優しさとおまかせ
あれから、自分の決意をして、少女はまだ座っている。
というか、寝ていた。あれからまだ少ししか経っていないが、頭が混乱してしまったのだろう。疲れたのだと思う。俺は、布団の毛布を静かに掛けてやった。
現在時刻は七時をまわる。いつもなら夕飯の時間だ。
ぼーっとしていると、ノックが聞こえてきた。
「私だよ…紗枝…今日は言い過ぎた…和ごめんね。
献立は和の好きな、炊き込みご飯だから。ドアの横に置いておくね。食べたら、外に置いといていいからね……和は…和は1人じゃないから…私がいるから!相談はなかなかできないと思う。それでもね、一人で抱え込まいでね…?」
こんなに優しい姉を見るのは初めてだった。
本当はこんなにも俺のことを気にしてくれる。
嫌いと言いながらも…本当は心の奥底では好きなのだ、姉のことが。
「うぅん…姉ちゃんのせいじゃないから、あまり
考え込まなくていいよ。これは、俺の問題だから。
ただ…当分は一人にしてほしい…お願い…」
こんなこと言ったら、自分のせいじゃないかと姉は
心配するに決まっているが、悪い…
俺がここにいなきゃ、この少女が何をするか、
本当にわからない、心配なのだ。
ごめんな姉ちゃん。今のこの時が人生で一番大事だと思うんだ。
「…そう、わかった!無理しないでね…」
そう言って、ゆっくりと階段を下る音が静かに
この家の隅まで響き、やがて聞こえなくなった。
ドアをゆっくりと開け、置いてある夕飯を持ち上げる。重くないはずなのに、気持ちがずっしりと
詰まっているように感じる。
自分の机に置き、椅子に座る。よく見ると、
置き手紙がラップのかかった茶碗の上に置いてあった。
「明日の夕飯は、なにがいいかな?」
ある意味怖い。俺が最初から当分自分の部屋で
夕飯を食べるということをわかっていたのだ。
うちの姉は、どこまで俺のことを知っているのか…
今日の夕飯の献立は、炊き込みご飯、味噌汁、魚、漬物、とthe和食だ。早速、いただく。
「いただきます。」
上手い、箸が次々に口へ運んでいく。うちの姉は
料理がとても上手い。確か…5歳ほどから料理をしていたような…流石、家事全般をしているほどだと
感心しながら食べていた。これで、性格がもうちょっとなー…と、欲望を抱いてしまった自分は、何様だ。
やがて数分で完食してしまった。
「美味しかったー…」
と、満足げに言っていると
ふと、置き手紙に丁寧に文字を加えた。
「おまかせで。」




