表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/66

第四話

 イグナスとサーシャが率いる先遣隊がベースキャンプを発って数時間後。静寂を守っていた拠点の空気を、つんざくような警報音が切り裂いた。

『緊急事態発生! 緊急事態発生! ガルド帝国の戦闘部隊が本拠点に接近中です。戦闘班の方々、直ちに迎撃をお願いします! 繰り返します――』

 スピーカーから流れる悲鳴に近いアナウンス。緊迫したベースキャンプ内を、戦闘用ブーツの足音が激しく打ち鳴らす。戦闘班に選ばれた兵士たちは、迷いなく自身の魔導甲冑マナ・アーマーが待つ格納庫へとひた走った。

 レオンとクライヴも互いに視線を交わし、短く頷き合う。

「アーヴァイン、お前は俺と来い! 俺が守ってやるから、お前は敵の狙撃手を叩き落とすことだけ考えろ!」

 クライヴが咆哮ほうこうに近い声で告げると、アーヴァインは「了解」とだけ短く返し、その背を追った。

「お前達は俺と行くぞ。カイル、アリア、行けるな?」

「いつでも行けます!」

 レオンの問いかけに、カイルは弾かれたように答える。

「私も……ヴァルキュリアも、準備はできています!」

 アリアも決意を込めて応じ、各々が自身の機体へと駆け寄った。

 ハッチを開け、アリアが機体に乗り込もうとしたその時。格納庫の重い扉が開き、ミナが姿を現した。

「……アリア、カイル。絶対、戻ってきてね? 約束だよ」

 そう絞り出すように告げるミナの瞳には、ぬぐい去れない不安の色が浮かんでいた。胸の奥を冷たく撫でるような、嫌な予感。それがミナに、引き止めたいという衝動を突き動かしていたのだ。

「大丈夫、必ず帰ってくるよ……!」

「当たり前だろ! 俺たちがそう簡単にくたばるかよ!」

 二人はミナへ力強い言葉を遺し、それぞれのコックピットへと滑り込んだ。

「カイル、俺たちはいつも通り黒曜三刃隊オブシディアン・トライエッジの近接組を叩く。アリア、お前はノクティスを頼むぞ!」

 通信機越しに響くレオンの指示。二人が力強く了解を返すと、三機の魔導甲冑マナ・アーマーは爆発的な機動音を響かせ、戦場へと躍り出た。

「……あの子たちは、行ってしまったようだの」

 いつの間にか背後に立っていたリュシアンが、ミナの隣に並んで呟いた。

「キミもエマ君たちと共に退避しなくてもよかったのかね? 今回の戦域はあまりにベースキャンプに近い。ガルドの狙いはここを根こそぎ破壊することじゃ。残るのは、あまりに危険すぎる」

 リュシアンの憂慮ゆうりょに、ミナは静かに首を振った。

「わかっています。でも……私はここでみんなを待ちたいんです。帰ってきたみんなに、真っ先にお帰りって言いたいから」

「そうか、そうか……。ならば、ワシも一緒に待つとしよう。……皆、何事もなければよいがのう」

 二人は、仲間の機体が消えていった格納庫の出口を、祈るように見つめ続けた。

 外には、絶え間なく魔導素マナ残滓ざんしが降り注ぎ、荒れ果てた大地を灰色に染め上げている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ