表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/66

第七話

 カイルは、沈黙したままのヴァルキュリアを担ぎ上げると、脇目も振らずに駆け出した。

 背後では、味方であったはずの特務小隊が困惑と怒りの声を上げている。

「何を考えている、カイル・ヴェルナー! 止まれッ!!」

 魔導通信機マナ・リンクから響くのは、ダリルの裂けんばかりの怒号。

「カイル! そっちは基地とは逆方向よ! 戻ってきて!!」

 ソフィアの悲鳴に近い呼びかけを振り切り、カイルは約束の座標だけを目指した。

「止まれカイル! ――これ以上は、強行手段を取らせてもらうぞ!」

 ヴォルフが魔導銃マナ・ガンの銃口を、カイルの背中へと固定した。引き金に指がかけられた、その瞬間。

 ――ッ、ガキィィンッ!

 どこからか放たれた一筋の光が、ヴォルフの魔導銃マナ・ガンを握る右腕を正確に撃ち抜いた。火花が散り、間髪かんはつ入れずに放たれた二射目が、彼の乗る魔導甲冑マナ・アーマーの左膝を粉砕する。

「なんだと!?」

 ヴォルフの乗る魔導甲冑マナ・アーマーが、無様に地面へと崩れ落ちた。

「ヴォルフ・エーデル! ……くそっ、ソフィア・シュタイン、彼を連れて基地へ戻れ! 救護きゅうごが先だ!」

「でも……! わかりました、了解です!」

 ソフィアは渋々頷くと、行動不能になったヴォルフに肩を貸し、撤退を開始した。

「リサ・フェルナー、俺と共に追跡を続行するぞ! ……アーヴァイン・カスティアはどうした? さっきから応答がないが!」

「落とされたって報告は無いよ。……ねぇ、まさかさっきの狙撃」

 リサの脳裏を過る、あの完璧な微笑みを崩さない狙撃手の顔。その嫌な予感に答えるかのように、二機の行く手を正確無比せいかくむひな狙撃が阻む。

 それは殺すための一撃ではない。関節部をかすめ、機動を制限し、カイルとの距離を無理やり引き離すための「精密な外科手術」のような狙撃。

「アーヴァイン・カスティア! 現在地を報告せよ、これは命令だッ!」

 ダリルの叫びに返ってきたのは、言葉ではなく、コックピットの装甲を削るするどい弾丸の衝撃だった。

「まさか、マジでアーヴァインなの!?ふざけんじゃないわよ!!」

 リサが通信機越しに悪態をつくが、返信はない。

 沈黙を守ったまま、アーヴァインはただ機械的に、かつての仲間たちの足を止め続ける。

 一定の距離を保たされたまま、二人はカイルが逃げ込んだ先で一台の大型車両を視界に捉えた。その荷台には、魔導甲冑マナ・アーマーを収容できるだけの十分なスペースが確保されている。

「まさか、アレに乗せて逃げ切るつもり!?」

「落ち着けリサ・フェルナー! カイル・ヴェルナーの脚部を狙え、機体ごと止めるんだ!」

 ダリルが魔導銃マナ・ガンを構え、カイルの背中を照準器スコープの中心に捉える。

 だが、ダリルが引き金を引くよりも早く。

 カイルが向かう丘の向こう側から、二機の「異質な」魔導甲冑マナ・アーマーが姿を現した。

 ――深紅の装甲に、不気味に脈動する緑色の魔導核コア

 王国軍でも帝国軍でもない、独自の配色と意匠。噂にしか聞いたことのなかった、レジスタンス組織『灰の灯 - アッシュ・ランタン -』の所有機。

 それは、閉ざされたアルヴェリア王国の平穏が、完全に終わりを告げた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ