを上に向けて、どうぞどうぞと動かしている。
僕は、食べてみた。
とても甘くて、美味しかった。
「ありがとう。」
僕は、言ってみた。
「ウホッ。」
猿は言って、頭を前後に揺らしている。
言葉が通じているのかどうかは、わからない。
と、遠くから、複数の気配がこっちに向かっていることに気づいた。
猿も少し遅れて感じ取ったらしく、緊張と恐怖の気配が感じ取れた。
猿は、複数の気配とは反対方向を指差し、そっちに行けというように手を振っている。
そして、猿は木の上を移動し始めた。
僕も、木の下を、木と草をよけながら走った。
木の下は走りにくかったが、動きは僕のほうが速いので、同じ速さで移動することができた。
複数の気配とは、どんどん離れていった。
この猿はそれほど気配を隠すのがうまくはないが、相手の察知能力も低いのだろう。
猿は、大木が多く並ぶ中の一本の上から僕を見下ろして、手招きしていた。




