「ソフトビニール(創作掌編)」
昔の…話です…
中学生の頃仲の良かった男子がいました。
その子はクラスで浮いていて、いつも眉をひそめられるような。
自分の世界に入ってるような。
そんな子でした。
その男の子は大事に大事にソフトビニール人形を持っていました。
どこから手に入れたのか、隣のクラスの、転校してしまったはずの女の子そっくりの。
そのソフトビニールの人形は精巧に作られていて、手袋が外れたり、関節は動きませんが何故かいつも違う服でした。
学校では制服しか見たことがありませんでしたから、その服が女の子本人の趣味かは知りません。
ある日、それを見つけてしまったのです。顔までそっくりに塗装されたソフトビニールの、その人形を。
私は不気味に思い、聞いてみました。
「それ、どうしたの。」
「宝物。」とだけ返ってきました。
「また来週見せてあげる。」彼は言いました。
彼はその日から口を利いてくれなくなりました。
目に覇気がなくなった、というのでしょうか。
あんなにキラキラしながら人形を見てた目も。まるでそれこそソフトビニールのような、魂の抜けた目で日常を見るようになってました。
私は問い詰めました。
追いかけました。
「見せてくれるんじゃないの。」
彼は何も言わずに逃げました。
階段を走りました。
珍しく、鬼気迫るような表情でした。
廊下を走りました。
私ではない何かから逃げるような、そんな表情でした。
彼は転んでしまいました。
首を打ってしまったようです。
何も言わなくなりました。
動かなくなりました。
そんな彼も、今では私のポケットの中。誰にも見せません。宝物ですから。
約束の来週は、永遠に来ません。
今日はどんな服を着る?あなた。
ーENDー




