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53 行く先
僕は、後ろ向きに跳び下がり、親分と距離をとった。
親分は、静かな目で僕を見ていた。
親分の気力も体力も、ぜんぜん消耗していなかった。
まだまだ、お互いに戦えた。
でも、もう、よかった。
僕は、じゅうぶん戦えた。
僕は、頭を下げて、親分に背を向けて走った。
親分の気配は、動かなかった。
翌朝、飯を食って、狩りをした。
いい大鹿を仕留めたので、親分にお礼のつもりで持っていった。
いつもの場所に、親分はいなかった。
なんか、親分はもう帰ってこない気がした。
それでも、僕はそこに大鹿をおいて立ち去った。
これからどうしよう。
オスの牙熊と戦えるようになるための旅だった。
でも、牙熊は、どうでもよくなった。
いくらでも強いヤツはいるし、知らない世界がある。
まだ、知ってるところに戻りたくない。
僕は、もと来た方に背を向け、歩き出した。




