第五話
降り積もる残滓の灰が、魔導甲冑の駆動音にかき消される。
視界の悪い灰のカーテンを切り裂き、二機の黒き影が滑走してきた。レオンとカイルはそれを、正面から真っ向へと迎え撃つ。
「奴らの連携は至芸の域だ……まずは分断することを考えろ。深追いは禁物だぞ」
レオンが通信機越しに、鋭い指示を飛ばす。幾度となく刃を交えてきた『黒曜三刃隊』のマルセラとガルマ。その呼吸の合った波状攻撃には、百戦錬磨のレオンですら幾度も煮え湯を飲まされてきた。
「了解です!……レオン隊長、アリアは大丈夫でしょうか?」
「そんなことを考えている余裕があるのか? ノクティスは……今はアリアを信じるしかない」
迫る二機との距離がゼロになる。
「わかりました……! 今は目の前の敵を、叩くことだけを考えます!」
刹那、四機のブーストが同時に咆哮を上げた。
激突。
魔導盾が魔導剣を受け止め、逃げ場を失った魔導素が火花となって飛び散る。激しい打撃の応酬に、周囲を舞う灰がさらに色濃く、重く立ち込めていく。
「くそっ……! 隊長、やっぱり引き離せません!!」
「厄介だな……。一瞬の隙を突いて、どちらかを再起不能にするしかない」
カイルの声に焦りが滲む。だが、それは対峙する黒曜三刃隊も同じだった。決定打を放てぬ苛立ちが、金属同士の軋みとなって戦場に響く。
一方、戦場を俯瞰する高台。アーヴァインは、微かなマナの揺らぎさえ逃さぬよう、狙撃銃のスコープに神経を集中させていた。
「アーヴァイン、狙撃手は居そうか?」
高台の影で、クライヴが退屈を紛らわせるように問いかける。黒曜三刃隊の狙撃手、リュカを野放しにすれば、前線のレオンたちが背後から抜かれる。
「いえ、まだ。……ですが、代わりに厄介なのが来ました。ガルドの機体が二機、ベースキャンプへ向かっています」
アーヴァインがマークした座標。そこには、あのノアとアンドリューの姿があった。
「大剣と二丁銃……サーシャとキミの報告にあった機体ですね」
「あぁ、あいつらか。……アーヴァイン、お前はそのまま狙撃手の首を狙ってろ。あいつらは俺がやる!」
クライヴは脚部のブーストを最大出力で解放した。一対二。絶望的な数差のはずだが、彼の口元には不敵な笑みがこぼれていた。
「こいつは……厳しい戦いになりそうだ。なぁ?」
言葉とは裏腹に、弾んだ声。
アーヴァインの懸念を置き去りにして、クライヴは両手の魔導剣を抜き放つ。彼は飢えた獣のような速度で、アンドリューとノアが駆る漆黒の機体へと突っ込んでいった。




