客が増えたのか、タクシーが減ったのか
八月五日。
今日は、本来なら休みだった。
休日返上で出勤している。
出庫から十時間。
営業回数は二十三本。
売上は三万八千円。
平均単価は、およそ千六百五十円。
決して高くはない。
それでも、平日の昼間としては流れが良い。
一昨日と比べると、明らかに仕事が続いている。
一昨日は、走っても走っても空振りが多かった。
今日は一本一本の単価こそ低いものの、次の仕事までの間隔が短い。
長打はない。
それでも、内野安打が続いている。
平日の昼は、それでいい。
金沢の日中営業で、毎回長距離を狙うのは現実的ではない。
尺、つまり三千円を超えるような仕事が偶然出ることはある。
けれど、それは狙って取れるものではない。
短い仕事を切らさず積み重ねる。
その中に、たまに二千円、三千円の仕事が混ざる。
それが日中営業の基本だと思っている。
今日、八時間の時点では十八本、二万九千六百円。
内訳は、GOが六本。
Uberが五本。
会社依頼が一本。
残りの六本が手上げだった。
手上げが全体の三分の一。
普段より比率が高い。
手上げには迎車料金が付かないため、平均単価が低い理由の一つは、おそらくそこにある。
それでも今日は、仕事そのものが途切れない。
なぜなのか。
そこで一つ、仮説が浮かんだ。
今日は、俺と同じ隔日勤務のドライバーにとっては休みの日だ。
俺は休日返上で出勤している。
つまり、普段なら同じ時間帯に走っている隔日勤務のタクシーが、今日は少ない可能性がある。
客が一昨日より大幅に増えたとは限らない。
走っているタクシーが減ったことで、一台あたりに回ってくる仕事が増えているのではないか。
会社依頼なら、出勤している車が少なければ、その分だけ一台に回ってくる確率は上がる。
手上げも同じだ。
同じ道を流している空車が少なければ、自分が客の前を通る確率は高くなる。
GOやUberも、周囲のオンライン車両が少なければ、配車を受ける可能性は上がる。
もちろん、これはまだ仮説だ。
今日は八月五日。
五十日でもある。
夏休みで金沢に入ってくる観光客が多かった可能性もある。
朝、金沢駅を見ると、タクシーを待っている人がかなりいた。
需要そのものが、一昨日より強かった可能性も十分にある。
おそらく、理由は一つではない。
夏休みの観光需要。
五十日の業務需要。
そして、隔日勤務者の休番による供給減。
その三つが重なったのかもしれない。
一昨日は、客が少なく、空車が余っていた。
今日は、客が少し増え、走っている空車が少なかった。
そのわずかな違いだけで、一台あたりに回ってくる仕事は大きく変わる。
タクシー営業は、客の数だけを見ても分からない。
街に何人の客がいるのか。
その客を、何台のタクシーで分けるのか。
重要なのは、需要と供給のバランスだ。
今日は、単価が高い日ではない。
ロングが続いているわけでもない。
ただ、内野安打が途切れない。
十時間で二十三本、三万八千円。
この数字は、需要が爆発した数字ではない。
一台あたりの分配が良かった日の数字なのかもしれない。
休日返上で出勤したからこそ、その違いに気づいた。
客が増えたのか。
タクシーが減ったのか。
答えは、たぶん両方だ。
売上を作るうえでは、客の多い日を探すだけでは足りない。
同じ数の客を、少ない台数で分ける日。
つまり、タクシーの少ない日に走ることも、一つの営業戦略になる。




