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「オセロ(創作掌編)」

「確か、2年前の夢の話です。


私は黒猫を飼っていたのですが、その黒猫が出てきたんです、夢に。


その猫は全身真っ黒、目が水色のかわいい猫でした。


目が水色で、ラムネのビー玉みたいだったので『ラムネ』なんて呼んで可愛がっていたんですけどね。


ある日突然死んでしまったんです。事故でした。


真っ黒な自動車に轢かれて。


そんなラムネちゃんが夢に出てきて何をしたかというと、これはこれは長ったらしい説教をし始めたんです。


餌はもっとこまめに出せだの、パソコンよりももっと構えだの、それはそれはいろいろでした。


で、説教が終わると大事に大事に何かの球根を差し出してきたんですよね。


『この球根をやる。これを自分の代わりに育ててくれ。』なあんてしんみりしたことを突然言い出すものだから困惑しました。


じっくり考えました。そしたら『わかった』と答える直前で夢が覚めたんです。


それで、夢から覚めたら枕の下に何かゴツゴツしたものが置かれているではありませんか。


それはそれは立派な球根でした。


私は育てました。夢の通りにしてあげるのがラムネちゃんのためだと思ったからです。


きれいな花が咲きました。白百合の球根でした。


私は丹精に育てて、観察日記を書いたり写真を撮って思い出に残していました。


しかし、残念ながらある日近所の子供に、自転車で轢かれたんでしょうね、茎を折られて枯れてしまいました。


そしたらなんと不思議なことに、白百合が夢に出てきて説教を始めたではありませんか。


水はもっとこまめにやれだの、パソコンを見るより花を見ろだの、それはそれはいろいろでした。


で、説教が終わると大事に大事に段ボールを差し出してきたんですよね。


『この黒猫を自分の代わりに育ててくれ。』なあんてしんみりしたことを突然言い出すものだから困惑しました。


じっくり考えました。そしたら『わかった』と答える直前で夢が覚めたんです。


それで、夢から覚めたら家の前には黒猫の入った段ボールが置いてあるではありませんか。


その猫は全身真っ黒、目が水色のかわいい猫でした。


目が水色で、ラムネのビー玉みたいだったので『ラムネ』なんて呼んで可愛がっていたんですけどね。


ある日突然死んでしまったんです。事故でした。


真っ黒な自動車に轢かれて。


そしたら例の通り球根をやるなんて言い出すものだから、せっせと球根を育てました。


そうこうしていたらまた目を離してるスキに近所の子供に自転車で轢かれて、茎を折られて枯れてしまいました。


白百合は言いました。『この黒猫を自分の代わりに育ててくれ。』って…。


そしたら黒猫は『この球根を』って…。


挙句の果てに白なのか黒なのか分からなくなってしまってですね、灰色の怪物が次の幼体を育てるように急かしてくるだけの夢になってしまったんです。


毎晩がそうなって、気が滅入ってしまって、だんだん現実なのか夢なのか分からなくなって、誰にも、大事な大事なあなたにすらも言えなくて。


そんなこんなでぼーっとしてたら…


……なんて、作り話ですよ。2年前の話なんて誰も覚えてませんってば。


で、女の子にはもっとこまめに連絡を送らないとダメですよ?彼氏失格です。パソコンばっかりやってないで。


死んでしまった私の代わりに、この黒猫、いや…『ラムネ』ちゃんを育ててくださいね。」


そう微笑む灰色の目の君が読んでいた本には、白百合の押し花と、黒猫の栞が大事に挟まれていた。


あーあ、嫌な夢。道路に花を供えるようになってもう2年か。


あれ、玄関前に段ボールなんてあったっけ。


コトッ。


「ニャーオ。」


ーENDー

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