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丈夫なだけが、取り柄です…  作者: かたこり
1章 始まり - 森の中
36/97

36 逃走

岩穴に入ると、ドリアンがけわしい顔をしている。

「大丈夫か。ひどい格好をしているぞ。」

言われて、自分を見てみた。

はあちゃんに作ってもらった革の胸当てがボロボロだった。

片方の肩当てはなくなっている。

「まあ、大丈夫かな。ちょっと左手が使えないけど。それより、逃げるよ。痛いと思うけど、我慢して。」

僕は、ドリアンを背負い上げた。

「ぎゃー。」

ドリアンの折れた足が動き、悲鳴を上げた。

僕は、かまわずに入り口から飛び出た。

牙熊の炎は消えていたが、苦しげに激しく頭を振っていた。


僕は気配を消して、牙熊と反対方向に走り出した。

ドリアンは、さすがだった。

痛いだろうに、声をあげずに気配を消していた。

後ろを素早く振り返ると、牙熊は僕らが逃げ出していることに気がついて、こっちに向かっていた。

僕は無心で走った。

牙熊のほうが僕よりも速いはずだが、頭のやけどのせいか、距離は縮んでいなかった。

牙熊はときどき、いまいましげに吠えている。

僕らは気配を消しているので、牙熊の視界の外に出れば、逃げ切れるはずだ。

「そこを左。」

しばらく走ると、背中から苦しげな小声が聞こえた。

「大きな木を右。」

なんどか、指示にしたがって走ると、背後の牙熊の気配は、なくなっていた。

速度をおとして、ゆれないような歩きに変えた。

「この先を、右に行けば、メスの牙熊が倒れている。大きな木の上にベリーがおるはずじゃ。」

「2人いっしょには運べないよ。いっぺん小屋に帰ろう。」

僕が言うと、ドリアンは無念そうに同意した。

背中では、苦しそうな息づかいが続いている。

ドリアンの言ったとおりに進むと、ドリアンの小屋に着いた。

ドリアンをベッドに寝かせ、水を飲ませると、僕は小屋を出た。

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