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俺の帰る家はここにある

お詫び


1章の改稿作業を終えてから2章に入ろうと思っておりましたが、リアル事情も含めると投稿が遅くなりますので2章のプロローグ投稿させて頂きます。

これが年内最後の投稿にならないよう頑張ります。改稿作業はゆっくりさせて頂きます。ご了承下さい。

「もう、俺を巻き込まないでくれ!」


自分を見つめる相手から目を背け、アルフレットは叫ぶ。秋を越えて冬も近づいたこの地方の雨は冷たい。自身を打ち付ける雨は冷たくて痛いぐらいだ。でも………それよりも痛むのは心。自分の思いも知らずに巻き込む相手を詰る。


「貴族の後ろ楯のあるお前に何がわかる!平民で次男坊で農家出身の俺はここを追い出された行く場所なんてないんだぞ!」


この国で男が生きていこうと思ったら家を継ぐ長男以外は軍人になるか、または傭兵になるかぐらいしか働く手段はない。下働きとかも伝があって初めて働ける。伝もない一平民が食っていくにはこの国は厳しすぎるのだ。


「頼むから………もう………」


もう放っておいて欲しかった………。ポツリと呟かれた言葉は雨に掻き消されてゆく。冷たい雨の中に立ち尽くしてどれぐらいたっただろう。


「分かった」


ただアルフレットを見つめていた少年はそう応えた。思わず涙で頬を濡らしたまま相手をみやると少年はふむと顎に手を当てて考え込んでいた。アルフレットが俺の思いは伝わっただろうかと不安になった瞬間。


「分かった。要はお前の帰る家を作ってやればいいんだよな。俺が」


「は?」


そういう意味で言った訳でなかったアルフレットは感傷的な気分打ち消す相手に呆然とした視線を向ける。だがそれに気づいた様子もなく腕を組んだ少年ーレイ・アルフォードーはうんうんと頷く。


「確かに帰る場所がなくなるのは困るよな~。そりゃあ、嫌がらせされたら追い詰められるわ。分かってやれなくてごめんな」


「いや………その」


申し訳なさそうに謝る相手にアルフレットは雲行きの危うさを感じて焦る。アルフレットとしてはもうこの行動力抜群の少年にはついていけないという意味合いも込めていたのだが残念な事にそれは伝わらなかったらしい………。それに気づいたアルフレットは慌てて感傷的な気分を振り払う。


「レイ、俺はそういう意味で言ったんじゃなくて………いやそういう意味で言ったんだけど………」


アルフレットは自分の思いが曲解された事実を慌てて否定するが打ち付けるほどの雨音はその言葉を掻き消す。慌てるアルフレットをよそに“ん~”と唸っていた少年は自分の決意を決めてしまう。


「アルフレット………ありがとな………俺、頑張るわ。俺には荷が重いかと思って断るつもりでいたけど引き受ける!」


「は?」


俺を巻き込まないで欲しいというアルフレットの思いも知らず………レイは満面の笑みで宣言する。


「俺が騎士団長になる!」


「えっ!!」


“そんな話聞いてねぇぞ、おい!”と心の中で突っ込むアルフレットを余所にレイはニカッと笑う。


「ここに居るやつらがここを第2の我が家だと思えるような場所に変える。だから………アルフレット………これからも俺を助けて欲しい」


「いや………その」


このままだと巻き込まれ続けると焦ったアルフレットを前に事実を曲解した相手は更に感動的な名場面の作成を続けていく。


「俺にはお前が必要だから………頼む。アルフレット!」


真剣な眼差しで自分を見上げる相手を前にアルフレットは自身の背後に逃げ道がない事に気づく。ここで手を取らない選択肢は用意されていないに等しい。


「………マジかよ………………」


差し出された手を前にアルフレットは振り続ける雨を気にせず、空を見上げた。男だったら絶対に憧れる立身出世物語は他人任せだから憧れるものだという事を今日この日………アルフレットは身をもって知る事になる。


「なんで………俺なんだよ………」


こうして………“男の憧れる立身出世物語の一主人公の座”を射止めたアルフレット・ノワールは違った意味の涙を流しながら差し出された手を握りしめたのだった。




ーそれから二年後の現在ー


「悪夢だ………………………」


“はぁはぁ”と息を荒げて実室で飛び起きた現第一隊隊長ーアルフレット・ノワールーは久しぶりに見た夢に呻く。横から見たら涙が出るほどの名場面でも………その場の本人の気持ちを無視されて出来上がった話もあるのだとあの日、あの時アルフレットは知った。


「本当にトラウマだわ………」


体を起こし、苦笑したアルフレットは悪夢による動悸が落ち着くのをベットの中で待ちながら呟く。今があるのは過去の自分が逃げなかったからだとは分かっていてもそれからの苦労も半端なかったのだ。


「ほんと………俺………よく………生きてたよな………」


独白に近い呟きがまだ夜明け前の部屋に響く。それでも自分は知っている。


ー明けない夜はないのだと………ー


そこに至る道程は果てしなく、何度も挫けそうになるが………それでも歩みを止めなければいつか道は開ける。


ーだから………ー


どんなに苦しくても辛くても………絶対に生きるという歩みだけは止めないで欲しい。


「………寝よ………」


我ながらクサイ事考えてんなとふっと鼻で笑ったアルフレットは再び、ベットに身体を横たえる。まだ起きるには早い。


ーそれでも………ー


「あれから2年か………早かったな………」


どこか諦めた顔で呟くのだけは止められなかった。

いつもお読みいただきましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。

さて、今日から心新たに新章です。

ようやくユークリッドが本領発揮(色んな意味)です。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。



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