29 上流へ
似たような景色が続く。
生えている植物も、住んでいる生き物も、変わらない。
昼に休憩をとって、さらに歩き続けた。
日が傾きかけると、少し、景色が変わった。
葉の茂りかたが、だんだんまばらになり、歩きやすくなってきた。
枝の隙間も多くなり、空がだいぶ見えるようになってきた。
気温も下がってきたのか、汗が落ち着いてきた。
川岸の地形を見ながら歩き、村長とばあちゃんの話から、見当をつける。
たぶん、もうすぐだ。
大きな岩が、2つ出てきた。この上の斜面を登れば、ドリアンの小屋があるはずだ。細い道を登ると、崖のくぼみに木で作った柵が見えた。
人間がやっと通れる岩の隙間を通り、柵の前まで来た。
これならば、大型の獣は柵までたどり着けない。
中には、人の気配はない。
「ドリアンさん。いますか?」
大きな声で、呼んでみる。
返事はない。
柵には門があるが、外からどうやって開けるのかがわからない。
ミカンに習った、浮遊の気術を試してみる。
僕は、うまくバランスをとって上がることは、まだできない。
岩壁に向いて、傾いて身体を岩壁に押し付けるように、少しずつ上がっていく。
プルプルと身体が震えている。
今にも落ちそうだ。
どうにか柵の上を超えていく。
柵の先が尖っているのが、とても危ない。
僕のおしりにめり込んでいるけど、怪我はしていない。
完全に柵を超えてから、集中を解く。
地面に向かって激しく落下を始め、無様な格好で着地する。
立ち上がって、土ぼこりを払う。
小屋と言うには立派な建物だった。入口を引くと開くが、やはり中に気配はない。
部屋の中は片付いているが、今朝まで人がいたような空気ではない。
机の上にも、気術を使わないと気がつかない程度に、ホコリが薄っすらとかかっている。
「しばらく、留守にしているみたいだな。」
小屋の中の椅子や、食器や、壁にかかった弓矢から、ドリアンの精気の波長を探る。
中には、違う気配も混ざっている。
ベリーが来ていたのかもしれない。
ドリアンの気配をたどって、表に出る。柵の入口は内側からは簡単に開いた。
よく見ると、外側からも狭いところに手を突っ込めば、開けられるようになっていた。
僕は、さっき登ってきた狭い道を、ドリアンの気配をたどって降りていく。




