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第四話

 ドクター・ハーヴェイの呼び出しを受け、四人は冷え切った研究棟けんきゅうとうの廊下を歩いていた。

「あいつ、自分は軍籍ぐんせきすらないくせに……。私たちを呼びつけやがって」

「無駄だよ、マルセラ。上官連中がドクターの意向を『絶対』だと認めているんだからね」

 マルセラのぼやきを、リュカが溜息混じりに受け流す。

 会話はそこで途絶え、足音だけが重く響く。突き当たりにある巨大な自動扉の前でマルセラが立ち止まり、不機嫌そうに認証パネルを叩いた。

「ドクター・ハーヴェイ。……入るよ」

 返事を待たずに扉が開くと、そこには薬品と機械油の入り混じった独特の臭気が立ち込めていた。

「来たか。全員揃っているね?」

 部屋の中央、ホログラムのデータを操作していたハーヴェイが顔を上げる。その傍らには、見慣れない二人の男がいた。一人は椅子に深く腰掛け、もう一人はポケットに手を入れて壁に背を預け、退屈そうしている。

「ドクター。忙しい最中に呼び出したんだ、用件を早く済ませておくれ」

 マルセラが鋭い視線を男たちに向ける。すると、壁際にいた男がニヤリと口角を上げた。

「そう急かすなよ。俺たちは今日から、そっちのお嬢さんの『新しいお守り役』を仰せつかった身だ。あんたらだけじゃ、少しばかり手が回らないようだからな」

 軽薄そうな男の言葉に、マルセラの後ろにいたガルマが前に出る。

「……おい、博士。こいつらは何だ。俺たちが信用できないとでも言うのか?」

「これからの戦い、ヴァルキュリア側の随伴機も増強されることが予想される。戦力は多いに越したことはない」

 ハーヴェイは感情をはいした声で、事務的に告げる。

「独断で軍の上層部と掛け合い、ノクティスの随伴に『精鋭』を二名追加することにした」

「そんな怖い顔すんなよ、べっぴんさん。綺麗な顔が台無しだぜ?」

 壁際の男が、ポケットに手を突っ込んだままマルセラの顔を覗き込む。

「俺はノア・モルガン。ガンマンだ。……んで、あっちの死んだ魚みたいな目をしてる奴が、アンドリュー・トレス。ま、仲良くやろうや……べっぴんさん?」

 アンドリューと呼ばれた椅子に座る男は、自分の名前が出ても表情一つ変えない。

「面倒臭いなぁ……俺は仲良しゴッコするつもりはないからさ、そっちで適当にやっててよ」

 彼はそのまま、興味を失ったように視線を落とした。

「……うむ。君たちが仲良くやろうがやるまいが、ノクティスを護り、ガルド帝国に戦果せんかをもたらすのなら何の問題もない。話は以上だ。各自、自室へ戻りなさい」

 ハーヴェイはそれだけ言い捨てると、再び研究室の奥へと消えていった。アンドリューもそれに合わせるように無言で立ち上がり、部屋を出ていく。

「ふん、仲良くする必要なんかないさ。あんたたち、行くよ!」

 マルセラがきびすを返し、ガルマとリュカもそれに続く。

 ルナティックだけがその場に残されると、最後に残ったノアが彼女へ向かい、茶化すように手を振った。

「気の強い奴だな……まぁいいや。んじゃ、可愛いお嬢さんも、これから宜しくな」

 軽薄な笑みを残し、ノアも去っていく。

 最後に独り、静寂の戻った研究室に残されたルナティックは、自分の指先をじっと見つめた。

「仲間……? やはり、分からない……」

 彼女が唯一知っている「繋がり」は、アリアの記憶から流れ込んできた、胸が痛くなるほどの温もりだけ。それとはあまりにかけ離れた「戦友」という名の他者たちを、彼女はまだ受け入れられずにいた。

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