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 時間は午前十時半を回ったところか?

 日差しが妙に強く感じる。

 司なる人物の通う学校へと向かう二人は、その通学路途中の電気街にいた。

 平日なのに不思議と混んでいる電気街。

 雑踏の中少年は嫌な響の言葉を耳にする。

 陳列されているテレビからニュースが流れてくるがそこには死者が数百何名だとか言われているがそんなことはどうでもいい、その原因を作り出した『災害』にこそ嫌な響を感じる。

『一級災害指定集団』

 そうニュースキャスターは伝えていた。

 少年はしばらくそのニュースを見ていたかったが少女の方はあえて無視を決め込んだようにさっさとさっきより歩くスピードを少しだけ速めたように感じる。

私立海月うみづき大学付属高等学校』

 程なくして彼らは目的地となる学校へとたどり着いた。

 しかし、

「さて、どうしたものか」

 はじめに声を出したのは少年のほうだった。

「どうしたもこうしたもあるか呼び出せばいい!携帯電話くらいあるじゃろ」

「財布もロクに取って出られなかったのに携帯電話を持って出る暇があったとでも?」

「何!?それじゃ無駄足ではないか!?神よ、貴様はいつまで私を見放すんじゃ」

「そこの警備員にでも話をして・・・って聞いているのか?おい!?」

 と少年の提案を一切聞かず少女は閉まっている校門をよじり登っていた。

「おい?目立った行動はしないってルールだろうが!」

「たわけ!命がかかった状態でいつまでルールに縛られておる?」

「命なんて最初からかかってねぇよ!」

 ご存知だろうが、昨今の学校事情としては関係者以外はアポを取らなければなかなか学校に入れてもらえない、ましてやこの私立海月大学附属高等学校は名門中の名門、関係者以外が入ろうとすると・・・

「ビーーーーーーー」

 と、まあブザーが鳴るわけで学校の校門が見える教室の全盛との視線が集まるわけで。

「だから目立った行動はって言ってるのに・・・」

 頭を抱える少年。

 ざわざわとした空気感の中警備員が走って少女を取り押さえる。

「ま、待て!離せば分かる!」

「誰がうまいこと言えと・・・」

「ええい、離さずともいいわ!では東雲司を呼んでこい!」

「警備員に言ってもなあ・・・」

 じろりと警備員が校門の外に居る少年にまでも鋭い眼光で睨みつける。

 少年はというと、いかにも野次馬風に装い助ける気などさらさら無いといったリアクションで応える。

「貴様!この裏切り者!」

「自業自得だ、今回はお前が悪い」

「何だと!?」

 すると、そこに助け舟というかなんというか東雲司なる人物本人が出てきた。

「ああもうやっぱり君たちか、どうしたの?要件なら携帯電話に入れておいてっていつも言っているのに」

「司!あやつ、わしを裏切りおった!」

「はいはい、レイちゃん少し落ち着いて。すみません警備員さんこの人僕の知り合いです離してあげてもらって構いませんか?」

 少女の名前はレイと言うらしい。

 警備員と司は少しのやりとりをして程なくしてレイは開放された。

 東雲司、私立海月大学附属高等学校3年生、受験シーズンまっしぐらの見た目は女かと間違えるほどの端正な顔立ちで女子の憧れの的であり、一部男子からも好意を向けられる程で性格も品行方正、非の打ち所がないというのが一般的な彼を指す言葉になるだろう。

「どうしたの?ミナヅキが付いていながらこんな目立った行為ルール違反だよ?」

「すまない、これには事情が・・・」

「腹が減ったのだ!司!」

 少年の名前はミナヅキというらしい。

「腹が減ったら、冷蔵庫から勝手に食べていいっていつも言ってるでしょ?」

「それがのう・・・」

「悪い司、オートロックの罠により締め出された」

 呆れ顔で司は問う、「何があったのかと」。

 それを真顔で答えるのはレイ。

「いやそれがのう、わしが二度寝を決め込んで居る最中にこのたわけが部屋の換気だとか言って全部の窓を開けたのじゃ、するとな一匹のハチがわしの腕にとまりな、」

 ぶすりっと。

「あーそれはそれは大変な出来事だー」

 棒読み口調でミナヅキはチャチャを入れる。

「ふざけるでない!昨今の昆虫というのは凶暴かつ残忍なのじゃ!毒が回れば死に至ることもある!」

「そして俺は毒が回るのも気にせず慌てて部屋から飛び出して走りだしたバカを追いかけてこの有り様だ」

「つまり、それで鍵も財布も持たずに部屋から出て僕を頼ってきたと・・・」

 頭痛すら覚えるこのバカバカしい話を真面目に聞いた自分がバカだったのかと自問自答を繰り返したくなるのを我慢して司は鍵を渡す、そしていくらかのお金も渡す。

「帰る途中にでもご飯を食べて帰るといいよ、鍵は予備があるからそれ無くしてもいいけど、出来るだけなくさないでね。あと話しの流れだと窓が開きっぱなしだね帰ったらちゃんと締めておいて。じゃあ僕は授業に戻るよ」

「すまない、司」

「いいさ、僕らは協力関係にある。僕の計画が終わるまで君たちの能力は必要だからね、こんなところで野垂れ死にされても困るだけだよ」

 一瞬よりも短い刹那、司の見せた狂気にも等しい瞳、それを見て見ない振りをし手を振り踵を返すレイとミナヅキ。


 場所は変わって全国展開されている先程と同じ牛丼屋のレジであーでもないこーでもないと唸り声を上げているレイ。

「さっさとしろこっちだって腹は減ってんだ」

「しかしのう貴様、トッピングをどれだけ頼んでも司がくれたお金を使い切ることができんのじゃ!」

「アホ!使い切る必要が何処にあるんだよ!」

「何を!?」

 二人の口論が始まろうかとしているその時ピンポンパンポン~♪とマヌケな入店を知らせる音がなる。

 そんなのは当たり前だ、お昼時なのだから。

 しかし、違っていたのは店員の反応だ。

 一向に出迎える「いらっしゃいませ~」の声がしない、どころか怯えきった顔で入店口を見ている。

 何事かと思い二人はそこへ目をやる。

 拘束具を着た少女が宙に浮いていた。

「ナンバー0らしき反応を確認、捜索、索敵、開始、見つけた」

 と言い終わるかどうかの瀬戸際店内は爆発を起こした。


「くそっなんでこんな日にこんなことばかり起きるんだ」

 ミナヅキは走っていた。右脇にレイを後ろ向きに抱え。

「ほっほう長生きはしてみるものじゃ、宙に浮く人間なぞはじめて見たぞ」

「俺だってそうだよ、つかお前重い」

「なんだと!貴様が日頃から筋トレをサボっていなければだな・・・おっやはり追ってきたぞ」

「くそっ」

 考えろ、とミナヅキは頭のなかでイメージする相手の持つ能力の正体を。

 しかし、朝からほとんど何も食べずにいた付けか考える前にお腹に意識がいっていまう。

 どうすれば・・・。

「加速」

 と小さく聞こえた気がした。

 全力で走っていたミナヅキをレイを抱えていたとは言えそれなりのスピードで走っていたミナヅキを今にも越えそうかというほどのスピードで空中を飛び接近してくる。

「あやつ、加速しおった気をつけろ」

「くそっ」

 というと呆気無くレイを投げ飛ばして振り向きざまに蹴りを入れた・・・レイに。

「うぐっ!今日は厄日じゃ」

 そしてレイは反対方向へと吹っ飛び拘束具を付けた少女との間に距離が生まれる。

 そこでミナヅキは拘束具を着た少女と対面する形で睨みつける。

「ナンバーは?」

「回答、ナンバー326」

「三桁台まで精製されてるのかよ・・・」

「否」

「なんだと?」

「現在組織には4500番台まで精製を確認済み」

「4桁台って・・・アレだけ壊してやったのにどうやって」

「情報の提供拒否、これより戦闘態勢に入る」

 宙に浮く少女はそう言うと拘束具が破裂するかのごとく霧散していく。

 その左手にはレイと同じく怪しく光る石が埋め込まれていた。

「嫌だね」

 と少年は左手を地面につける。

 左手のグローブはいつの間にか無くなっており代わりに手の甲には怪しく光る石が埋め込まれていた。

「ナンバーズと断定、戦闘警戒レベルをワンランクアップ」

「だから戦闘はしないって・・・」

 言うと辺りに土煙が立ち何も見えない状態になる。

「状況確認、視界不良、全方位からの攻撃を想定」

 土煙が無くなった後残されたのはナンバー326と名乗った少女だけだった。


「人を投げ蹴るなぞどんな教育を受けて育った!」

「あいにくそんな話をしてる場合じゃねぇ・・・マジ死ぬ・・・腹減った」

「むぅ。仕方ないほれ」

 とハンバーガーを渡すレイ。

 場所は日の当たらない路地裏。

「いつの間に・・・」

 息も絶え絶えにという表現がこれ以上に合う奴は今の時点ではミナヅキが最高であろう。

「さっき蹴られた後になすぐに逃げてそこのバーガーショップで隠れて注文しておった」

「お前の食い意地に助けられる日が来るとはな」

 なんとなく悔しい気分である。

「そんなこと言っておると取り上げるぞ」

「すみません、食べさせてください」

 ガツガツガツと一心不乱にハンバーガーを頬張るミナヅキ。

「しかしのう、ナンバーズがこの街にもとうとう来てしまったか」

「いずれはばれる事だったろうよ、お前は0なんだから、共鳴反応?みたいなもん持ってんだよ」

「それはわかるが早すぎる」

「早すぎるも何もお前が”逃げるため”の足止めをしている会話では今4500番台まで精製されたらしい」

「ハハッ!あやつららしい」

「でもお前が居ないあの組織でどうやって」

「データが残っておればいくらでも方法はあるさ、ただ犠牲も大きいし能力も大したものはできないだろうて。せいぜい3桁台までが実戦的じゃろうな。まあ一般人相手には4桁台でも大きな脅威ではあるが奴等の目的は別にあるからのう」

「そんなものか」

 ハンバーガーを食べ終わりコーラまで飲んでいるミナヅキはこれからどうするかを考えていた。

 一、レイを置いて逃げる。

 そんなことが出来れば既にしている、レイは切り札こちらの人質なのだから。

 二、レイとともに”また”別の街に身を潜める。

 東雲司の援助を受けられなくなる以上却下だ。

 三、真正面から片付ける。

 これまで通りに・・・。

 答えは出ていた。

「なあレイ」

「分かっておる、戦うのじゃろうて」

「ああ、これは戦争だ。俺の自由を勝ち取るための」

「たわけ、わし”ら”の自由じゃ、わしらは共犯者じゃ。抜け駆けは許さぬ」

「なあこういう場合、共犯者じゃなくて協力者だぞ」

「どちらでもいいわい」


 時を同じくして先程の牛丼屋では涙を流し牛丼を食べている少女が居た。

 ナンバー326と名乗った少女だ。

「この世の中にこんな美味しいものが有ったなんて・・・牛さんに感謝」

 その様子を店員たちは恐怖に引きつった顔で見ていた。

 客は少女一人。

 少女の牛丼の注文の仕方を考えれば当然そうだろう。

「問、命が惜しいか?であればこの店で一番美味しい飯を提示せよだったからだ。

 なんという牛丼強盗であるか。

 当然として店はすぐに警察を呼んでいるがこういう時の待ち時間というものはなぜだか1秒が1時間にも匹敵するほどの長さを持っている。

 やっとの事で警察が来た時には丼は既に空であった。

「エネルギー充填完了、体調良好、ナンバー0の捜索を再開する」

「ちょっと君いいかな?」

 警官は話しかける。

「何だ?」

「無銭飲食の罪で逮捕するけどいいかな?」

「否、逮捕などされない」

「ははは、面白いジョークだね」

「冗談は嫌い」

「まあでも無銭飲食は無銭飲食だから」

「議論の価値は・・・無し」

 と言うと警官の体は宙に浮き見えない何かで拘束されていた。

「ぐはっ!」

 なおも力強く拘束され警官の体は千切れ息絶えた。

「能力不備なく稼働・・・ああ、それと牛丼ごちそうさまでした」

 ただそれだけの言葉を残し少女は去った。


「あの能力どう見る?レイ」

「浮遊・・・ではなさそうじゃが」

 場所は戻り日の当たらない路地裏。

 ミナヅキは壁を這うプラスチック製のパイプを見つけてはどうやってかは見えないが剥がしていた。

「浮遊じゃない?根拠は?」

「貴様に蹴られた瞬間にのうあやつの隣を通ったが妙な肌触りがした」

「それが?体か何かに触れたんじゃないのか?」

「バカか!貴様飛んで行く方向くらい見ておけ!わしは一切あやつの体に触れておらぬ!」

 それに、とレイは続ける。

「単なる浮遊だけが能力の雑魚が正面切って貴様の”ナンバー6”の能力者に挑むと思うか?」

「そういえばあいつ距離だけは保っていたな、こっちの能力は筒抜けって事か」

 あたりまえじゃろうてと笑うレイ。

 考えてみればやはり当たり前なのだろう。

 二人はとある組織からの逃亡者だ。

 

 はじめはただの変哲のない学校やそれに類する施設だと思っていた。

 ナンバー6と呼ばれ始めたのはいつからだろう?

 この左手にある妙な石はなんだろう、そんな事を考えなくなったのはいつからだろう。

 ひと通りの教育は受けた。

 だがそれと同じだけ妙な実験にも参加させられていた。

 ミナヅキの・・・ナンバー6の一番古い記憶は妙なカプセルの中に閉じ込められた少女とそれから出ているケーブルが自分の左手に繋がっているところから始まっている。

 白い服を着た大人たちが自分ではよくわからない言葉をしゃべっていた、十二人だ。

 理解しようかとも考えたがおおよそ自分の知識では追いつかない物だと知ってやめた。

 途端に左手から激痛が走る。

 何やら実験が始まったようだ。

 泣き叫びわめきながらナンバー6は懇願する。

「なんでもするからやめてください」

 しかし、大人たちは耳を貸さない。

 激痛の中ナンバー6は意識を失った。

 目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。

 白い部屋で一つの窓が開いていてそこから来る風が気持ちよかったのは覚えている。

 ふと左手を見ると何やら石がはめ込まれていた。

 それは怪しい光を纏い触ることすら臆病になるほどに。

 そこに一人の白衣を着た大人が入ってきた。

 メガネを掛けた男性だ。

「おめでとう」

 彼はまず最初にそう言った。

「今日からお前の名前はナンバー6だ、今までの名前はすべて抹消した。世間的に言えばお前は死んだことになっている。この意味が分かるかね?」

 首を傾げる少年。

「つまり君の生殺与奪権は私達に有るということだ、変な考えは起こさないでおくれよ」

 そう告げると男性の大人は帰っていった。

 入れ替わりに女性の大人が入ってきた。

「痛かったでしょう?大丈夫?」

 こくりと頷いた。

「ごめんね、ごめんね」

 と泣きながら謝る女性。

「あ、ごめんね、私は今日からあなたの世話係になる○?※というの」

 今となっては思い出せない名前。

「そうだね、新しいお母さんだと思ってよ」

「お・・・かあ・・・さん」

 ナンバー6は母親という概念を知らない。

 いやその頃のナンバーズは全員孤児だ。

 今はどうなっているのか知らないけれど。

「思いっきり甘えていいからね」

 女性は胸を張って言う。

「お・・・かあ・・・さん?一つ聞いていい?」

「何かな?」

「お母さんって何?」

「それを聞いて女性は答える”家族”!大切な人達って意味だよ」

「じゃあさっきのおじさんは?」

「あれはこわ~いおじさん家族じゃないね、今日から私とあなたが家族お友達よりも仲良しさんになろ」


 時は過ぎナンバー6も成長していく。

 自然と女性のことをお母さんと呼べるまでには。

 しかし、

「ナンバー6には期待はずれだ、処分するしか無い」

 とあの白衣を着た男性が言った。

 偶然ただの偶然だったがそれを耳にしたのだ。

「待ってください!」

 そういったのは”お母さん”だった。

「もう少し待てば、もう少し待てば能力に目覚めますそれまではどうか」

「そのもう少しに付き合わされて何年が経とうとしている?」

「それは・・・」

「あの実験は時期尚早だったかもしれない」

「被験体が6人ではデータが不足しすぎています」

「だからあれから続け400人までデータを増やした、能力の発現には時間差が有るそれはわかるが何故ナンバー6に固執する」

「それは・・・」

「大体400人を超えたナンバーズでも能力の発現の時間で数年かかったという例は無い、やはり”殺処分”だ」

「・・・」

 その瞬間ナンバー6は頭に血が登っていくのをなんとなく冷静な自分が見ていた。

 同時に左手が妙に熱く感じるのも。

 バーンッ!

 とナンバー6触れていた壁が吹き飛んだ。

 警報がなる。

 施設の中を走りあの部屋を探す。

 そう変なカプセルの中に閉じ込められた少女がいた部屋だ。

 幸いにして数分もしないうちに見つけ出すことが出来たのは夜中こっそりと施設内をうろつき遊んでいたからだ。

 「なんじゃ?小僧泣きそうな顔しおって」

 びっくりしたのは時は過ぎ10年以上も経っているというのに全くと言っていいほど姿形の変わらない少女がそこにいた。

 そして十二人の白い服を着た大人たち。

「お前の所為だ」

「泣いた上になんかの責任をわしになすりつけるか、ハハッ小僧お前殺処分されるのであろう」

「うるさい!」

 ナンバー6が怒鳴ると周りの大人達は逃げ出していた。

 気がつけば少女とナンバー6の二人だけになっていた。

「一つ良い事を教えてやろう、ただしわしをこの外へ出せればのう」

「・・・」

 黙って左手を差し出しカプセルを触るとたやすくカプセルは自壊した。

「驚いたまさか、本当にわしをカプセルから出せる能力者が居たとはな。ハハッ」

「良いことってなんだよ」

「逃げ道じゃ、ついてこいっと・・・何十年振りかの外で足が弱っておるわい」

「担ぐ」

「ん?」

「担ぐと言ってんだ早くしろ」

「んじゃまあ、お言葉に甘えるとしようかのう」

 少女は道を示す道中で自分がナンバー0だと言うことを言うがそんなことはわかっていた。

 0からは何も生まれないというが、決まって何かを生み出した後につける番号が0になるのは生み出す側だからだ。

「おーそこを右に行け、すると大きな部屋がある」

 右に曲がると確かに大きな部屋があった。

 部屋が有ったのは間違いないのだが、

「ちょっとちょっと困るんだよね仕事を増やさないでおくれよ」

 銃を構える白衣のあのおじさんがいた。

 そして銃口が向いているのはミナヅキではなく・・・。

「ナンバー6、お母さんの事はいいから逃げなさい!」

「君までこの組織に歯向かうのかい?たかが実験動物一匹のために?傑作だねぇ」

「実験動物なんて・・・」

「でもなら何故彼には名前がない?君も今彼を番号で呼んだ、これが実験動物ではなくてなんだというのだね?」

「それは・・・」

「君も長い年月彼の世話をして情がわいたのかもしれないが公私混同は良くないよ、公私混同は」

「・・・」

 少しの沈黙が流れる。

「お母さん・・・俺は殺されるのか?」

「そんな事はないわ!お母さんが守るから!」

 部屋にこだまする声は力強かったが、

「いいやナンバー6、君はもう用済みだよ」

「何故ですか!?今彼はこうして能力に目覚めています、まだ利用価値は有るのではないでしょうか?」

 懇願。

 あえて自分の立場をはっきりさせることでナンバー6を救おうというセリフを吐く。

「脱走、器物破損、誘拐、更に未知の能力、しかもこれは我々の求める能力ではない。ましてやナンバー0を無くしては我々の求める能力自体が失われることになる、どうしてもというのならば君が説得し給え。ほれ銃も貸してやろう」

 開放された女性は銃を両手に持ちガクガクと震えながら前へ出る。

「ねえナンバー6大人しく帰ろう」

「いやいやいや、違うだろ君。そこは大人しく”死んでくれ”だ」

「な!?」

「ナンバー0を開放後ナンバー6は殺処分これは決定事項だ」

「そんな・・・」

「お母さんはその銃で俺を撃つの?」

 ナンバー6は聞く。

「お母さんは絶対にそんなことはしない!」

「じゃあなんでそんなに銃を握りしめているの?」

「そ、それは・・・」

「どいてよお母さん・・・僕はまだ死にたくない」

「せめてナンバー0だけでも開放して、そうすれば命は命だけは許してもらえるように頼むから」

 そこで白い服を着た男性は突き放すように言う。

「決定事項だ」

「ど、どうして殺さなければいけないんですか・・・」

「何度も言わせるな、決定事項だ」

「どうしてもというのであれば!!」

 とお母さんは銃を強く握り構えそして撃った・・・後ろを振り返り白い服を着たおじさんを。

 しかし。

「やれやれ、君には失望したよ」

「・・・なんで?」

「私が何の保険もなく君を手放す理由が無い、それには弾は入っていないよ。君がもし彼を撃つ気でいたのであれば君だけは助けてあげられたのだがね残念だ」

 そう言うと懐からもう一つ銃を取り出し何の感慨もなく。

 パンッ。

 という乾いた音の中彼女は絶命した。

「銃の腕には自信がないがこの距離で外すほどバカでもないよ、だがあたりどころが悪かったのかね?いや良かったのか一発で即死とは傑作だ」

 瞬間ナンバー6はナンバー0を放り出し走りだしていた。

 彼女の元へお母さんのもとへ。

 何の反応も無い。

 ただの肉の塊となっている彼女。

 涙さえ出ない。

 人間とはこんなにもあっさりと死ぬのかと言う程の幕切れ。

「さあ次は君の番だよ、ナンバー6。何も寂しくはないすぐに母親の元へ送ってあげるからな、ハハハ」

「なんだよこれ・・・まるで悪夢だ」

 銃を頭に突き付けられもうダメだと思った瞬間に後ろから思いっきり蹴られた。

 ナンバー0に。

「小僧!貴様私を投げたな!このたわけが!」

 言うと女性の持っていた銃をすかさず取り上げ白い服の男性に向ける。

「何のつもりだねナンバー0、その銃には弾は入っていないと言っている。」

「貴様がわしに銃を撃てないことは知っておる、また撃てたとしても”意味が無いこともな”。だから」

 といいナンバー6に銃を投げ渡し言う。

「貴様が決めろここで死ぬかこいつを殺し外へ逃げるか」

 そして、ナンバー6・・・ミナヅキが取った行動は・・・。


「これくらい集めれば大丈夫か」

 プラスチック製のパイプを十数本集めたところだ。

「貴様はいつもワンパターンだの、そのうち足を掬われるぞ」

「これが一番手っ取り早いんだよ、こればかりは司には任せてられないからな」

「ふんッ」

「何気分を害してるんだ?」

「わしが司を説得すれば彼の持つ力を多少は貸してもらえると思うのだがの」

「俺はそれが嫌なんだ」

 『一級指定災害集団』でもあるまいし、と付け加える。

「言っておくがレッドアイズとナンバーズなぞ何の違いもないぞ」

「俺なりのけじめと言う奴だ、気にするな」

「そこが気に入らぬ」

「そりゃどうも、まあ物資調達もすんだし後は食料を調達して場所決めだな」

「場所なら良い所を知っておるぞ」

「へー、いつの間にそんなに地理に詳しくなったんだ?」

「最近夢遊病でのう」

「こわっ!」

「冗談じゃ、暇つぶしのテレビの情報じゃ、港へ向かえ」

「港か・・・悪くない」


「ナンバーズ0ロスト、再度捜索を開始する」

 ナンバー326と名乗った少女は街を歩き出す。

 自ら流す涙の意味も知らず。

「これは涙?何故?視界不良」

 施設で育った彼女には外の景色は眩しすぎた。

 雑踏、雑踏、雑踏・・・。

 うるさいくらいに鳴り響く雑踏が妙に心地よく感じていた。

 ふと目に入ったドーナツ屋さんに目を遣る。

「栄養補給は済んでいる、問題ない。が、しかし」

 とドーナツ屋さんの前から動けずにいた。

 いい匂いがしたからだろうか?

 興味深いものをみる目でドーナツをみる。

「これはドーナツ、知っている。食べたことも有る。だが私の知っているドーナツと何処か違う」

 興味を持つと動けなくなる性質なのかそこから一歩も動いていない。

 ふとドーナツ屋さんから出てきた中年男性がドーナツを一口二口食べ、

「油が濃ゆすぎるな、悪いが捨てていこう」

 とドーナツをゴミ箱の中に捨てていった。

 とたん激情。

「貴様・・・食べ物を粗末にしたな?」

 ナンバー326と名乗った少女は中年男性に問い詰める。

「ああ、悪いとは思ったが・・・」

 その後の言葉は続かなかった。

 なぜなら中年男性は宙を浮きあの警官と同様に千切れていた。

 あちらこちらで悲鳴が上がるなか堂々とドーナツ屋さんに入り陳列されたドーナツの中からチョコレートがかかったドーナツを一つ手に取り食べ始める。

「やはり、私の知っているドーナツと違う」

 目にはいっぱいの涙を浮かべ食べる様子は不気味すらある。

「こんなに甘くしょっぱいドーナツは、はじめてだ」

 ドーナツを全部頬張ると。

「ごちそうさまでした」

 と言い店を後にした。


 夕暮れ時港には誰もいなかった。

 ミナヅキとレイの二人を除いては。

 レイに至っては荷積みされたコンテナの上で仁王立ちである。

「どうやって登ったんだよ・・・」

「ハハッ!気合じゃ」

「まあどうでもいいが、共鳴反応?はどうだ」

「微弱じゃがこちらへ向かっておる」

「しかし、なんで今日は誰も居ないんだこの港っつーかここらへん一体人払いされてるよな」

「わしが結界を張った!」

「嘘つけ」

「バレたか」

「お前にそんな能力があったら今までの苦労がバカバカしい」

「それもそうじゃのう」

「人払いされてるなら好都合だが、嫌な予感がしないでもない」

「考え過ぎじゃ、嫌な予感というのは嫌なものを引きつけるやめておけ」

 レイは冷静にしかしニヤニヤと応える。

「それにしても相手の能力がわからないというのは厄介だな、こっちは大体手の内がバレているっていうのに」

「もう慣れっこじゃろて、わしが検分するところあれは浮遊ではない。それだけは頭に入れておけ」

「俺の頭はもうパンパンで何も入らねぇよ」

「ほう、スッカスカだと思っておったが」

「お前いつか泣かす」

「出来るもんならやってみろ。っと来おったぞ」

 と目の前を宙を浮きながらある程度の速度で飛んでくるナンバー326。

「浮遊ではないとしたら何なんだろうなッ!」

 ミナヅキはそこに落ちていた石を拾い投げつけた。

 もちろん当たるなどこれっぽちも思っていなかったが。

 ミナヅキからみて左手側へスッと避けられる。

「当然と言えば当然か」

「当たり前じゃろうて」

「少し位手の内を暴きたいだろうが」

「それもそうじゃのう」

「ナンバー0及びナンバー0を誘拐したナンバー6と思わしき人物を発見再度戦闘態勢へ移行する」

 そこでなにか気づいたのかナンバー326は言葉を続ける。

「もう拘束具はなかった」

「俺達に拘束具なんていみねぇだろ!」

 と言いまた石を拾い投げつけるそして、ナンバー326が今度はミナヅキ側からみて右へ回避した瞬間、

「今度は能力を使わせてもらうぞ」

 ミナヅキが言葉を発した瞬間石は爆発した。

 そこでナンバー326は停止する。

「小さな石だが爆発させれば多少の殺傷能力くらいはあるんだぜ?」

「迂闊、ナンバー6の能力を検索・・・”爆発”」

「そうだ、俺は触れたもの全てを爆発させることが出来る、この意味が分かるな?」

 多少の語弊はあるが概ねそうだ。

 制限は付くが彼に触れられたものは爆発させることが出来る。

 石ころだろうとビルだろうと。

 強いて言う慣ればビルを爆発させる程の能力を発するにはそれ相応の対価が必要だが。

「ここにある全てが俺の爆弾だ。分かったら帰ってねんねしな」

「帰れない」

「お前らの決まり文句だな」

「「帰還命令のない帰還は自殺行為」だっけか?」

 セリフを横取りされたのが驚きだったのか後ずさりをするナンバー326。

「今感じているお前の感情が恐怖だ、防衛本能だ。何も間違っちゃいない。どうだ?俺達と逃亡者にならないか?」

 ここに来てミナヅキはナンバー326に近づき手を差し伸べる。

「うまく行けば自由になれるぜ?」

「理解不能、この距離、この間合いは私の能力の範囲内。何故侵入できる」

「何故ってお前本当は自由になりたいんだろ?俺達と同じように」

「理解不能、私はナンバー0を捕獲し帰還すれば”自由が約束されている!”」

 というとミナヅキの体は宙に浮き始めた。

「元より自由が約束されている身で何故お前たちの取引に応じる必要がある?理解不能」

「ぐっ・・・あのなお前少しは人を疑うことを覚えろ。あいつらが約束を守ったことがあるのか?」

「思考」

「大体俺達はあの実験であの激痛で生き残った”仲間”だろ」

 ナンバー326は自身の左手を見る。

 怪しく光る石。

「思考」

「訂正させてもらう、”家族”だろ!!」

「思考」

「何をそんなに考えてるんだ!」

 数秒の間が有った。

 が、ナンバー326は答える。

「1桁台の貴方にはわからなかったかもしれないが、私達3桁台からは脳内にこれくらいのチップが内蔵されている」

 ナンバー326は人差し指と親指をくっつけて輪を作り言う。そして、

「ナンバー0を捜索中のナンバーズは位置データを全て把握されていてとある範囲内から出ると電気が走り脳の活動は停止し死ぬ」

 いかにも奴等がやりそうな事だと、そして一つの矛盾点にも気付く。

「待て、俺達が脱走したのは3桁台の精製した後だぞ」

「知らない、私はそう聞かされた」

「そのチップって本当に実在するのか?」

「する、現に私の知る限り13人は逃亡を測りで死んだ」

 どういうことだ?とミナヅキは考える徐々に宙に浮きもう完全に足は地面に付いていない状態で。

 考えられることは、

 一つ、嘘の情報を信じこまされている。

 奴等なら平気でできる事だ。

 二つ、ナンバー326の妄言。

 だが、この線は薄そうだ。

 三つ、予めあの脱走劇が”仕組まれたものだったとしたら”

「話は終わり、貴方は死んで。私の目的はそこにいるナンバー0」

「分かった、だが死ぬ前に一つだけ教えてくれお前の能力はなんだこれ」

「検討・・・」

 時間稼ぎのつもりだったが・・・。

「私には”見えない手”が生えている、二本、約二メートルそれでお前を拘束し持ち上げているに過ぎない、ただこの手はその気に慣れば一㌧くらいの力で締め付けることが出来る、あくまでもその気に慣れば」

 制限付きという点ではミナヅキと変わらないということだ。

「ありがとよ」

 とミナヅキが言うとオレンジ色の発光、そして何かが破裂し何かがナンバーズ6に突き刺さる。

「痛い・・・痛い・・痛い・痛い、痛い痛い痛い」

「痛いのはこっちも同じだっての・・・」

 ドサッと約2メートルの高さから落とされた衝撃とオレンジ色の爆発。

 そうプラスチック製のパイプを爆発させたのだ。

 ごく少量だとは言え殺傷能力は侮れない。

 運が悪ければお陀仏だ。

「最後に聞くぞ俺達と逃げるつもりは無いんだな?」

「無い」

 そう返答が帰ってくると持っていた全てのプラスチック製のパイプを地面に転がし後ろへ大きく飛ぶ。

 これは爆発を警戒したのではなく”見えない手”の範囲から遠のくため。

 更に地面を蹴り予め触っておいたコンクリートを爆発させコンテナの上へ爆風でジャンプ。

「チェックメイトだ」

 と言いプラスチック製のパイプを爆破させようとしたその瞬間だった。

 ドンッ!グチャ!

 と何とも気持ちの悪い音の中爆発の前にナンバー326は潰されていた。

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