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丈夫なだけが、取り柄です…  作者: かたこり
1章 始まり - 森の中
31/97

31 牙熊

その牙熊は、岩壁の前に座って、岩にあいた小さな穴をにらんでいた。

岩壁の近くには木がなく、少し離れたところの木もなぎ倒されていて、見通しがよくなっている。

これでは、牙熊から隠れる場所がない。

牙熊の身体には、十本以上の矢が刺さっているが、それでダメージを受けている気配はない。

穴の中には、弱い気配がある。

たぶん、ドリアンだろう。

この牙熊は、ドリアンが飢えて出てくるのを待っているのか。

でも、ベリーはどこだ?

岩穴の中からは、ひとつの気配しかしない。

僕がわからないほどに、完全に気配を消せるのか?

いや、ちがう。

穴の中にはひとりしかいない。

どうする?

後ろから、牙熊を攻撃するか?

いや、効かないだろう。

時間をかせいだところで、ドリアンが自力で逃げ出せるかどうかは、わからない。

穴の中の気配が弱い。

気配をかくしているのではなく、弱っている。

穴の中に入ってみるか。

出るのは大変そうだけど、入るのは簡単そうだ。


僕は、気配を消したまま大きく回って、ずっと離れた岩壁に近づいた。

穴のある場所の岩壁のように、まっすぐ切り立っているわけではなく、ところどころに段があり、登りやすい。

登りきって上を歩き、牙熊から見えないように、穴の真上まで来た。

そっと、牙熊の位置を確認すると、ここが穴の真上であることは、間違いなさそうだ。

僕は、素早く飛び出し、穴に向けて飛び降りた。

気配を消したままなので、牙熊は気がついていない。

だいぶ落ちたところで、僕は牙熊の視界に入った。

牙熊は素早く立ち上がり、こちらに向かって大きく跳んだ。

僕が着地寸前に浮遊の気術を使い落下を止めると、牙熊の爪が僕の目の前にせまっていた。

僕は、瞬間的に下に出していた精気を、牙熊の方に切り替えた。


僕は、激しく穴の中に転がり込んだ。

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