第三話
レジスタンスのベースキャンプは、すぐそこに迫っていた。降り積もる灰を舞い上げ、金色のマナを翼から噴射する漆黒の魔導戦装ノクティス・フレームが、蹂躙の咆哮を上げる。
カイルの放つ援護射撃を紙一重で掻い潜り、ルナティックは執拗にヴァルキュリアへと斬りかかった。
「……君を壊せば、何かわかるのかもしれない」
虚空を見つめるような瞳で、彼女は独り呟いた。その刹那、ノクティスのコックピットに、本部の研究室からの通信が割り込む。
『ルナティック。ガルド帝国は間もなく瓦解する。せめて最後は、お前の手で全てを破壊しつくしなさい』
生みの親、ドクター・ハーヴェイの氷のように冷たい声。それと同時に、ルナティックの体に異変が走った。心臓が早鐘を打ち、肺を灼かれるような激痛が彼女を襲う。
「ドクター……どうして……っ!」
彼女の胸に埋め込まれた魔導核が、不気味な黄金の輝きを放ち、機体の魔導核と共鳴を開始した。
もはや、そこには少女の意識は存在しない。命令を忠実に遂行し、すべてを無に帰すだけの「殺戮兵器」が、そこにいた。
「ルナ! ルナ、応答しな!! 何があったんだい!」
マルセラの悲痛な呼びかけすら、今の彼女には届かない。ノクティスは流れるような動作で魔導銃を構えると、ヴァルキュリアを強引に跳ね除け、その銃口をベースキャンプへと向けた。
放たれた金色の閃光。
それは一直線にキャンプを貫き、耳を劈くような爆音と共に、すべてを白く塗り潰した。
「あぁ……うそ、でしょ……?」
アリアは、目の前の光景を理解できなかった。
つい先刻まで仲間たちの声が響いていた場所には、ただ虚しい煙が立ち登っているだけだ。ミナやリュシアン、他にも……。まだあそこには、たくさんの「命」があったはずなのに。
「いやあぁぁああ!!」
魂を裂くような絶叫。
動揺し、完全に無防備となったヴァルキュリアの隙を、狂えるノクティスは見逃さなかった。金色の刃が、アリアの魔導核を貫こうと振り下ろされる。
「アリア!! ボサッとするな!!」
カイルの叫びが響いた。
赤い魔導甲冑が、ブーストを全開にして上空へと跳び上がり、ヴァルキュリアを突き飛ばす。その直後、ノクティスの刃は、身代わりとなった赤い機体のコックピットを無慈悲に一刀両断した。
「カイル……!?」
目の前で、親友の機体が真っ二つに裂け、紅蓮の爆炎に包まれる。
帰るべき場所と、背中を預けた友。
すべてを瞬時に奪い去られた絶望に、アリアの視界は真っ白に染まった。




