34 牙熊と僕
僕は、牙熊に全速力で飛びかかっていった。
短剣を抜き、牙熊の頭頂部に精気を込めて、振り下ろす。
牙熊は頭を引き、短剣をかわす。
そのときには、牙熊の爪が僕にせまっている。
僕は爪だけを最低限よけ、牙熊の手首に乗る。
牙熊の振り抜く腕に投げられ、僕は岩壁にビタン、と貼り付けられた。
すぐに、牙熊は飛びついてきて、僕に向けて爪を振り下ろす。
僕は、どうにか牙熊の爪をかわし、岩穴に飛び込む。
「ふーっ。」
僕は、ため息をついた。
「ムチャをしおる。」
ドリアンは、呆れている。
「どうじゃ、なんとかなりそうか?」
「強いね、僕よりずっと。速いし、強いし、硬い。今の僕じゃ、勝てそうにないや。」
「そうじゃろ。ヤツはどうにもできん。」
ドリアンが声を落とす。
「どうにもできないから、逃げよう。」
僕は、言った。
「ヤツが逃がしてくれるわけがなかろう。ヤツは、ワシを許さん。どうあっても、復讐を果たす気じゃ。」
「とりあえず、ここからは逃げられると思うよ。あとのことは、あとで考えよう。」
僕は、腰の剣を外し、肩にかけていたカバンの中のマグマの短剣と取り替えた。
「こいつに助けてもらう。」
サヤから抜くと、マグマの短剣は、妖しい光を静かに放っている。
「そ、それは…。」
「知ってるの?」
「なんとも美しい剣じゃ。強大な力をたたえている。」
「うん。こいつも僕よりずっと強い。」
僕はうなずいて言った。
「準備しといて。」
僕は入り口の手前で、ドリアンを振り向いて言った。
「準備するものなぞ何もないぞ。」
「心の準備をして、気配を消しといて。」
僕は、入り口から飛び出しながら付け足した。
「たぶん、とっても痛くなるから。」




