33 ドリアンの話
「おまえは、どうやってここから出ていくのだ?」
ドリアンが聞いた。
「考えてない。」
「へ? でも、なんか、手は打ってあるのじゃろ? 上からツルをたらすとか、助けを呼びに行かせてるとか?」
「ツルなんか持ってないから、たらしてないし、ひとりで来たから、助けなんか呼ばせてない。」
「なにしにきたんじゃ!!」
また、ドリアンがどなった。
「ひとの大雷魚と水、全部たいらげといて、よく言うよ。」
僕は小さな声でぼやいた。
「聞こえておるぞ! おまえは、ここでワシと心中するつもりか?」
「僕はやられるつもりはないよ。ドリアンさんもね。」
「なんじゃ、やっぱりおまえは、強いのか?」
ドリアンが怪訝な顔になる。
「いや、弱いよ。こんなに自分が弱いと、思ってなかったよ。やっぱり、強いヤツがいるんだね。この森にも、森の外にも、たくさん。」
「変なやつじゃ。自分が弱いのに、うれしそうじゃ。」
「ここから助け出したら、弓矢を教えてもらうよ? もう一頭の目を射抜いた矢、スゴかった。」
僕が、心からの尊敬を込めて言うと、ドリアンは誇るでもなく、微笑んだ。
「見たのか。メスの死骸を。牙熊に手を出すつもりはなかったんじゃ。ベリーに弓矢の指導をしていたら、突然、襲われたんじゃ、牙熊に。なかなか、強いメスじゃった。やっと倒したと思ったら、つがいが出てきおった。コイツは、別格じゃった。自分の弱点も理解しておる。目など射たしてはくれんかった。スピードも力も、メスの比ではない。そして、つがいをしとめた、ワシに対する怒り、うらみがすさまじい。ワシも、久しぶりに、自分が弱いことを思い出したよ。」
ドリアンは、静かに微笑む。
「そうじゃ、ベリーじゃ。あいつも背中に爪の一撃をもらっておる。早く治療せんと、助からんぞ。メスの死骸の側の大木の上に寝かせてある。いや、もう何日も経つ。ダメかもしれんのう。ゴロゴロと言ったか。おまえだけでも、ここから出られるのなら、ベリーのところに行ってやってくれ。ダメだったとしても、身体をドンブリに届けてやってくれ。」
ドリアンは、無念の表情をうかべた。
「どうなるかは、わからない。ちょっと、試してくるよ。」
僕は、穴から飛び出した。




