49 ひとりで修行
その日の夜は、残りの肉を食って、考えた。
肉体的なスピード、力、防御力。
どの点でも、あの鎧獅子にはぜんぜんおよばない。
そもそも、身体の重さが何倍も違うのに、スピードでも圧倒されていた。
スピードを上げる方法。
筋力を上げるのは、すぐには無理だ。
少しずつ上がるのを、待つしかない。
ばあちゃんに教えてもらい、ミカンに磨いてもらった精気の使い方を考え直した。
もっと、身体を使う時に、精気に助けてもらう。
僕は立ち上がって、強く飛び出した。
その瞬間に、踏ん張る足に、精気を強くのせた。
僕は、バランスを崩して、激しく転がった。
蹴る足が強すぎて、踏み出す足が追いつかない。
これでは、右足と左足、別の人が操ってるみたいだ。
僕は同じことを、夜が明ける頃まで繰り返していた。
目が覚めると、日が高く昇っており、汗ダクになっていた。
僕は、すぐに昨日の続きを始めた。
やはり、あまり強く精気を込めると、自分の身体をうまく扱えない。
どうにかうまく動かせる、弱い精気から慣れていくしかないようだ。
僕は、常に身体を動かすときには精気を込めて、速く強めに動かすことを、意識した。
その状態で、走り廻った。
もうひとつ、僕が決定的に鎧獅子に劣るのは周りの察知力だ。
ヤツの動きをとらえきれていない。
僕は、常に周りに探知の気術を張り巡らした。
最初は狭く、だんだん、少しずつ広く。
これは、極端に精気を消耗した。
精気の無駄遣いをおさえるために、探知をとぎすませた。
1日の修行を終えると、死んだように眠った。
大鹿や大うさぎは、弓矢を使わずに追った。
数日で、直線では大鹿や大うさぎに追いつけるようになったのだが、いつもまっすぐには走ってくれなかった。
獲物に曲がられてしまい、あせってそれについて行こうとすると、曲がりきれずに転がった。
そのうちに、探知で獲物が曲がる予兆がわかるようになり、曲がられてもついていけるようになった。
そうやって、何日も過ごした。
今では、少しの精気ならまとったまま、動けるようになっていた。
走れるし、曲がれるし、弓も使えるし、剣も使える。
あの、鎧獅子にコテンパンにやられてから、ひと月以上たっていた。




