25 ズッキーニ
村長が帰ると、少し離れた木の陰から、人相の悪い男が出てきて近づいてきた。
村長と歩いているときから、人の気配が着いて来ているのには、気がついていた。
背が高く、身体もガッシリとしている。
目つきが鋭く、頭に毛も眉毛もないのに、ヒゲが濃いので、ちょっとこわい。
「あんた、強いらしいな。大イノシシを狩れるらしいじゃないか。」
男は、野太い声で言った。
「うん、大イノシシは、狩れるよ。」
僕は、答えた。
男は突然、頭を下げた。
「たのむ、俺をあんたの弟子にしてくれ。そして、どこでも連れて行ってくれ。あんたのじゃまはしない。」
男は頭を低く下げたまま、話し続ける。
「俺はズッキーニっていうんだ。身体はデカいし力はあるが、ビックリするぐらい弱い。剣もからっきしだし、弓矢も当たらない。」
ズッキーニは大きな声で断言する。
「でも、外の世界を見たいんだ。村の塀の中で過ごすのは、もうたくさんだ。」
僕は、なにも言えなかった。
僕はこの村が、美しくて良い村だと思う。人もやさしい。
でも、僕は、この村には住めないと思っていた。
僕は、森の中で暮らしたい。生き物の中で暮らしたい。
村を出たドリアンの気持ちも、村を出たいズッキーニの気持ちも、よくわかる。
でも、どうすればいいんだろう?
僕は、これから強くなるんだ。
弟子を持つなんて、できるわけがない。
「僕は、これからいろんなところに行く。大イノシシよりももっと強い獣とも戦うことになる。それで、少しずつ強くなるつもりだ。ズッキーニを守ることはできない。」
「守ってもらわなくていい。俺は丈夫だ。」
ズッキーニは強い目で言った。
僕は驚いた。
僕だけじゃないんだ、丈夫なのは。
「それでも、無理だ。これから行くのは、大イノシシと戦える僕でも無事ですむかどうかわからないところだ。」
ズッキーニは、頭を下げたまま動かない。
ズッキーニからは、真剣で強い緑色の精気がユラユラと立ち昇っている。
ズッキーニは真剣だ。それに、この精気は、弱い人のそれだとは思えない。
「わかった。今は連れていけないけど、戦い方を教える。次に来たときに、自分で身を守れるようになっていたら、いっしょに旅をしよう。」
ズッキーニは、抱きついて感謝の気持ちをあらわそうとしたが、僕はよけた。
もう、日が傾きかけているし、キウイたちにも教えた基本的なことを教えないといけない。
結局、ミカンの家に戻ったのは、日が暮れてからだった。




