15 行動範囲を少しひろげてみた
大イノシシに勝てることがわかり、僕の行動範囲は少しひろがった。
ばあちゃんに聞くと、川よりこっち側で、反対側は岩山までが大イノシシの縄張りということだ。
つまり、そこから出なければ、それより強い獣は、基本いない。
そして、その大イノシシの縄張りは、とても広い。
どのくらい広いかというと、ばあちゃんによると、川から岩山までが、僕が普通に歩いて日の出から日の入りまでかかり、その直角方向は川に沿って歩いてまる一日以上かかるらしい。
ここで、少しばあちゃんの話。
ばあちゃんはここに住み始めるとき、水場は絶対に必要なので、川の下流から、川に沿って歩いて観察した。
ばあちゃんが倒せる、もしくは逃げられる獣のテリトリーで、一番安全に住めそうだと判断したのが、今の木の家だ、ということだ。
つまりこのあたりは、この森でもっとも安全な区域だということになる。
大イノシシが、ウロウロしているのに…。
ここからずっと下流には、狩猟民の小さな集落が、いくつかあるらしい。
そして、ここからずっと上流には、狩猟民のある村を出た老人が、ひとりで住んでいるということだ。
「まだ生きてるかは、わからんがのぅ。」
と、ばあちゃんはなにかを考える顔になった。
僕は、これまで人を避けて生きてきた。
ばあちゃんは、僕に人を避けろとは言ったことはなかった。
でも、ばあちゃん自身は、人を避けているように見えた。
だから、なんとなく、人の気配を感じると、気配を消してやり過ごしていた。
僕は、少し強くなり、いろいろなことを知りたくなった。
この、森のことを。
森の外の世界のことを。
そして、いつかは、僕がどこから落ちてきたのかを。




