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異世界ガクブル半隠遁  作者: 尾中垂太
乙女の身嗜みがととのうまで編
3/26

交流



ごーりごーりごーりごり。



「うーん?すり潰すってこんな感じで良いのかな?いやもう少しのような気も・・」


はいどうもこちら品川です。

ただいまヨモギに似た草を座りこみ必死こいてすり潰してます。

ポイントはヨモギに似てるってだけでこの草はヨモギではないってとこだがな!


よくわからない状況に陥ってから10日たった。

この汚くも綺麗でもない小屋にいすわってからの日数ともいえる。

お母さんお父さん誰でもいいので地球の皆さん私をむかえにきてください~、ぐすん。






あのあと眠りから覚めた私は鍋と瓶いっぱいの水に狂喜乱舞した。

正直、得体の知れない土地の雨水に不安を覚えたが背に腹は変えられない。というか我慢できない。

さっそく天からの恵みをがぶ飲みし顔を洗う。

さっぱりした頭で思うのはこれからのこと。



地名はわかったけれどここは何処なんだろう?

なんでどうして私はここにいるの?

何が起こったんだいったい。

これからどうなるのだろうか?

雨水飲んじゃったけどお腹痛くなったらどうしよう・・・。

帰りたい。本当に?

いやいやそこ疑っちゃダメだろ自分。失踪は就活に失敗するよりも外聞は悪いぞきっといや確実に。

そもそも昨日のつぶやきの主はだれ?



はっとして気づく。そうだ!昨日の人たちに聞こう!

それで事情を話して、ここの正確な場所とか近くの交通機関とかを教えてもらって家に帰ろう!!

さっきから頭の端にちらつく【ファ】から始まって【ジー】で終わる単語なんて気のせい気のせい。私は家に帰るの!!


自分を叱咤しながらスマホを手に取る。電池残量は7割弱にまで減っていた。

常時だったら常時だったらまだまだ大丈夫って思う量だけれど、今の状況から考えると少しばかりまずいと感じる。


ああ、ここに充電器があれば良いのに。



蛇に変わってしまったアプリを起動するとすごい量のつぶやきが次から次へと。

空を見るとうっすら月が残る、朝といってもそんな時間にこれだけのつぶやきがかえってくるとは。

・・恩人にこんなこと思うのもアレだけどさ・・この人?達はヒマなんだろうか?


『おきたー』

『おみずのめたね』

『おきた』

『なにする?』

『あそぼー』


遊ばねぇよ!と心の中でつっこむも顔には出さずに私もつぶやきを開始する。

それに画面いっぱいのつぶやき全てが自分の行動に対してって・・ナニこれ怖すぎる・・。

反応したら負けだ、うん。


『おはようございます。昨日は助けていただきありがとうございます!』


『ありがとー』

『ありがと』

『おはよー』

『たすけたー?』


うん?もしかしてここの人?達ってまだ小さかったりするのかな?

私の言葉を繰り返すだけの人も大分いる。


『実は私、気がついたらこの森にいたんです。

家に帰りたいのでもし知っていたら森の出口を教えていただけないでしょうか?

お願いします!!』


『でぐちー?』

『つみぶかきもりからの』

『でるの?』

『どうして?』

『おそといくのー』

『かえる?かえる?』



うぉっ!?な、なんだ?なんか向こうの混乱っぷりが凄いんだけど。

うーんどうしたものか。



『お願いします!知らない場所は怖いので家に帰りたいんです。』


あれ?急につぶやきがなくなった。

ど、どうしようなんかまずいことでも言っちゃったとか?

動揺しながら昨日の細長いりんごを食べる。

行儀悪いけどしったことか。なんかで気を紛らわせなきゃやってられないってんだ。

一つ食べ、二つ目も美味しくいただき、もうひとつ食べようか迷っているときにそれは起こった。


『きれいなみずうみ』

『きれいないしもたくさん』

『あまくておいしいのもしってる』

『こわくないのー』

『たのしい』

『おはなしー』

『だいじょうぶ』

『おそとー』

『ひとはここまでこないよ』


え!?ちょっとまて!!最後の奴どういうことだ!

焦りながらも情報を収集していくと以下のことがわかった。



1・周辺に水場と食べれる物や宝石?があるらしい

2・彼らは普段は人とのコミュニケーションがとれない、よって会話が成立する私を歓迎していること

3・家の周辺にはよその生き物はこれないらしい

4・昨日たどった道を反対に進めば人が居るが人のことは詳しく知らない



最後のやつが聞きたかっただけなのに大分時間がかかったなぁ。

一番最初のは知らないとこ怖いといった私に対しての慰めの言葉らしい。

なんでも罪深き森の事を知ったからこれで怖くないよね?とのこと。

いやいやいや無理だからそれ!現在進行形で怖い超怖い。


怖いついでに彼らはやっぱり人じゃないんだと泣きそうになった。

人じゃないならなんなんだよ一体!・・妖精とかそういった答えが返ってきそうだなこれは。

それにどういった理屈で生き物これないとか行ってんだよ!?結界?結界なのか!?

脳内で【ファ】と【ジー】のあいだに【ン】が入りそうな状況にひたすらガクブル状態だ。もうやだおうちかえりたい。



足の豆は痛いし筋肉痛だしお風呂にも入りたい。

もうほんとやだお願いしますだれか何とかしてください!



とにかくもうひと頑張りで人にあえる!

そう意気込み小屋から拝借した布かばんにりんごっぽい果物とこれまた拝借したガラスの瓶?みたいのに水を詰めた物を入れた。

スリッパは歩きにくいけど先が見えたし頑張ろう!



月が完全に消えて完全に太陽が出るころ、私は張り切って小屋をあとにするのだった。





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