第一話
降り積もる灰と、散乱する魔導素の火花。その中心で、レオンは『黒曜三刃隊』の猛攻を独り、その身に受けていた。
劣勢のヴァルキュリアを援護すべく、カイルを向かわせた判断に悔いはない。だが、二人でも隙を見いだせなかった精鋭を相手に、一人で抗うのは土台無理な話だった。装甲が悲鳴を上げ、視界が警告の赤に染まる。
「……やはり一人じゃ分が悪いか。まあいい、アリアがノクティスを止めてくれるなら、俺の命一つくらいは安いもんだ」
レオンは皮肉めいた笑みを浮かべ、剣を構え直す。一秒でも長く、この二機をここに釘付けにする。それが今の彼に課せられた、死に物狂いの任務だった。
しかし、限界は音を立てて訪れる。執拗な連撃に耐えかね、ついに魔導盾が火花を散らして弾き飛ばされた。
「くそっ……ここまでか……!」
剥き出しになった魔導核。そこへ、マルセラとガルマの冷徹な一撃が突き立てられようとした、その刹那。
二機の間を、一条の閃光が切り裂いた。
アルヴェリア王国を捨て、泥濘の道を突き進んできた三機の魔導甲冑。ダリルたちがその戦場に辿り着いたのは、運命が残酷な天秤を傾ける直前だった。
「俺は中央へ向かう! ヴォルフ、ソフィア、お前たちは高台だ!」
「了解!」「……死なないでよ、ダリル!」
短く交わされる言葉を背に、ダリルは脚部のブーストを最大出力で咆哮させた。
視界の先、二機の黒き影に追い詰められた、満身創痍の赤い機体。理由はないが確信があった。あれに乗っているのは、自分たちを、そしてこの国を置いて去った「あの男」だ。
「……何の説明もせずに、また独りでいなくなる気か、レオン!」
届かないと知りながらも、叫ばずにはいられなかった。
ダリルは魔導銃の照準を極限まで絞り込み、引き金を引き抜く。放たれた高密度の魔導素の弾丸は、黒曜三刃隊の切先を弾き飛ばし、間一髪でレオンの命を繋ぎ止めた。
「……全部終わったら、きっちり説明してもらうぞ。死なせやしない」
ダリルの呟きは、激しい機動音にかき消された。
だが、その瞳にはかつての軍人としての義務ではなく、友を救い出すという強固な意志が宿っていた。




