「タイムイズマネー(創作掌編)」
参った、完全に寝坊した。
このままだと遅刻してしまう。
今日は入学式。初日から遅刻するなんて面子が立たない。
こうなったら奥の手を使うしかない。
僕のつま先から段々と真っ青な異形に変わっていく。
僕の名前は佐野。人間ではなくフォーミュラ星人という宇宙人だ。
その名の通り脚がとても早く、擬態を解いて駆け抜けたら遅刻なんてするはずが…。
「おはよう!佐野くん!」
ダレデスカアナタ。
真っ黄色の知らないおじさん。
生えてる毛(?)まで真っ黄色である。
「私はマラソン星人!早速だが、君の通う高校まで競争だ!」
何を言っているのか全く分からない。
しかしもともと目的地は高校だ。乗ってやろうじゃないか。
「言っておくが僕はフォーミュラ星人だ。並の宇宙人とは比べものにならないくらい速いぜ?」
これは事実である。
宇宙一脚が早いと言われているフォーミュラ星人。普通に走ればアンタなんてひとたまりも…。
「『位置について!!!!』」
「『ヨーイ!!!!』」
「『ドン!!!!』」
視界がみるみる後ろに下がっていく。
もう勝ち誇った気でいると…。
パカラッパカラッパカラッパカラッ。
ペガサスに乗ったマラソン星人。
いや走れよ。
そういえば競争としか言っていなかった。誰も徒競走とは…。
という冷静な分析をしている場合ではない。目の前にサグラダ・ファミリアモドキがある。
「こうなると思って君の通学路に巨大迷路を敷き詰めておいた!!!!」
オイ汚いぞ。
あとお前だけ飛べるのズルだろ。
フォーミュラ星人は直線は得意だが、クネクネとした道はとても苦手なのだ。
僕がサグラダ・ファミリアのような迷路にうんとこすんとこ言ってるうちにヒョイヒョイと空を駆けていくマラソン星人。
どこから取り出したのかペガサスの上でジャグリングをし始めた。
勝ったつもりでいるのか…?
というかあんまりこういう場面でジャグリングしないだろ。してもスマホいじるくらいじゃないのか?
「キャー!!!!!フォーミュラ星人よー!!!!」
「フォーミュラ星人の顔ファンも手配しておいた!」
照れるね、とか言っている場合じゃない。どこから手配するんだそんなの。
「ついでにアンチも!」
「おのれフォーミュラ星人…ッ!!!!」
なんでだよ。
というかアンチとファン両方同じ空間に呼んだら…。
「フォーミュラ星人のどこが悪いのよ!!!!」
「青さだ!!!!奴らは精神まで青い!!!!」
「そんなの人によるじゃない!!!」
あーあ、言わんこっちゃない。
喧嘩が始まってしまった。
僕が迷路を抜けた頃にはファンもアンチもボロボロになっていた。
「えー…この度は…。」
目の前で新郎と新婦がスピーチしてる…。結婚式に野良とかあんまりないだろ。
「ケーキ入党!バンザーイ!バンザーイ!」
『甘党』と書かれたタスキと目が片方だけ書かれたダルマを用意している。おい、入刀しろよ。あとバンザーイは当選だろ。
とか言ってる場合じゃない、このままでは本当に遅刻してしまう。
マラソン星人は…?
「ちょっとあり得ないですよね〜。」
アイツ呑気に街頭インタビュー受けてやがる。
そんなこんなで走っていると隣の家のカホちゃんが話しかけてきた。
「何急いでるの…?今日日曜だよ…?」
時計を見る。普通に月曜日である。普通に月曜…。全然月曜じゃねぇか!!!!!騙された!!!!!
「そして私はカホちゃんじゃないぞ!!私だ!!!!マラソン星人だ!!!!!」
お前かい。
そろそろラストスパートに入ってきた。
「いよいよ真剣勝負だ!」ブロロロロロ
これまで一秒たりとも真剣勝負の時間は無かったと思うが…。
というかアンタいつの間にペガサスからバイクに乗り換えたんだ。
一生懸命走る。走る。走る。
バイク程度なら頑張れば追い越せる。
ようやく校門の前に着いた。
「残念だったなマラソン星人!!」
僕は天に向かって叫ぶ。これで僕の勝ちだ。
「負けたよ…。」
マラソン星人は虹色のハンカチで涙を拭いている。どこに売ってるんだそんなもの。
「で、君は競争に夢中で目的地の高校を間違えてウチに来たと。」
「ハイ…すみません…。」
夢中になりすぎて学校間違えた…。
ーENDー




