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貴族様と言われたい  作者: チョウリョウ
第2章  デリア国編
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スベッチの望み(スベッチ編)

# 堅城の悲劇


## 難攻不落の白鳥


月光に照らされる白鳥の城壁は荘厳だった。高さ十メートルの漆喰塗りの壁が十二キロにわたって円を描く。その上にはカタパルトが整然と並び、守備隊の威容を見せつけていた。


「まるで巨大な鳥籠だな」

幻影は偵察兵からの報告を受けながら冷ややかに笑った。「だが……」


「狩りが楽しくなりそうだ」


## 開戦の狼煙


夜明け前から戦いは始まった。

幻影の軍勢1万が四方から押し寄せる。一方、白鳥の守備は弓兵三千のみ。圧倒的な兵力差だった。


だが意外なことに——戦況はスベッチ《弓》側に傾き始めた。


「射よ!敵を寄せ付けるな!」

スベッチ《弓》の号令と共に千の矢が雨あられと降り注ぐ。漆喰塗りの壁は梯子をかけることを困難にし、カタパルトからは大石が投擲される。幻影の兵は次々と倒れていく。


「やるな」

幻影の影は冷静に戦況を街の中から観察していた。「だが……」


彼の唇に不吉な笑みが浮かぶ。「罠には気づいていないようだな」


## 影と真実


戦闘が三日目に突入した頃、変化が起こった。幻影の姿が見えないのだ。彼は常に先頭に立ち指揮を執るタイプだったはずなのに。


「おかしい……」


スベッチが眉をひそめる。弓兵の一人が不安げに進言する。


「将軍、敵の動きが妙です。まるで……」


「時間稼ぎをしているようだと言いたいのか」


スベッチは窓から遠くを見る。確かに幻影の姿はない。だが城壁を取り囲む軍勢は確かにそこにいる。


「油断するな」

彼は自らを鼓舞するように言った。「このまま持ちこたえれば……」



突然背後から近づいてくる足音にスベッチ《弓》は凍りついた。



振り返った彼の目に映ったのは——幻影の冷徹な顔だった。



「な……!」


「私が先頭に立つのを不審に思わなかったのかあれは影だ?光雷卿の真似だ」

幻影がゆっくりと近づいてくる。「最初から白鳥の中に入っていたのだよ」


「内通者か!」


スベッチ《弓》は腰の刀に手を伸ばすが——


「遅い」


首筋に冷たい感触。幻影の斧が彼の命脈を捉えていた。


「降伏しろ」


「ああ間抜けだな逃げることもできないなんて」


# 法廷の空虚


降伏したスベッチ《弓》

「処刑しろ!」「すぐに殺せ!」



群衆の怒号が白鳥の広場を埋め尽くす。スベッチ《弓》の敗北が宣言された瞬間から始まった歓喜の声は、今や狂気に変わっていた。


「静粛に!」


壇上で凛とした声が響く。女政治家が毅然とした態度で前に出た。


「スベッチは罪を犯した。だが法に基づいて裁かれなければならない。感情に流されず正当な手続きを——」


「士気が落ちる」


女政治家の言葉を遮ったのは幻影だった。ともに戦った兵を見下ろした。


「今の自由を勝ち取るために動く集団だ。君たちの怒りは分かる。即刻処刑しよう!!」


「だからといって処刑は法を持ってやらなければ——」


女政治家、崩壊していく民主主義の理念、シビリアンコントロールができない文民統制それは政軍関係の始まり。


「軍務の統制できてない民主主義は暴徒の集まりと同じだ。だがそれは今言っても無駄。」幻影と女政治家の関係の崩壊が始まっていた



彼の指示で兵たちがスベッチを広場中央へ連れてきた。鎖で繋がれた弓使いの目は焦点を失っていた。


「処刑は明日行う」幻影が宣言すると


「今だ!」「待てない!」

罵声と拍手が入り混じる。


「では」

幻影は静かに言った。「今すぐ行おう」


「待て!!」


女政治家が割って入ろうとしたが、兵に阻まれる。彼女の顔に諦念の色が浮かんだ。


## 処刑の朝


処刑台に登る途中、スベッチの足が止まった。朝靄の中で見える街並みを見渡す。


「皮肉なものだな」


誰にも聞こえないような小声で呟く。


「孤児院で育ち、運よく拾われ。ここまで昇り詰めた。偉くなっても幸せとは限らない。結局は処刑台で終わる」


兵が背中を押す。処刑台に上ると、幻影が彼を見下ろしていた。


「何か言い残すことは?」


「ない」


スベッチは静かに頭を垂れた。


「ただ一つ」


彼の目が僅かに潤む。


「次に生まれ変わる時は……偉くならなくていい。ただ普通に……長く生きたい」


幻影の斧が振り下ろされた。




次の日の夜にマリイカも奪わていた。

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