18 ドコンの村
ドコンの村に着き、リーダーのコメが門の中に声をかけると、門が開いた。
門の中にはたくさんの人が集まっていた。
「ご苦労であった。怪我はないか?」
小柄なのに、どこか貫禄のある白ひげのおじいさんが、リーダーのコメに聞いた。
「ええ、誰も。我々は何もしていないので。」
コメが、気まずそうに答えた。
「どういうことじゃ?」
コメたちに運ばれてきた大イノシシを見下ろして、おじいさんがきいた。
「このゴロゴロが、ひとりでしとめました。」
コメたちが僕を見て言うと、みんなが僕を見た。
「子どもじゃないか。」
「まさか…」
「大イノシシをひとりで?」
周りがざわついた。
「いや、本当のことじゃろう。」
白ひげのおじいさんが、僕をじっと見据えて言った。
おじいさんの視線に、なんか体の中にふれられてるような、不思議な感覚をおぼえた。
「村長、そんな…。」
周りの人たちは、それでも信じられないという顔をしていた。
「ワシが村長のドンブリじゃ。ゴロゴロといったかな?村を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとう。」
貫禄のあるおじいさんが、頭を下げている。
なんだか、くすぐったい。
「うん、わかった。」
僕は、照れ笑いで感謝をうけとった。
「ゴロゴロも知ってのとおり、大イノシシは力が強くて、気性が荒い。放っておいたら、村や畑がめちゃくちゃにされてしまう。この村の精鋭4人に託したが、正直なところ、コメたちも無事ではすまないと思っておった。」
コメたちも、だまってうなずいていた。
「この村まで、大イノシシが下ってくることは、めったにないのじゃがな。数が増えて、縄張りを勝ち取れない若いヤツが、ここまで来たのやもしれん。」
僕はうなずいた。
やっぱり、僕も思っていたとおりのようだ。
いままで、ばあちゃんと2人の食べる分しか狩らずにきたが、よく状況を見て、考える必要がありそうだ。
「この大イノシシは、ゴロゴロが対価なしでゆずってくれるそうです。」
コメが、村長に報告した。
「よいのか?」
村長が僕を見る。
「いいよ。」
「そうか。それは、ありがたい。」
村長がうれしそうにうなずいた。
「それではみんな、うたげをひらこう。ゴロゴロを歓迎しようではないか。」
みんなの歓声がわきおこった。
村の中心の広場で、猟師や女性たちが手ぎわよく大イノシシを焼き、みんなに配った。
僕にも、焼かれた大イノシシ肉を持ってきてくれた。
肉を頬張っていると、次々と僕の周りに人が集まってきた。
たいていは、大イノシシ退治と肉のお礼だった。
「ウチの畑は、ポリポリの実がちょうど成っているところなんだ。大イノシシに畑に入られたら、全部やられるところだった。助かったよ、ありがとう。」
「大イノシシ肉なんて、初めて食べるわ。脂が乗っていて、とても美味しいわ。ありがとうね、おにいさん。」
また、強くなるコツを聞きにきた、若い猟師もいた。
「大イノシシが来る前に、ガッと行って、ズドンとすれば…。」
僕がていねいに説明すると、微妙な笑顔を残して、去っていった。
僕と同じ歳くらいの少年と少女たちもよって来た。




