第三話
ガルド帝国の前哨基地を、紅蓮の影が埋め尽くす。レジスタンス『灰の灯 -アッシュ・ランタン-』による全方位同時強襲。アルヴェリア、ガルドを問わず、戦争を継続させるための「拠点」を叩き潰す――それが彼らの選んだ戦いだった。
先頭を駆けるレオンの機体に続き、カイル、そしてアリアが戦場を疾走する。アリアが乗るのは、ヴァルキュリアではない。まだ目覚めぬヴァルキュリアに代わり、彼女はレジスタンスが調整した、ごく標準的な魔導甲冑を駆っていた。
背後にはサーシャ、クライヴ、アーヴァイン。さらに数多の随伴機が、鉄の唸りを上げて帝国の防衛線を突破する。
迎え撃つガルド側からも、漆黒の機体群が飛び出した。
黒曜三刃隊、そしてノクティス。その脇を固めるのは、見慣れぬ二機の随伴機だ。
「アリア!お前のその機体は、限界まで出力を引き上げているが、ヴァルキュリアのような万能性はない。無茶をするなよ!」
レオンの鋭い声が、魔導通信機越しに響く。
「は、はい……!」
アリアは操縦桿を強く握り直した。
補助輪のように自分を助けてくれていたグレイスの声は、今は聞こえない。
この数週間、アリアはベースキャンプでサーシャによる地獄のような特訓に耐えてきた。元ガルド帝国の訓練教官であったサーシャの教えは、アリアの体に「本物の操縦技術」を叩き込んでいた。
(……大丈夫。イメージして。私の魔導素を、この機体の魔導核に繋げるんだ……!)
戦場が動く。
帝国側の狙撃機が定石通りに高台へ。それと同時に、ノクティスを筆頭とした突撃隊が牙を剥く。
「新規が二機か。クライヴ、私達でやろう」
サーシャの乗る赤い機体が、大剣を構えたアンドリューの前へと躍り出た。彼女の機体は、拳にアーチ状の魔導素の刃を装着した近接格闘仕様の魔導拳を装備している。
「面白いじゃねえか!その武装、気に入ったぜ!!」
クライヴは二振りの魔導剣を抜き放ち、二丁銃を弄ぶノアへと肉薄する。
「いつもの三機は俺たちでやるぞ!アリア、カイル、遅れるな!」
レオンの機体が先陣を切り、ノクティスと黒曜三刃隊を真正面から捉える。
「了解、レオン隊長!今の俺たちならやれます!!」
カイルの声には、かつての迷いはない。訓練を経て磨かれた彼の技術は、今や帝国の精鋭とも渡り合える域に達していた。
「……了解です!」
アリアもまた、震える手足を意志の力で抑え込み、冷徹に光るノクティスの瞳を真っ直ぐに見据えた。
英雄の力ではない。これは、アリア・フィオルという一人の人間の戦いだった。




