04
○
「司、こっちに寄ってから帰るって言ってたよな?」
「そうじゃ」
「帰り遅くないか?」
「急用でも出来たんじゃろうて、ほれ」
と指をさすのはテレビ。
そこにはこの街全体に、いや厳密には中心部を除いた全体に避難勧告が出されていた。
「どういうことだ?」
「レッドアイズが動き出したんじゃろうて」
さも当たり前の様に言う。
「しかしじゃ、範囲が広すぎるのう、それにここ中心部だけを残した理由は何じゃ?探しものが有るのは中心部で逃走経路を塞いでいるようにも見えるのう」
「あいつら相手に何処に避難しろっていうんだ?」
「さあの?」
それだけ言うとレイは横になり、さも興味をなくした子供のように。
「寝る」
と一言つぶやき寝た。
ミナヅキはというといつものことと割り切り、
「買い物にでも行くか」
と鍵を忘れずに持ち外に出て行った。
「あのーレイさん?」
「何じゃ小娘、わしは今睡眠をとるという人間的で崇高な・・・っと小娘、イザヨイとか言ったか、お前怪我はどうしたのじゃ?」
「治りました」
「嘘つけ、見たところ全身が傷んでおるではないか」
「バレてしまいましたね」
「バレバレじゃミナヅキならおらんぞ、あいつの悪い癖じゃ放っておけ」
「いえ今回はレイさんにお願いがありましてミナヅキ様の居ないところでお話をしようと思っていたのですが案外早くに機会が訪れました」
「なんじゃ」
「私の能力はご存知でしたよね?」
「”痛みの受け取り”」
「そうです、でもまだ一度も試したことがないので確証はありませんが”本来の能力”を試したいのです」
にやりと笑うレイ。
「その”本来の能力”とやらが貴様の思う能力だったとして何のメリットが有るのじゃ?」
「ミナヅキ様の安全が確保出来ます」
「あはははははっははははははは、小娘、お前は心底ミナヅキに惚れておるようじゃのう」
「更に」
更に、と言葉を続ける。
「私にも戦う力が有るかもしれません」
と。
「それはやめておけ。お主が思っている以上にその力は弱い、脆い。”本来の能力”もわしは大体察しがついておる、だからわしに頼むんじゃろうて」
「・・・はい」
「まあいい実験には付き合うがお主の戦闘への参加は許さぬ、それで手を打とう、良いな?」
「それだけで十分です」
「えーっと司の行きそうな刀屋と言えば、丸源っとここからだと東の方だったな」
ミナヅキは司を探していた。
何もないなら何もないで良い。
ただ、電話をかけても取らずメールを送っても返ってこずかれこれ一時間が経とうとしていた。
心配にならないはずがない。
「とりあえず行ってみるか」
当の司本人は未だ、剣閃乱舞と戦闘中だった。
防戦一方、刀は既に折れていた。
「さ、最初は驚きましたよ。刀が黄金色に輝く剣技なんてはじめて見ましたから。で、でも三十秒も保たないなんてそれ欠陥です」
「一時間もこの折れた刀で君の剣技を受け続けてるんだ、そっちも欠陥なんじゃないのかな?」
「減らず口を叩くなッ!」
さながら二人の戦いは、その通名のように舞い踊っているかのようであった。
見えない刀身。
だがその刀の動きからその斬撃を割り出し最小限で避ける司。
「妖刀・桜一文字大体その本質が見えてきたよ」
「減らず口を叩くなッと言っている!」
「その刀、刀身が見えないんじゃなくて”初めから無いんだろ?”」
「!!!!!」
「いや正確には、小刀といった所か、刃渡り三センチにも満たない果物ナイフよりも切れない刀、それが妖刀・桜一文字の正体じゃないのかな?大きな鞘に入れてあたかも日本刀で有るかのように振る舞い、振り回した時の風圧で斬撃を生み出す刀」
「わかったところで何が出来るッ?」
「何も出来ないだろうね”僕一人”では」
後ろからビューンと投石されてきた石を振り向きもせず首を傾げるような動作だけで避けた司。
コツンとそれを額に直撃した、剣閃乱舞。
「今だッ!伏せろ司!」
言うと石は爆発。
「やったか!?」
「それフラグだって司」
どこかで見たな、このやりとり。
「み、見事な連携ですね。おかげで額がぱっくりと割れちゃったじゃないですか」
石の爆発の破片を全て斬り落とし額にあたった投石だけの傷で済んだようだ。
「まあということだミナヅキ、相手の手の内はわかったね?あとは任せたよ」
「刀が無ければ腰抜けのお前がよく保ったじゃないか」
「半分は残ってたからね、じゃ僕は”軍出動の手配”をしてくる」
「いってら~」
とミナヅキを残しその場から離れる司。
「こ、今度は貴方が相手ですか?」
「どうやらそのようになった、死んでも恨まないでくれよ?」
ミナヅキは地面に触れ一歩後ろへ。
「手の内がバレていたって貴方にできることは有るのかしら?」
「さあ?」
妖刀・桜一文字で斬りかかる、しかし。
その瞬間地面が爆発する。
さすがにそれで倒せる相手ではないが。
「風圧が武器なら爆風で吹き飛ばせば良いだけの話じゃね?」
さらに地面に触る箇所を増やし妖刀・桜一文字の無力化に成功した。
だけじゃない!
地面を総爆弾化に成功し足止めにもなる。
「ふ、不思議な技を使いますね・・・あなたナンバーズですか?」
「さあどうだか?」
「ば、爆発。さながら人間爆弾といったところでしょうか?もし、そうだとすれば私との相性は最悪です。なのでここは一旦引かせてもらいます」
そう言うと剣閃乱舞は風に乗るように去った。
「ねぇナンバーズのおねえちゃんその腕どうなってるの?もっとよく見せてよ!」
ナンバー111の腕は更に異形と化していた。
一種の大木の様な太さにまで膨れ上がりそれでいてムチのようにブンブンと振り回してくる。
「勝手によく見ろ」
「あははは、そうすることにするよ」
足場の悪さなど無いかのように小さな大鋏は左右に持った刃で連撃を加えていく、その全てを異形の右腕に集中させて。
「あははは、全然切れないやなにこれ僕の鋏これでも結構な切れ味なんだけどな~自信なくすな~」
「勝手になくしてろ」
瓦礫の山での戦闘はどちらかと言うとナンバー111に有利に働いている。
その証拠に戦闘が始まってからナンバー111は一歩たりとも動いていない。
その大木のような右手が勝手に動き回りナンバー111を守り、小さな大鋏を攻撃しているかのような印象にも映る。
「足場も悪いしさ~僕無駄な労力を払うの嫌いなんだよね」
「奇遇だな。私もだ」
二人の戦いは拮抗していた。
いや足場の悪さが無ければまた変わった結果になっているのかもしれないが、現状だけを見た場合の話が拮抗だ。
「なんか意地でも殺したくなってきたな、僕にここまで言わせた相手っておねえちゃんがはじめてだよ」
自慢していいよ、と付け加える。
そして、拮抗していた戦闘に終止符を打つべく動いたのは、小さな大鋏の方だった。
左手に逆手に持っていた刃を天高く投げ飛ばしたのだ。
強い回転をかけ。
「二刀流より一刀流のほうが強いだとか、そう言うつもりは無いんだけど・・・」
「何の話だ?」
「剣道?だっけ、まあこれから死ぬ人に対して話しても意味が無いからやめておこう」
「まだ私を殺すつもりでいたのか」
「当然・・・目の前に僕より背の高い人間が居たら殺す。目の前に生意気な奴がいたら殺す。目の前に普通の人がいたら殺す。殺す殺す殺す。僕はそういう人間なの」
そう言い終わると一瞬の間が空き、そこから足場の悪い瓦礫の上を蹴り突進する、小さな大鋏(リトルクラブ。)
当然防御に回るのは異形の右腕・・・だが。
「あははは、引っかかった」
小さなイタズラに相手が引っかかった時のように無邪気に笑う、小さな大鋏。
見ると頭上から降り注ぐもう一つの刃。
高速回転が掛かったもう一つの刃がナンバー111の右肩を切り落とす。
いくら硬くても異形になっていない肩口からは生身。
「最初からこれを狙って!」
大量の血が噴出する。
「もしかしてだけど、自分の意志で”一歩も動いていない”と思っていた?残念~僕が誘導してそうなるように攻撃していただけなんだよ無理にでも動いていれば避けられたのにね」
落ちている刃の片方を手に取りもう片方とネジでつなぎ合わせまた大鋏となった。
「斬るならやっぱり首だよね・・・」
ニヤァと邪悪な笑みを浮かべナンバー111の首をジャキン。
だがその後に待ち受けていた事態には、小さな大鋏も予想外だっただろう。
なぜなら切り離された右腕が勝手に動き出したのだ。
主なき今何の命令も無く植物的で動物的なそれは元が何だったのかも原型をとどめていない何かが大暴れしている。
「ちょ、ちょっとっちょっとこれまずくない?蜥蜴の尻尾切りみたいなもの?僕じゃ手に負えないって、一旦帰ろうっと」
異形の右腕の動きが収まり元の右腕にもどるまで、小さな大鋏が去って二十分が経っていた。
もうこの港の半分は瓦礫と化していた。
「で、戻ってきたのか。傑作だ。」
廃ビルの二階、まだ、血染めの手斧は寝ていた。
「とか言ってフェニックスもまたなにもせずに観光とかしてたんでしょ?」
「そうだ、俺の能力は弱いお前らほど強くもない、お前らが勝手に動いてくれればあとは事足りる」
「おかげでこっちはナンバーズ二人を相手に戦ってきたよ」
もちろん殺してきたよ、と自慢も込めて、小さな大鋏(リトルクラブは言う)。
「わ、私も一人妙な剣技を使う相手とそしてもう一人ナンバーズの様な技を使う方と戦いました」
こちらは一人も殺せなかったという悔しさがにじみ出ている、剣閃乱舞。
「残るはミナだけか」
そう言われた、大槌少女だが、
「おいおいおい、一人の女相手に戦車まで持ってくるか?普通よ?」
戦車の上に立っていた。
先ほど戦車の砲撃をそのハンマーで打ち返し履帯に当て動きを封じた上で戦車の上に立っていた。
「こちとら全身やけどでいてぇ身だぞ」
いかにも機嫌が悪そうに、
「今ものすっごくムカついているから一発でこの戦車壊せるか試してみるか」
いやすごく機嫌が悪かった。
遅まきながら警官が五人も殺されたという情報を受け軍隊が出てきたのだ。
戦車一台、ライフルを構えた兵士二人という構成だったが、朱い目を見た瞬間に二人のライフルを持った兵士は戦車の中に避難、後ミサイルを発射。
それを打ち返されるという流れだ。
大槌少女は目一杯体を反らしハンマーを振り上げ、
「どっこいせ!」
とハンマーを振り下ろした。
地面にヒビが入るほどの衝撃で戦車はぺしゃんこになっていた・・・。
中の人達がどうなったかだとかはもう考えたくないほどに。
「くっそ、さすがに体がいてぇ引き上げるか・・・戦車一台破壊しとけば誰も文句はねぇだろ、くっそくそくそ体が思い通りに動かないのが気に食わねぇ」
あれだけ暴れて本調子ではないという。
「さすがに痛いのう・・・もう治ったが」
「すみません」
東雲宅、正確には司が用意した隠れ家。
いくら不老不死の身であろうと痛覚は有るというレイ。
「ですが、これで証明出来ました。」
証明、二人で何をしていたのかというと、イザヨイの”本当の能力”の検証である。
イザヨイはこれまで他人の痛みを”引き受ける”、”引き取る”ことしかしなかったが、実際のところその痛みを誰かに預けることが出来るたのだ。
確証はなかったただそうだろうと思っていたがやらなかった、ただそれだけだ。
だがレイと言う不老不死の体を利用し検証してみたのだ。
結果は成功。
つまり、”痛みの譲渡”が可能なのだ。
これは大きな利益となる。
例えば大怪我を負った誰かの傷、痛みをイザヨイが受け取りそこからレイへと引き継げば死にさえしなければ永久に人命を救えるということだ。
しかし、当たり前だが誰かれ構わずそれをやるつもりは毛頭ない。
イザヨイに限っていってしまえば、いやレイもそうだが見知らぬ誰かを助けるなんて考えてもいない。
イザヨイはこの力をミナヅキの為だけに使うと、そう決めた。
「目の前で警官が死んだ・・・のに僕は何も出来なかったよ」
「刀が折れたんだしょうがないだろ、逆に司お前は半分の刀で被害を食い止めたんだ誇れることだと思うけどね」
軍人としても、人間としてもとミナヅキ。
「所詮僕なんて刀が無ければただの臆病な人間さ」
「臆病で何が悪い」
「ミナヅキ?」
「人間ってのは元から臆病に出来てんだ」
中には異常な奴も居るが。
「臆病だからこそ今日の今日まで生きてこれたんだ俺達は」
「でも今回ばかりはどうしようも無いよ・・・レッドアイズが集団で行動するなんて」
とても疲れている様子の司、それ以上に弱気な発言を繰り返すのは彼の本性であるところの”刀が無ければ臆病者”というものだ。
実際に今も震えている。
緊急用の軍本部直通への電話を握りしめて。
「司には大きな借りがいくつもあるからな、この生命落としてもお前だけは守ってやるよ」
「やめてよ、そんな縁起でもないこと」
「まあ簡単に死ぬ気も無いから大丈夫だよ、それにレイを一人にはしない約束だしな」
何しでかすかわからんやつだし。
「まあ何にせよお前は頑張った、”本来の力”を軍本部に取り上げられてなお”軍を掌握しこの国のトップを討ち取る”という計画まで立ててる奴がよ、こんなとこで折れるなよ」
折れる・・・?
折れる・・・。
ならば折れなければ、司の刀が折れなければ司は臆病者ではなくなるのではないのか?
ふと、ミナヅキの脳裏にある計画が浮上する。
「なあ司、お前の虎徹・聖は軍が管理してるんだよな?」
「あ、ああ」
「それが何者かによって盗まれたら軍はお前になんて言い訳をするんだろうな?二本とない大業物、お前の”本来の力”」
「ミナヅキ?何を考えて?」
「何処の基地に隠されている?」
「ミナヅキ?」
「ここがあの刀を取り返す格好の”機会(チャンス”)だ。『一級指定災害集団』レッドアイズが集団で動き始めた、軍は今混乱してるだろうよ。お前ほどの剣の達人があと三人と正確な射撃を出来る人間があと五人。出来ればあと戦車も一台でもない限り倒せない様な連中だ、それで倒せて一人。もしかしたら倒せないかもしれない。それが集団で動いてる。現実問題軍は今すぐにでもお前に虎徹・聖を返さないといけないんだ。それすらも忘れている。軍は相当に混乱しているだろう。そんな中”何者かが勝手に軍に忍び込み刀を一本ちょろまかしたところで誰が気付く?”」
「本気で言っているのかい?」
「正直冗談半分さ、でもお前が乗るのであれば冗談は無しだ」
じっくりと考える。
今はその時期では無いと思い、刀を軍に管理されていた。
だが、ミナヅキの言う通りここが勝負所なのかもしれない。
ここであの刀を取り戻せるのなら、お前には過ぎた力だと奴に奪われたあの刀を取り戻せる”機会”が有るとしたらここを置いて何処に有るというのだ?
「・・・った」
「ああ?小さくてよく聞こえないな司」
実際には聞こいるだろうがあえてもう一度考える時間をやるつもりでミナヅキは応えた。
「乗ったと言ったんだ」
「迷いは無いな」
「無い」
「わかった、ならば教えろ俺が行って取ってきてやる」
「私立海月大学附属高等学校」
「は?基地じゃないのか?管理されているのは」
「立派な基地さ、あそこは軍関係者を養成するための学校だからね」
「そうだったのかよ」
「あれ?知らなかった?」
「聞いてないぞそんなこと、一言も」
「少しでも、母の形見(虎徹・聖)の近くに居たくてね」
「”家族”はいいものだからな」
「半分は同意するよ」
あとの半分は同意できないけれど。
「っと、本当はあいつの意思なんざ関係なしに取りに来てても良かったんだよな」
俺らしくもないとミナヅキ。
場所は私立海月大学附属高等学校校門前。
時間は夕暮れ時。
非常事態宣言が出されているため学校には生徒が居らずとても静かだった。
「前はブザーが鳴ったんだっけな・・・まあ俺が隠密行動なんて出来るわけも無いか」
言い終わるかどうか。
ドカーンと校門が爆破され飛んでいった。
もちろんミナヅキの仕業だ。
「ビーーーーーーー」
と虚しくなるブザーを放っといてすぐには校内に入らず様子見をする。
しばらくしてブザーが止み、警備員が三名出てきた。
「さてと、ここが軍関係者の養成施設だとしたらあの警備員たちもその関係者ってことだよなぁ」
飛ばされた校門の方へと近づき何事かと検証を始める警備員たちの目の前でまた校門を爆発させた。
もちろん警備員達の退路を塞ぐための措置だ、そのため思いっきりひしゃげさせ醜い形に爆発させた。
別にこの警備員たちをどうこうするつもりは無い。
ただちょっと”おしゃべり”に付き合ってもらうだけだ。
「お取り込み中すみませんが、虎徹・聖を奪いに来ました。そこの校門の様になりたくなかったら全て吐いてください」
「な、何者だ」
「ナンバーズって言えば軍には通じるのかなぁ?無駄な抵抗はやめて欲しいんですが」
「ナンバーズ、だと!?」
「有るんだろ?此処に、虎徹・聖が。さっがすのに苦労しててさ~ちょっとでいいからヒントくらいくれよ」
「構え!」
一人の警備員が声を上げる。
ナンバーズ相手には発泡許可が出されている。
「いやいや。別にお前らをとって喰おうってワケじゃないんだ撃たないでくれよ」
両手を上げ降参のポーズを取る。
のは、演技だとしても。
「問う。貴様はナンバーズなのか!?レッドアイズなのか!?虚偽だと判断すればいかなる状況であろうとも撃つ!」
「ナンバーズ」
「問う。何が目的か!?」
「虎徹・聖」
「問う。貴様の能力は何か!?」
三度校門が爆発され、今度はバラバラになった。
つまり、近くにいた三名の警備員全員に破片が突き刺さり、二人は重傷、一人はなんと無傷で腰を抜かしただけだった。
いやそうなるように爆発させたのだから当たり前か。
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!聞きたいことが有るのはこっちだ!」
一歩、また一歩と近づき威圧感を与え、謎の能力者を気取り歩くミナヅキ。
「お前ら風に聞こうか?問う。虎徹・聖はどこか?」
「ま、まて話せば分かる」
「だから話してやってんじゃねぇか」
腰を抜かした警備員の脇に落ちている拳銃を拾い上げ、
「一度撃ってみたかったんだよね、拳銃ってものをさ」
警備員の頭に直接くっつける。
安全装置がかかっていることを確認して。
「拳銃があれば身を守れると思ってた?残念もうもう拳銃は俺のの手の内だ、バン!なんちゃって」
「わかった、命だけは。命だけは助けてくれ!」
「命だけでいいの?助けるのは?手足一本ずつもらってこうかな?なんちゃってあはは」
「なんでもいい!助けてくれ!」
「分かった分かった、お前が言うことをちゃんと聞いてくれれば無傷で開放してやろう」
少し離れたところから、事の様子を見ていた司は頭を抑えていた。
頭痛をこらえるように。
「なんであんな楽しそうにしてるんだよミナヅキは、一歩間違えれば自分の命だって掛かってる状況なんだぞ」
しかし、全ては自分の愛刀、虎徹・聖を取り戻すための計略なのだ。
恐怖による支配は何よりも拘束力が強い。
それが未知の力によるものだと尚更。
ミナヅキはそれをしているだけだ。
そして司にミナヅキは一つだけ頼み事をしていた。
「僕は僕で、仕事をしないとね・・・」
二人の重傷者の応急処置と救急車の手配それがミナヅキの頼み事だった。
「へ~体育館に地下室なんてあるのか、面白い学校だなここは。」
「・・・」
「なんか反応しろよ、バン!」
「ひぃ~」
「あははは」
未知の力プラス自身の拳銃を頭に突きつけられ憔悴しきった警備員はなすがままなされるがままに軍の管理しているという武器庫へと案内をする。
「ロックを開けろよ」
「ここのロックは私の権限では開けることは出来ない」
「そうか、じゃご苦労さんもう帰っていいぞ」
「へ?」
「逃げるなり何なりしていいと言っている、あとから追ってきて殺したりもしねぇよ好きにしな」
興味の失せたおもちゃを見せられた子供のようにこの部屋のロックをどう解除するべきかと悩むミナヅキ。
警備員は一目散に逃走した。
「まあ普通に考えて爆破だよな・・・腹減ってんだけど・・・、鍵だけ壊せば入れるかなやってみるか」
鍵口だけをだけを触り小さな爆発をさせた。
案の定扉は開かれた。
そこにあったものは・・・。
「これだけ?こんなだだっ広い空間にたったこれだけしか置いてないのかよ!」
体育館の面積をそのまま地下に下ろしただけの空間に目当ての虎徹・聖は鎮座していたが、武器庫だと思っていた空間には何も無くただ一本の刀だけが置かれていた。
「まあわかりやすくていいや」
虎徹・聖を手にいま来た道を戻っていく。
地上では気を効かせた司が情報の撹乱をし軍本体がこちらへと向かわないように手配して待っていた。
「あと五分出るのが遅ければ軍との正面衝突だよ。さあ逃げよう」
「正面衝突は勘弁だ、さっさと逃げるか」
お互いに笑い合い虎徹・聖を奪還した祝いとしてハイタッチを交わした。




