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………とはいえ、社会人ですので報・連・相はしますよ?

「………と言ってはみたいですが、実際問題は連れて帰った時の受け入れ準備や諸々の手続きなどが必要なので団長に報・連・相ですね」


そう言ってユークリッドは“うーん”と伸びをする。アルフレットに見栄は張ってみたものの………連れて帰った際に自分の首一つで購えればいいが上司に迷惑をかけるような事態になる事が予想されるので報告・連絡・相談は必須だろう。何より保護した子供達の居場所がないでは話にならない。


「ほうれんそう?」


ユークリッドがしみじみと遠い目をするのにアルフレットは下に落として図を確認していた視線をあげる。


「報告・連絡・相談の略ですね」 


現実逃避から戻ってきたユークリッドは残りの携帯食を口に運びながらアルフレットに微笑む。


「どう考えても今回の事は私の首一つで購える範囲を越えてますし。何より部下は上司にどこまで職務が進んでいるのかを報告する義務がありますから」


「はぁ………」


「例えば私とアルフレット………アルフは今、作戦会議中だということを伝えれば相手が何をしているのかはすぐに分かりますよね?」


「確かにそれはそうだな」


「でもそれでは何に対して対策を練ってるかは上司には想像しかできません」


「それは分かる」


「ですが、上司は部下が何に対して対策をたてているかを知ってもらわないと責任をとってもらう事は出来ませんよね?」


「………………………………………」


ユークリッドの指摘にアルフレットは“なるほど”と嘆息する。普段から隊それぞれには個別任務が多く、命令内容と結果の報告は義務とされているが任務内容を解決するための過程を報告したことはない。下が何をしているのか分かりにくいからこそ、そうやって伝える事は大事だと分かる。


「次に連絡は今からこういう事をする。だから助けて下さいねという釘を刺す事も出来る。もちろん緊急性が高い事柄に対しては連絡よりも先に対処が必要だとは思いますが何事も先に連絡する事で自分が今何をしたいのかを伝える事が出来ます。だから今から団長に私が内容報告をするのは義務ですね」


「そうは?」


「相談です。実際に私が今から行うの問題に対して現実的に実行が可能かどうかを確認します。先程、私が語ったのは理想論でしかありません。でも現実問題としてはアルフレットか指摘したように子供を第5竜騎士団で買い付ける費用。子供に可能な仕事がどれ程あるか、また子供でも給金を払うからにはどれぐらいの水準が普通なのかなど色々問題が上がります。やりたいと思っていてもそれが果たして可能かはまた別問題なので」


「難しい事言ってるけど、ようは隊を動かすと同時に発生する事務問題も考えるって事か………」


「それが正しいかは分かりませんが、自分の失敗に他人を巻き込むかもしれない時には報・連・相が必須だと思ってるので」


苦笑しながら語るユークリッドにアルフレットは嘆息する。


「なんかそう考えてみると仕事のやり方って全ておんなじなんだな」


「内容が違うからではなく、報告と連絡して起こってる問題に対して意見を貰うのが私的には一番効率のいい仕事手段だと思います。もちろん体面も必要ですし、一概に効率だけが仕事に必要なことだとは思いませんがね」


携帯食を食べ終えたユークリッドはよっこいしょと掛け声をかけて立ち上がる。


「でも全て前例に習えでは何も進歩しない。それだけは分かります。アルフレットはゆっくり食事していて下さい。私は団長に連絡してきます」


「………ああ」


パンパンとローブについた土ぼこりを叩いたユークリッドの姿を眺め、アルフレットは改めて思う。


“こいつは………すごいな………”


左遷されてきてもめげることなく前を向く姿にアルフレットは尊敬の念は抱いたが………。


「大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


一歩を踏み出した途端に自身の来ていたローブを踏んでつまづく姿と先程までの凜とした姿とのギャップが激し過ぎる。

ユークリッドが馬車の影に消えていく姿を見送るとアルフレットは微苦笑した。





「はなしてよ~!」


「うるさい!はいれ」


薄汚れた姿で地下へ続く階段を引きづられながら下りていく少年は自分を掴む男に抵抗を示す。まだ12、3歳に見える少年は恐怖に顔をひきつらせて叫ぶ。


「やだ!お母さんとお父さんのところに帰してよ!」


まだ叫ぶ元気があるのかと呆れる男を前に牢に入れられた少年は冷たい金属を握って訴える。


「帰してよ!」


「うるさいぞ!」


少年がわめきたてる声に眉を寄せた男はガンと牢屋の格子を蹴りつける。


「お前達はこれから売られるんだ。せいぜい新しい主人に可愛がられるようにしろ」


「そんな!!」


男の言葉にぺたんと冷たい床に手をついた少年は絶望的な表情で俯く。その姿に少し良心の呵責を覚えた男性は舌打ちして吐き捨てる。


「満足に飯も食えない状態から救ってもらえるだけ感謝しろ」  


そう吐き捨てると手に持っていた燭台と共に男は去っていく。俯いて肩を震わせる少年に周囲に同じように連れて来られていた子供達が心配げに声をかける。


「ねぇ?大丈夫?」


まだ7つぐらいの少女が俯いて肩を震わせる少年にトコトコと近づいてその横に座る。その姿に気づいた少年は俯いていた顔を上げて少女の頭を撫でる。


「心配してくれてありがとう。お嬢ちゃん」


そう言って顔を上げた少年は冷静に周囲を見回す。


“今のところ子供達が怪我してるとかはなさそうだな”


自分の耳に入った情報を元に子供達の居場所確認を最優先してみたが心配はなさそうだ。彼らは奴隷商に売られるために集められているらしい。立派な証拠物件だ。周囲の子供達が泣いていると思った少年の行動にポカンとしている。


「でも地下牢ってここか………」 


キョトンとする少女の頭をなぜながらキョロキョロと周囲を見回したリザは初めて訪れるノワール領主館の地下牢を観察するのだった。





-リザがノワール領の地下牢を見学していたそんな頃-


「はぁ?」


怪訝そうな声が部屋に響く。何やら先程から魔石を通してユ副団長からの報告を受けている第5竜騎士団団長の眉間に皺が寄る。傍らで上がった団長の声に同じ部屋で仕事をしていた面々が振り返る。


「もう一回言え」


自分に集まる視線を無視し、ユークリッドからの報告と相談にレイは眉間に寄った皺を更に深くする。そんな上司の表情に周囲の面々は顔を見合わせる。


“一体、何があったのだろう?”


団長が皺のよった眉間をそのままに魔石から伝わってくる言葉にどんどんと不可解な顔をするのが分かる。その表情を怪訝に伺いながらも仕事に励んでいた面々は次に上司が発した声に再び振り返る事になる。


「ユークリッド、お前。うちは騎士団であって孤児院じゃないぞ?」


その言葉に振り返った面々は団長の発した一言に驚愕の表情を向けた。

いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。


少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


今日で四勤中、三勤務目。明日頑張ればお休み……です。社会人になれば前回の最後に発した“ユークリッド”の発言がどれだけアウトか分かるようにもなりました(笑)

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