「日時リサイクル法(創作掌編)」
「うわ、この空気なんかヌルヌルしてる。」
男子高校生の土生と日野は、昨日と同じように屋上でコーヒー牛乳を飲んでいた。
「あ〜確か昨日コーヒー牛乳ぶちまけたから。クリーンアップ忘れられたっぽいな。」
日野が頭をかきながらヌルヌルになった土生の制服を眺める。
「なんだよ、リサイクル法ってさ。なんでもリサイクルすればいいって思ってんだろ?」
土生は愚痴りながら昨日と同じようにゴクッとコーヒー牛乳を飲み干すと、昨日と同じように柵から校庭を眺めるのだった。
大気中のエネルギーであるマナの枯渇のため、使用した一日をクリーンアップして使いなおす「日時リサイクル法」が三次元上位存在機構と地球各国の間で可決された。
「ニュースには書いてあったけどさ、こうやって体験してみると気持ち悪いよな。『昨日吸った空気が大気中にある』の。ちょっとニオイもするんだぜ?」
懲りずに悪態をつく土生。リサイクルされた日だからといって、生物がリサイクル前の日と同じように動かなければならないわけではない。むしろ無生物が勝手に動くのでそれに合わせてさえいれば細かいところはテキトーでいいのだ。
「昨日っていつのリサイクルだっけ?」
日野が廊下をのんびり歩きながら土生に聞く。
「あー、いつだっけな。確か…。」
昨日割れたはずの花瓶。昨日と同じように惰性で投げられた野球部のボールが飛んで来る。
パリン。
「危ねぇだろ!」
窓に向かって土生が怒声をあげた。
「分かってんのにノロノロ歩いてんのがいけねぇんだろうが!」
ボールを取りに来た野球部の木場と言い合いになる。
まあまあ、そこは落ち着いて。となだめる日野。このやりとりも何回目だろうか。
キーンコーンカーンコーン。
自動でチョークが動くため授業にならない授業を終えて土生と日野は帰路につく。
「明日の弁当何か楽しみだな。誕生日だぜ?」
「明日もどうせリサイクルだからお前の弁当当ててやるよ、多分一昨日の唐揚げと…。」
身も蓋もない事言うなよ〜と土生と日野はすっかり落ちた8月8日の夕日の前で笑う。
明日は、来なかった。
2026年8月8日までで未リサイクル分、現代数年分の在庫を使い切ってしまったのだ。新たな明日を生成するマナなど当然ない。
この次元の時間は時間保管室にて凍結されることとなり、8月9日、すなわち土生の誕生日が来ることは永久になくなってしまったのである。
土生と日野は、布団の中で二度と来ない明日をそわそわと待っている。
ーENDー




