彼女の生い立ちと謎の解明
私の名前はリーランシェリラ。
皆はわたしのことをリーラって呼ぶの!よろしくね!
最近まで町で暮らしていたんだけど、町の子を貴族から庇ったらシテーゼドラン行きが決まってしまったの。
お母さんは体が弱いからここでの生活はきっと無理。だから泣く泣く教会で縁を切ってもらったのよ。
お別れの時にお母さんから聞いたんだけれど、私のお父さんは死んでなんかいない…実は、貴族だって。
よくある話だけど身分差で仕方なく別れた後に私が生まれたって言ってた。
お母さんはどきどき手紙のやり取りをしてたみたい。お父さんは私の事をとても気にかけてくれてるって聞いたときはとっても嬉しかったの!
でも…やっぱり少し複雑かな。だってお母さんと二人暮らしは楽しかったけれど寂しくもあったから…。
でも学院の…あっ!学院って言うのはね、皆でお勉強するところよ。
そこでの友達もお父さんの事を調べて私が早く戻れるように協力してくれるって誓ってくれたの。嫌なやつもいたけど、すごく優しくていい人ばかりなのよ。
だから時間がかかるかもだけど皆はきっと私を迎えに来てくれるって信じてる!
だって約束してくれたもの!!
…村のこと??
そうね、始めは何てとこに送られちゃったんだろうって恐かった。だけど村の人は私にとっても優しくしてくれたのよ。あっという間に私、ここが好きになっちゃった!
…だからなの。
私が山に入ったのは。
食べるものが少なかったり、モンスター達から村を守るために怪我や病気になってしまった人たちを元気にするにはどうしても甘露が必要だったの。
どうしても私がみんなを元気にしてあげたかったの!!
と、まぁここまでが前半にゃ。
話が長いこと長いこと。この時点で我が美しき姉妹は荷を確認し微調整の最終段階に入っている。
このリーラと呼ばれた娘、興奮しているからかよくよく話すにゃあと呆れるやら感心するやら。
聞くとよくある話にゃ。
母親は貴族の妾でその援助で暮らしていたみたいだにゃ。この娘を産んでなお、下町で暮らさせたってことは正妻やら跡取りやらはきちんといるみたいだにゃ。
正妻との仲が破綻していたら屋敷で囲うだろうし、それと同時に貴族令嬢としての教育もされる。それがないっていうことはそういうことにゃ。
しかし学院に入れるほど頭が強いとは思えにゃいんだが一芸の方で入学かにゃ?
手紙云々は、おおかた家族ごっこがしたかったとか表に名乗りでないように様子見、まぁそんにゃとこかにゃ。
ふむふむ、どうりで余り苦労を知らない手のわりには令嬢らしからぬ言動をすると思ったにゃ。
母親は援助をたんまり貰っていたみたいだにゃ。
シナも大概だがこの娘のちぐはぐ感もなかなか。
甘露はまぁ、食べれば体力的に回復するからにゃあ、欲しがったのは解らんでもにゃい。
しかし…
『にゃんで村を出た?いくら新入りだとて一人で出たらどうにゃるか解りそうにゃはずだがにゃあ』
「それは…貴女達が来たから…」
『……あぁ、我等が居れば辺りの奴等は大人しくにゃるからにゃあ。にゃるほど、理にかなったお出かけだにゃ』
「でも村から出てすぐに古犬種に追いかけられてしまったの……でも、」
そう言って言い淀む娘。
にゃんだか面白い予感がするからにゃ、話を促しておくかにゃ。
目で促すと娘は勢いよく話し出した。
こっからが中盤にゃ。
この時点で陽は暮れたにゃ。優しき我は魔術で光球を生み出し村中にばらまいた。
客である我が起きてるだから、みな起きて作業を続行するべきにゃ。
でも…私、古犬種の事を勘違いしてたのかなって、はじめは私を食べちゃうんだって思ったけど…さっきのを聞いて思ったの。
お礼を言わなきゃって。
兜と針?って言うのが危ないから私を村に帰そうとしてくれたんでしょ?そりゃ、追いかけられたのは恐かったけど私の事を守ろうとしてくれたんだもの!
それに思ったよりも古犬種って仔犬みたいで可愛かったわ。あっ!もちろん貴女達も想像よりもずっとずっと可愛らしいわ!
『にゃははははは!はは…ゲホッ…はははは!!にゃはっ…にゃはっはは』
頑張ったんだが流石の我も我慢できにゃかった。こ、この娘は正気か!?
だとしたらシナと同じくらい物知らずで危機管理がにゃってにゃい!
いやいやしかしそれゆえ面白い!!
『にゃはは!それで?可愛いから安全かもしれにゃいって??…人間にゃのに馬鹿だにゃあ』
「まぁ!失礼ね。安全とは言ってないわ。ただ私は…そう!貴女達と仲良くしたいの!」
『ふふん。それが馬鹿っていってるにゃ。小さければ、愛らしければ警戒を解くとは愚の骨頂。にゃあ?消炭の』
話を聞いているであろう消炭のに話をふってやる。我は優しいからにゃ。
『是。友好を結ぶつもりならば対価を。喰らわせろ』
「なっ…!人私は食べ物ではないわ!!」
『否』
「人ではなくて、別の物を食べましょう?貴方達ならできるでしょう?」
『否』
「どうして!?山には沢山の食べるものがあるはずよ!」
『否』
「嘘よ!人なんか食べなくても…そうだわ!甘露!甘露を食べていくって言うのはどう??」
『否』
『それこそお断りだにゃ』
「っ!どうし「リーラや。もうやめなさい」
「村長さん!!」
おぉ!途中で自警団が抜けたと思ったら代表を呼んでたのか!なかなかやるにゃあ。
「古猫種並びに古犬種の方々、この度は村の者が失礼をして申し訳ありませぬ。この老体でよければ糧として…」
「村長さんどうして!?」
「リーラ!!黙りなさい!!」
深々と頭を下げる代表者に驚く娘。なんにゃ一気に白けたにゃ~。
『長生きしたいにゃらその娘に餌としての自覚を持たせることだにゃ』
「っ!」
『それで?遅くにゃったが奇跡やら加護やらの説明を求めるにゃ。あと甘露はどうにゃった?』
餌という言葉に娘が反応するも口を紡ぐ。よしよし少し賢くなったようだにゃ。
術師でも戦士でもない人間は脆い。腕利きの冒険者ですら時に赤子のようににゃるこの地で力無い者が生きるには相応の対価が必要ってことにゃ。
個を殺し全を生かす、さすがに代表者であるこの老人はわかってるにゃ。
「甘露にございますれば…」
『もういいにゃ、それより我はさっきの小狡い感じを所望するにゃ』
「ではお言葉に甘えさせていただこうかのう。甘露なんじゃがリーラは持っておらん」
『…詳しく話すにゃ』
ここからやっと後半にゃ。ああ、だんだん面倒になってきたにゃあ。
…要約するにゃ。
リーラ…なんとか、という名の娘が古犬種に追われていると精霊が出現し、導とにゃり村への帰宅を補助。
その時に精霊に甘露を渡した、と。にゃるほど、つまらんがこれで兜と針は大人しくにゃる。
命からがら村へと帰宅すると一等仲のよい友が数人ほど病から逃れていたらしく、事情を聞く。
すると!にゃんとにゃんと精霊が現れ娘の友を治したと言うではないか!!
これはもしや!?
という事らしいにゃ。
本当はもっと長かったんだがにゃ、我も長々と耳を傾けるほど暇じゃにゃいのにゃ。
「古猫種殿にお聞きしたいのじゃ。本当にこのリーラは加護を受けておるのじゃろうか?」
「村長さん!私嘘なんか言ってないわ!」
「わかっておる。しかしだからこそ確認するのじゃよ。精霊は気まぐれでな、気の向くままに執着し、壊す。
精霊が壊さなくとも、今度は人が、リーラお主に群がり…力無いお主ではとてもとても耐えきれんばかりの欲を受ける事になるじゃろうて。
そうなった時、いくら此処が隔離されておる地だとしてもとてもじゃないが隠しきれん」
「……」
事をやっと理解したのかリーラ…なんちゃらの顔色は悪くなり微かに震える。これでやっと静かに…
「でも!…私は色々な人に助けてもらったわ」
…にゃらにゃかった。
リーラ…にゃんとかの話は続くにゃ。
「少しでも私に力があるのなら…私、みんなの助けになりたい。私がいて大好きなみんなが幸せになるなら、私、きっとどんな事があっても頑張れるわ」
「…」
真剣だがどこか夢を見ているような表情のリーラ…リ、にゃんとかと対照的に代表者の老人の顔色は暗い。
せっかく精一杯の養護をしたのにぶち壊されたんだから当然だにゃあ。
娘がいて幸せになる。では娘がいない場所は?
村長は老人らしく娘に、娘を巡っての争いやそれによって出る犠牲、その危険をいま教えたばかりにゃんだが…。
まったく、シナと同レベルの能天気っぷりだにゃあ。
『いいえ、お姉さま。シナは自身の安全確保に全力ですわよ?』
おぉ!帰ってきたか、我が麗しの姉妹よ!さすがだにゃ。
確かにシナは不用心だが…にゃんと言うかそれは…知識不足から来る感じだにゃ。
湖の主にクラゲとよくわからん名を付けて愛でるにゃんて正気の沙汰ではにゃいが、しかしシナの居た所では無害にゃ生物だったらしい。それゆえ警戒が薄いが、恐らくアレがどういった生き物か知れば暫くは距離をとるだろうにゃ。
外に関してもそうにゃ。
シナは自身の特異性を本能で理解している。異界の知識や魔具、精霊の加護といったものが外に出た時の周囲の反応を正しく理解しているからこそ山に籠る。知識は子供以下だが先を予測する知恵はそれなり。にゃんともちぐはぐで面白い存在にゃ。
それに対してリーラ…り、り?なんちゃらは、前知識があるにも関わらず先が見えてにゃい。
美しいからと近寄り、その先に起こる被害を予測できてにゃいんだろうにゃあ。
『お姉さま、そろそろ思考は終わりになさって?』
『にゃ?あぁ、すまにゃかったにゃ。ちょっと色々と比較してたにゃ』
『うふふ、そうだと思いましてお話、しておきましたわ』
『そうかそうか、流石は我が姉妹よ!』
まったく、我が種族は知を司るゆえに、種としての力が強い者ほど思考にはまりやすいのが欠点だにゃ!
思考に思考を重ね知恵を叡智へと熟成させる。うむ、これも完璧なる賢者としての務めにゃ、にゃはははは!
『お姉さま』
はっ!
いけにゃいいけにゃい、さっさと蹴りをつけようかにゃ。
どうやらリーラ…もう面倒になってきたしリーラでいいにゃ。
リーラは納得しておらず代表者は安心と不安って感じだにゃ。どれ、もう一押しにゃ。
『と、まぁ。我が姉妹がいった通りにゃ』
「でも…それじゃ、なんで精霊は私を助けてくれたの?」
『にゃんでもにゃにも、精霊はお前を助けてにゃんかいにゃいにゃ』
「っ…!」
絶句しているリーラに対してどんどん顔色が不味いことになっている村の代表者が口を開く。
「というと、まさかじゃが…」
『察しがよくて助かるにゃ。精霊が加護しているのは山に住まう我が友の方にゃ。恐らく…今回、精霊が娘を助けて動いたのは我が友の指示にゃ』
「…そのお方は何故そのような事を?ぜひ、この無知な人属の老人に、そのような方と、友の誓いを立てている、古猫種殿の考え、を、お聞かせ願いたい」
縋るような表情で言い募る代表者の顔色は白に近くにゃっているんだが少し脅しすぎたかにゃ?
『まぁ、安心するにゃ。あやつは取引には第一印象が大切とかにゃんとか言っていたからにゃ。多分そんにゃ理由にゃ』
「取引…第一印象…なんというかその、その方は…」
『我が知る限りでは商人ではにゃいにゃ。ただ今回は初回だからにゃ挨拶をかねてるから気前が良いってことにゃ。
正直な話、今回の取引は荷が直ぐに用意できなくとも回復薬を渡すようにと言われてたにゃ。無理はさせるな、とにゃ。
そしてその後の反応によって付き合いを考えるとも』
「…」
これだけ言えば此方が言いたい事は伝わっただろうにゃ。
「古猫種殿、いま少し、いま少しばかりの時間を頂けはしまいか?」
『良かろう。陽が世界樹にかかるまで待つ、存分に準備するにゃ』
「ありがたい。それでは…これ、カブリス、リーラ行くぞい」
にゃはは、これで荷がどう変化するか見物だにゃあ。
陽が世界樹にかかる→明け方の事です。
リーラちゃんは悪い子ではないんですが、苦労を知らないために残念な感じに成長してしまった模様。
ちなみに品川さんは現在爆睡中です。




