色落ちと言葉のブーメラン
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小屋へと逃げ込んだ私は固いパンと干し肉を炙りながら考えに考えた。
炙るのはその方が美味しいと最近やっと気づいたためだ。
自分なりに考えをまとめてから【電波受信≪つぶやき≫】を起動。
どうしても聞きたいことがあった。
「あのひよこは本当に食用なんですか?」
『おにく!おにく!』
『おいしくできましたーっ』
『いや?』
『とりはいや?』
『いろがだめだったのかも』
色!他にも色々と問題があるけど色が一番のネックなんですよ精霊さんー!!
「色です!とうしてひよこをあの色に?」
『すきじゃない?』
『だめ?だめ?』
『おいしいよ!おいしいよ!』
『すきかとおもった』
パンと干し肉を食べ終え、温めた昨晩の残りのスープも終わる頃にはドピンクの謎が解けた。
原因は……私のスリッパだった。
村で靴を仕入れたあともショッキングピンクのスリッパを部屋用にして使用していた。
精霊さん達はそれを見て私の好きな色はショッキングピンクだと勘違い。好きならいっか!と産まれてくるひよこの色にしたとのこと。
ちなみにひよこはあれで成体。
鶏には成らないらしい。
精霊さん達はよほどひよこに…いや、ひよこの肉の出来に自信があるのか押しが凄い。
『ちょっとだけ!ちょっとだけ!』
『たべて』
『おいしいよ?おいしいよ?』
『めをとじて』
『やわらかいの~』
呟きの量が多すぎて残念ながら見れなかったってことにしておくか…。
ついでに他の事も少し聞いた。
そう!今回の原因の命石だ。
命石とは精霊に成れなかった魔力の塊が結晶となったもの。
命石から生まれる種類は完全に精霊さん達の気分。たまに今回みたいに新種が生まれるらしい。
何故この世界に居ないひよこが産まれたかというと、大精霊さんが私の記憶を見たらしい。
プライバシーの侵害だと叫んだらもうしないと誓ってくれたので流すことにした。
もしかしたら私の世界を探す際のヒントになるかもしれないし。
それが事件の真相だった。
いや、事件じゃないけどなんとなく。
私的には日本人的な感覚で使っていたスリッパがとんだ修羅場を招いたものだ…。
そう言えばスリッパの色もここに来てからだいぶ色落ちしている。恐らく汚れるたびに洗っていたからだろう。
…正直に言おう。ひよこの色にそっくりだ。手触りもふわふわでこちらもそっくり。
遅すぎるがいま気がついた。
なんだかへこんだ。
さんざんひよこの色を安っぽいだの下品だの言っていた言葉が今、私の心にブーメラン。
うう、誰か私に心の回復薬をください!
よろよろと窓に近づきそっと外を見る。真相がわかったらひよこが気になったのだ。かといって食べるつもりはないけどさ。
『なんにゃ、土虫のまねはもう終わりかにゃ?案外早かったにゃあ』
「土虫って…まあいいや、ひよこは?」
身を乗り出して周囲を見回すも見つからない。
『ひよこならば此方にゃ。あやつはなかなか骨があるにゃ』
いつも通り意味不明な発言をする三毛猫について行く。
五分も歩かない内に突然開けた場所に出た。
なにやら遠くの方でひよこが動いている。ピンクだから緑と茶色しかないここでは余計目立つ。
すごい勢いで転げながら此方に爆走して来た。
「ひぃぃ!!こっち来ないでっ」
叫ぶ私にひよこは私にピイピイと訴える。
しかしながら私はひよこ語は学校で習ってこなかったから解らない。
同じ動物なんだし三毛猫に通訳を頼もうと見るとなぜか泣いている。
泣いたりやじったりこの世界の猫はいったいどうなっているんだろうか。
『ひよこはここに巣を作り、種を継続させて生涯シナの食肉と生ることにしたんだにゃ』
「え?なんでそうなったの!?てかこのひよこ石からランダムで生まれるんじゃないの!?」
『にゃ?ちょっと黙るにゃ。今は我が話してるのにゃ。繁殖…この場合は分裂に近いかにゃ、魔力を摂取して同族を成すらしいにゃ。精霊に贔屓されて作られただけあって量はそこら辺の草花でも食べとけば十分だとにゃ』
ぶ、分裂…もうひよこじゃないでしょ?!なんだこの生き物!?
「あー…、えっと、ひよこはそれでいいの?子供産んでも食べられちゃうよ?今なら逃がしてあげられるよ?」
『シナそれは愚問にゃ。諦めて現実をみるにゃ』
現実を…あ、卵産んでる。
なるほど分裂といっても卵で増えるのか。
卵を温めながらもせっせっと草を啄むひよこからは意気込みが伝わってくる。
はは…こいつ増えるつもりなのか。
「次の子は黄色でお願いします…」
痛む頭を押さえながらやっと言えたのはそれだけだった。
ひよこの色にあまり意味はないです。
その昔、兄が縁日で買ってきてくれたひよこがピンクだったのでノリでピンクになりました。
当時は兄の「変わった色だから高価な鶏になるんだよ」との言葉に本気ではしゃいでいました(笑)




