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02


「『あら、もしかしてゲームの最中でした?チェックメイトとおっしゃってましたが』」

 おおよそこの場に相応しくないゴスロリのファッションの少女、身の丈以上も有る大きなハンマー。

 よく見ればファンシーな文字で100㌧などと書かれている。

「ミナヅキ!プラスチックを爆破させよ」

 声を出したのはレイだった。

「は?」

 状況を理解できないままではあるが、本能が告げているこいつはやばい!

 言われるがままに爆破させるも、

「『造作も無いことですわ』」

 飛翔、それ以外の何だというのだ。

 先ほどミナヅキが地面を爆発させその爆風に乗った以上の高さを彼女は飛んだ。

 そして爆発を回避した。

「ぎゃはは、みさかいねぇな『おっと失礼、見境がありませんわね。そんなに慌ててどうしました?』」

「ミナヅキ逃げるぞ」

 状況を整理したいミナヅキではあったがその提案に反発するつもりもなく逃げることを選択する。

 が、

「『もうちょっと遊んではくれませんのですか?』」

 飛翔後そこら辺の適当なコンテナを蹴り驚異的なスピードで目の前へと詰め寄られた。

「『先ほどの獲物は歯ごたえがありませんでしたし、何故かこの辺は人払いがされているのであなた達二人を』殺させてもらうぜ!」

 ブンッ!と振り下ろされたハンマーを辛うじて避ける。

「『案外素早いのですね』ネズミはネズミらしくしねぇとな!ぎゃはは」

「ミナヅキ絶対に目をそらすな、全神経を集中させろ、絶対に攻撃しようなどと思うな」

 以外にも焦っているのはレイであった。

「注文が多すぎるんだよ!」

 とは言いつつ目をそらさずに観察してみると、

「なるほど眼が朱い、レッドアイズか・・・」

「気付くのが遅いわ!たわけ」

「『あらあらご存知でらっしゃいましたか、光栄の極みでございます』」

 レッドアイズ、『一級指定災害集団』と評され、警察では手に負えず災害として認定されてしまった殺人集団だ。

 一人でも動けば最低でも50人は死ぬと言われ、集団で動けば小さな町くらいであれば壊滅と評されている。

 ただ救いなのは彼ら、彼女らには集団で動く意思が殆どと言っていいほどにないことくらいだ。

「今の世の中お前たちは有名人だよ」

 共通点として、何故かみんな眼が朱い事だ。

 何故眼が朱く染まるのかは知らないがそれは畏怖の対象とされている。

 アルビノの子供が生まれれば親は怯え子供を殺す時代ですらある。

 またあるものは兎の眼を見ただけで震え上がる。

「『ますます光栄ですわ』」

「だからちょっと死んでくんねぇ?」

「『はい?』」

「バカよせと言っておるだろうに」

 ミナヅキは足元を触る。

 もちろん何が入っているのかわからないコンテナだ。

 そして飛び降りる。

 その光景をキョトーンとした顔でただただ見ていたゴスロリ少女は事態の異変に気付く。

 ゴスロリ少女の乗っていたコンテナが下から爆発し宙に吹き飛んだのだ。

「これはかなり腹が減るな・・・」

 コンクリートを爆発させその爆風でジャンプした時のコンクリートを”また”爆発させたのだ。

 爆発させられるものに回数制限はない。

 一度爆発させてもまだ形が残っていればだが。

 その点先ほどの爆発はコンテナの上へ避難することが目的であったがために最小限の力で済んだが、今回は違う。

 コンテナをまるまる一個宙に浮かばせる程のエネルギーを爆発させたのだ。

 腹が減るな・・・というミナヅキのセリフはそのままの意味で、爆発の大きさにより腹が減る。

 これが制限だ。

「バカめ手を出しおった」

 呆れ顔のレイはミナヅキの隣にいつの間にかいた。

「売られた喧嘩は買う主義だ」

「奴等は喧嘩なぞしない、ただの殺戮だ」

「まあ、でもこれで災害を一つ駆除してやったぜ?」

 とコンテナがある程度の高さまで来たら爆発させた。

 ドッカーンと。

 花火のように。

 コンテナの中身は何だったのだろうか黒焦げになってもはやわからない。

「これだけの爆発で死なねぇはずが無いだろ」

「ぎゃははおもしれー技持ってんなテメーナンバーズか!?『失礼、素が出てしまいましたわ』」

 いつの間にかこちらも後ろに立たれていた。

「『しっかしまぁ汚い花火ですこと』」

 空を眺め悠長に言う。

「『まあこれで”本命”が来てくだされば本望なのですが』」

 本命?

 ああそうかこいつらは”災害”だったな。

 災害を何とかするのは軍隊の仕事だ。

「それまでちょっと付き合えよぎゃはは『失礼、このしゃべり方案外難しくて。いけませんわねこの服を身に纏う時は上品にと決めているのですが』」

 どうでもいい。

 ミナヅキは思う。

 この圧倒的なスピードは何だ?

 ましてや身の丈以上もあるハンマーを持ちながらだ。

 これは本当に人間か?

 化け物のたぐいではないのか?

 と思ったところで笑いが出た。

「ははっ・・・化け物はこちらも一緒か、ちょっとゴスロリのねーちゃん悪いんだが待てってありかな?」

「『無しでございます、ですが目一杯手加減はさせてもらいますわ』」

 そう言ってハンマーを振り下ろす。

 宣言通り手加減してのことだろう事は直感で感じたがそれでも地面にはヒビが入っていた。

「『そうですわね、これくらいの力加減で行きましょう、”本命”が来るまでどうか』一秒でも長く生きやがれ『ですわ』」

「くそっ、連戦とかマジきっついぞ!レイお前は隠れて・・・ってもう隠れたのかよ!」

 見渡せばレイは姿を消していた。

 妥当な判断だと思う。

 それに戦闘はこちらの管轄だ。

 思う存分やらせてもらうさ、と決め込みまたも大きく後ろへと飛んだ。

 だが今度は失敗だった。

「ぎゃははのろますぎんだろ!!『遅いですわよ?』」

 直線で飛んでくるゴスロリ少女はさながら人間ミサイルのようでハンマーを持っていなくてもその体当たりだけでも相当なダメージがありそうなものだ。

 これで手加減をしていると豪語しているのだから本気を出せばどうなるのだろうか?

「『あらら、行き過ぎましたわ!でもこれで』」

 ミナヅキを追い越しミナヅキの二歩後ろくらいで待ち構えているゴスロリ少女は一本足打法だった。

「『ホームランですわ!自己紹介が遅れました私ミナと申しますが親しみを込めて大槌少女ハンマーガールとお呼びください』じゃないとマジ殺すぞぎゃはは」

 背中からハンマーを受け転がり続ける中その声を聞いた。

 これは背骨を何本かやられたかもしれないと妙に冷静に分析している自分に笑いがでた。

 その笑いで更に背中が痛くなり笑ってられなくなった。

 そこに、

「『一級指定災害集団』レッドアイズのミナとお見受けする」

 一人の少年が立っていた。


 東雲司だった。

「ミナズキやはりあの爆発は君だったんだね」

「分かってたんなら早く来いよ」

「こっちもこっちで仕事だからね簡単に単独行動は許されない」

「何のための階級だよ」

「それを言われちゃ立つ瀬もないさ、ただ僕の階級は飾りみたいなものだからね」

「さっきから何べらべらと・・・『先程からなに私抜きでお話をしていらっしゃるのでしょう?』」

 大槌少女ハンマーガールが会話に割入った。

 ミナヅキは息も絶え絶えにこう応える。

「お前のおまちかねの”本命”様だよ」

「マジか!マジで言ってんのかぎゃはははもっと人を呼べよもっと!もっと!早く俺に殺されろ!『失礼、もうこのしゃべり方やめようかしら』」

 本気で悩んでるようにも見える。

 その隙に司はミナヅキにこう告げる。

「お役所仕事で悪いが本体が駆けつけるまでには早く見積もっても十五分はかかる、それに今の僕の刀は『無銘』だ、はっきり言って勝ち目はない」

「なんで来たんだよ」

「偵察」

 舌をぺろっとだして応える。

「軍の大佐自ら偵察だとか涙ぐましい努力だね」

「そうでもしなければ権力は得られないからね、いずれ来る計画の時まで軍を掌握したい。だから今ここで君に死なれるのはゴメンだ」

「だが逃げる選択肢もない」

「十五分・・・の内五分開放するあとの十分はアドリブでいいね」

「ああ、だが一つだけ言っておくことがある」

「何だい?」

「しばらくは立てない」

「わかった」

そのやりとりが終わると同時に、

「『もう少しこのしゃべり方を頑張ってみますわ!』」

 とマヌケな回答を出した、大槌少女ハンマーガールだった。


「『ハンデはそちらで寝ているご友人でよろしいのでしょうか?といっしょで?』」

「そうしてもらえると嬉しいね、なにせ僕はただの偵察兵士だから」

「『その様な殺気を出されながら言われましても信じがたいのですが、まあいいとしますわ』」

「東雲司、抜刀」

 と言うと何の味気のない刀をゆっくりとではあるが威嚇するように抜き出す。

 そして続ける

「開放!!」

 何の味気のない刀が黄金色へと変わる。

 そして中段で構える。

「『あら珍しい、一偵察兵が使える剣技ではありませんね』てめぇ何者だ!」

「答える義務は無いね、君はここで僕に斬られて終わるそれだけだから」

 挑発、出来れば一瞬で事を済ませたいという司の願望の現れだろう

「この野郎!」

 思いの外この挑発に乗ってしまった大槌少女ハンマーガールは、自らに課したハンデも忘れ全力で突進してくる。

 それを紙一重、まさに紙一重とはこのことだろうと言うほどの差で、しかしながら最小限の動きで避ける。避けきる。

 そして袈裟斬りを、というところで

「あっぶねぇ『危なかったですわ、それが狙いだったのですね』」

 大槌少女ハンマーガールは飛んできたスピードと同じくらいのスピードでその場を離れた。

「『でもその技どこまで体が保つのでしょうね?』」

 東雲一刀流奥義黄金こがね

 刀に全ての意識を集中し刀と一体化することで自身も一本の刀となる。

 一子相伝のその技は本来見たもの死ぬとまで言われる暗殺剣。

 それを持ってしても傷ひとつ・・・いや傷は付けられた。

 左肩口の服が少しだけ破れかすり傷程度だが傷をつけることに成功した。

 だが、

「ミナヅキ、すまない今のでやっとだ、この刀ではこれが限界だ」

「おいおい、こっちは背骨の何本かやられてるかもしれねぇんだぞ」

 時計を持ってきていない今でも分かる今のやりとりはほんの数秒。

「大体五分ってのはどこいった」

「明後日の方向に逃げていったよ」

「やれやれだ・・・」


 どこに力を入れていいのやらわからない状態で立ち上がり背中の激痛を抑えやっとこさで起きるミナヅキに対し、大槌少女ハンマーガールは言う。

「『死にぞこないには興味ありませんの、いえ、あとで確実に息の根は止めてあげますけれども』」

「振られちゃったよ司あとは頼んだ!」

「いや待てって」

 と目配りをするとどこかに隠れていたレイが、大槌少女ハンマーガールからは見えない角度で手招きしているのが見えた。

「レイちゃんそれをやっちゃう気なのかな?」

「司俺は悪い予感しかしないんだが・・・」

「奇遇だね僕もだよ」

「でも現状乗るしか無いか・・・」

「一か八かだね」

「『何をこそこそと喋ってらっしゃるのかしら?』」

 答えるのはミナヅキ。

「どうやってお前を屠るかだよ」

 言うが早いかさっきまで寝そべっていた場所が爆発しその爆風を利用しまた移動を試みるミナヅキと、あと数秒であろう奥義黄金こがねが尽きるその瞬間までの時間稼ぎを買って出た司。

 ミナヅキの負傷は思ったよりも重いが、それ以上にキツイのは空腹だ。

 先程から何度も爆発を繰り返しているので既に空腹は限界まで来ている。

 その上爆風を利用し飛び着地後また爆風を利用し飛びでレイの居るところまで移動という手段を取らざるをえない今の状況でめまいすら覚えてきた。

 一方司は奮闘していた。

 一時は我を忘れハンデすら忘れた、大槌少女ハンマーガール相手にハンデ付きとは言え圧倒していた。

 だがそれもあと一秒か二秒。

 パキンッ!

 とその時は来た。

 刀が折れてしまったのだ。

「やはり『無銘』ではこんなもんだよね」

「『あら、もうおしまいですの?でしたら』死ねよ!」

 ハンマーを思いっきり頭上に掲げ上げそのまま振り落とした。

 ドッゴーン。

 という音とともに地面がめくり上がった。

「チッ『逃げられてしまいました』」

 振り下ろした刹那、大槌少女ハンマーガールが見た光景は、横に飛びハンマーを蹴り夜の海へとダイブする司の光景だった。

 夜の海は真っ黒でそれは一度そこに入られると見つけるのがやっとだというくらいに面倒だ。

「『まあいいですわ、順序が変わっただけあの死にぞこないの様子でも見に行きましょう』」


「すまないなミナヅキ、君には損な役回りばかりさせて」

 そういって司は、大槌少女ハンマーガールが立ち去るのを見届けてから陸へ上がり至急応援部隊と医療班を結成させるべく元きた道を戻っていった。


 そこは小麦粉の倉庫だった。

「で?」

 ミナヅキはレイに聞く?

「何じゃその気の抜けた聞き方は!?」

 小麦粉使ってあいつに勝てと?

「そうじゃ!」

「お前ばっかなんじゃねぇの!?小麦粉だぞ小麦粉!せめて銃の密売ルートでも暴きだして銃を手に入れるくらいやってくれよ!」

「バカといったほうがバカじゃ。良いからよく聞け」

「こっちはもう線香花火を着火するくらいの爆発しか起こせねぇぞ」

「それで良い、どうせ勝つのはわしらじゃ」


「『ここですか~?出てきてくださいよ~』」

 大槌少女ハンマーガールはハンマーをいかんなく振るい建物、コンテナ全てをなぎ倒しながらやってきた。

 一直線に。

 既に隠れている場所は割れていると言わんばかりに。

「で、小麦粉でどう勝てと?まさか固めてぶつけるとか言ったらマジ泣かすぞ」

「逆じゃ逆、出来るだけ霧散させよ」

「はっ?小麦粉で窒息死とか聞いたことねぇぞ?」

「黙って働け!たわけ」

「怪我人に言うセリフとは思えんな」

「むう、そうだったのう貴様がいなければ成功はせん、あのへんで休んでろ。合図があったら爆発だいいな」

 とだけ言ってレイはそこら中の小麦粉をばらまき始めた。

 これでもかという程に。

 視界が不良になる程に。

「『たしか~ここですよね~』」

 とうとう倉庫前まで来た、大槌少女ハンマーガール

「『それでは失礼しまして』」

 とハンマーでドアを破壊する。

「『目くらましでしょうか?悪あがきにしても程度が低いですよ?』」

 ミナヅキは答えない答えられない。

 レイは答えない、と言うかまだ小麦粉を撒いていた。

「『あらあらそこのお嬢さんもう見えてましてよ』」

「そうか、ならばもういいか悪いが貴様この辺まで来てはくれぬか?」

 とレイは倉庫の中心を指さす。

 そこはミナヅキがそこで休んでいろと言われた場所だ。

「ちょ!お前裏切る気か?」

 思わずミナヅキは声を出してしまった。

「裏切る?何を寝ぼけたことを一発逆転のチャンスじゃしっかり掴め」

「『そこにいらしたのですね。ではまず貴方から死んでください』」

 ゆっくり、ゆっくり、逃げ場のない狭い倉庫ではあの超絶的なスピードでは動けない。

 だがミナヅキの負傷もでかく素早く動くことは出来ない。

 万事休す。

「ミナヅキ!今じゃ屈んで何でもいい爆発させよ」

 レイの声が倉庫内に響き渡る。

 と同時にレイがミナヅキに覆いかぶさる。

「何をしておる!早く」

 またもわけが分からずとりあえず線香花火程度の火力しかつかない爆発を小麦粉の袋に起こさせたすると・・・。

 ちり・・・ちりちり!と火花が火花を呼び大爆発が起きた!

 倉庫が木っ端微塵になるほどの。

 粉塵爆発である。


 瓦礫の中一人の人影が浮かび上がる。

 それを佇んでみるは至急応援部隊と医療班だった。

 指揮を取るのは東雲司。

「各兵攻撃準備、ただし許可が有るまでは攻撃するな」

あるものはライフルを、またあるものは刀を拳銃を構え様子を伺う。

 はたしてそこに立っていたのは。

「くっそいってぇぎゃはははこんな痛いのは久しぶりだぜやってくれたな!小僧ども!!!」

 大槌少女ハンマーガールだった。

「だが?自爆?こんな大規模な自爆してまで俺様を殺せなかったんだバッカじゃねぇの?ぎゃはは」

 ミナヅキとレイはハンマーガールの足元で倒れていた。

 ぴくりともしない。

「各兵攻撃!」

 あるものはライフルを、あるものは銃を一斉発射再装填の間に刀で攻撃をする算段であったが。

「ハンマーのねぇちゃん、口調口調。ああだから安易なキャラ付けって嫌いなんだよね僕は」

 とどこからとも無く男の子が入ってきたのを見て一同は固まる。

 その眼が朱く染まっていたからだ。

 通常この人数で相手できるのは『一級指定災害集団』レッドアイズにおいては一人までだ。

 それ以上の人数であれば更に応援部隊を要請しなければならない。

 それは今から要請したところで間に合うかどうか。

「どうも軍隊の皆様ごきげんよう~僕小さな大鋏リトルクラブって言います。本名はジュンって言うけどそう呼んでいいのは世界で一人だけなんで死にたくなければリトルクラブって呼んでね」

「おいクラブてめぇ何しに来やがった」

「もうそんな副着てるんだか着てないんだかわからない格好でハンマーのねぇちゃん恥ずかしいよ?何ってハンマーのねぇちゃんを呼び戻しに来たんだけどさなんか爆発があってきてみたらそこに何故か半裸のハンマーのねぇちゃんが居たってことだよ。ふっしぎだね~」

「呼び戻しに来た?」

「ねぇ、その前にハンマーのねぇちゃん僕あいつら切りたいんだけどいいかな?」

 背中から何処に隠していたのかと言うほどの大きな鋏を取り出しジャキンジャキンと音を鳴らして軍隊を睨む。

「呼び戻しに来た理由から離せ」

「いや僕もよくわかんないんだけどさフェニックスからの伝言で”見つかった”だってさ」

「ならこんなところで遊んでる暇はねぇ帰るぞ」

 一瞬軍隊から気が抜けた瞬間、

「”次は”殺してあげるからね軍隊の皆様?」

 小さな大鋏リトルクラブはこれ以上ない殺気を向けて言う。

 中には失禁すらした兵士もいたが、小さな大鋏リトルクラブが笑いながら大槌少女ハンマーガールとハンマーを引きずりながら退散したのを見てほっと胸をなで下ろす一同。

「気を抜くのは早い、そこに倒れている二人の治療を!」

 東雲司の声で気の抜けた雰囲気から一変して医療班は急ぎ二人の元へ駆け寄る。


「肉・・・肉が食べたい・・・」

 そう発したのは金髪で碧眼、どこからどう見ても日本人には見えない、ただ幼さの中に妖艶さをまとう見た目16、17の少女だった。

 控えめに言っても美人、雑誌の表紙を飾っていてもおかしくない程には。

「解せない」

そう返すのは、目付きが悪く髪もボサボサで目の下にはクマなんか出来ている少年だった。

 二人は一命を取り留めていた。

 と言うかレイに限って言えば既に完治している。

「何が解せないというのじゃ!」

「俺は全治二ヶ月、お前は全治一日この差が解せない」

 それもそうだろう、しかしあれだけの打撃を浴びあの爆発を浴び全治二ヶ月では安くすんだ方である。

「それがわしの能力じゃ、おかげで死ぬことも出来ぬ」

「わかってるよ」

 レイの能力は不老不死だ。

 首を斬られようが斬られた瞬間に再生する脅威の再生能力と毒を飲んでもすぐに抗体が出来てしまう体質、その全てがレイの能力。

 空腹などでは死ぬことも無いが確証は無い。

 前に実験で試されたのは一年三ヶ月と2日完全絶飲食。

 動かなくなり脳の活動は停止していても心臓は強く鳴り響いていたという。

「まあまあふたりとも痴話喧嘩はその辺にして」

「誰が痴話喧嘩だ!」

「誰が痴話喧嘩じゃ!」

「まあまあお昼出来たよ」

 と司が運んできたのはあの日食べられなかった牛丼だった。

 もちろんチェーン店などのレトルトではなく司の手作りだ。

「キャッホーイ」

「お前キャラ崩れてるぞ」

「はっ!わしとしたことが!」

「まあどうでもいいけど、あのあとどうなったんだよ司」

 司は答える。

 ミナヅキが意識を取り戻したのはあの日から一週間した今日だ。

「説明には困るけれど、レッドアイズの他の仲間が現れて」

「現れて?」

大槌少女ハンマーガールを持って帰って終わりさ」

「他に変わったことは?」

「どうやら彼らにも殺戮以外の目的が有るらしい、仲間、小さな大鋏リトルクラブは”見つかった”と言っていた。それが何なのか軍の上層部でも調査中さ」

「俺も気になったことが一つだけ有るんだ」

「なんだい?」

「奴等はナンバーズのことを知っていた」

「・・・」

「一応秘密組織何だがなあの組織は。どうしてレッドアイズが知っていたのだろう」

 もぐもぐと牛丼を食べていたレイがその答えを言う。

「レッドアイズの首領、今はマサキとか言ったか、暗黒不死鳥ダークフェニックスは組織の研究所の創設メンバーの一人じゃよ」

 数秒の間があいて。

「待て」

 とミナヅキ。

「どういうことだい?創設メンバーってもう70年も前の話だよね?首領のマサキは今二十代前半だよ?」

 と司。

「どうもこうもない奴はその名の通り生まれ変わっても記憶を引き継ぐ、ただそれだけのことじゃ。ただのう生まれ変わりと言っても奴の場合誰か他人の脳を乗っとるんじゃ。”見つかった”ってのは次の依り代のことじゃろうてあまり気にせんでいい。」

 もぐもぐと食事を再開するレイに二人は同時にツッコンだ。

「「なんでそんな大事な事を黙っていたんだ!!」」

 とうのレイは、

「あれ?言っとらんかったかのう」

 と食事を続けるばかりだ。

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