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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~アドバンスド・スペリオル~
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91/92

第91話 探し出せ! 新しいバトルスタイル







 ただ闇雲にユニットを並べるだけでは彼女の思う壺。

 今まで通じた私の戦い方が、従来のバトルスタイルが――彼女(シーラ)には通じない。

 となれば。


(今までとは違うバトルスタイルが必要。でも……)


 どうすればいいのだろう。

 いきなりそんなことを求められてもすぐに答えを出すことなんてできない。

 手札に目を落としながら、デッキのカードを一枚ずつ思い返す。

 その間にも、相手のターンは進んでいく。


「私は2マナを使ってスペル『シャインドロー』を発動」


 シーラ

 マナ3→1

 手札3→2


「効果で私のライフを2回復してカードを1枚ドロー」


 シーラ

 ライフ16→18

 手札2→3


「そしてライフが回復したことで『光の聖女アリシア』の効果を発動。この子のライフとアタックをプラスする」


 『光の聖女アリシア』

 アタック2/ライフ4→アタック3/ライフ5


「くっ……」


 光に輝く白き少女。

 その姿を見て思わず呻く。


(チマチマと削りに行ってもライフが減らない! だからってユニットを出したら封印されてバトルゾーンが使えなくなる……私はどうすれば……)


 アルスやクロハルであれば。

 攻撃力の高いユニットやダメージを与える効果で一気に突破することができるのだと思う。

 私のデッキでもやろうと思えばできないことはない。

 ただその場合、似たようなことをするためにはユニットを並べる必要がある。


 だけど。


 ユニットは出たばかりだとすぐに攻撃ができない。

 それを可能とする固有能力を持ったカードもない。

 私が攻撃をするためには一ターンの猶予がなくてはいけない。


 シーラは、その猶予をくれるだろうか?


(……ありえないわね)


 彼女は多分、並んだユニットを見たら嬉しそうに片っ端から封印していくに違いない。

 もちろん、そんなことをされたら私の負けで。


「アタックフェイズ。まずは『閃光の騎士シャイナ』で相手に攻撃」


 白い鎧を着た少女の一撃が私の体を切りつける。


「うっ!」


 『閃光の騎士シャイナ』

 アタック2


 メリル

 20→18


「続けて『光の聖女アリシア』で相手に攻撃」


 両手を合わせ祈りを捧げる聖女。

 すると、急に空から落ちてきた光が私の体に降り掛かった。


「っ! 眩しっ!?」


 『光の聖女アリシア』

 アタック3


 メリル

 18→15


「私はこれでターンエンドかな」

「くっ……私のターン、ドロー!」


 メリル

 マナ0→7

 手札7→8


(ユニットは出してこなかったわね……)


 相手のフィールドに立つ二体のユニット。

 それを見ながら思案する。


(流石に『神秘の泉』でドローされるのを嫌ったから、かしら)


 理由はわからないけど私にとっては好都合。

 おかげで相手の場にはガードできるユニットは『閃光の騎士シャイナ』だけ。


 お互いのターンが進み、少しずつ使えるマナの数も増えている。

 そうなると。

 必然的に手札の多い方が有利となる。

 ガードユニットが一体だけならいくらでも突破する手段はある。

 ただ、


(……あのセットカードが気になるわね)


 並び立つユニットの、その後ろ側。

 裏向きで置かれた三枚のカードが嫌に存在感を漂わせている。

 それにシーラの元に残された一つのマナ。

 その存在も、私の動きを鈍らせる原因になっていた。


(間違いなくあれはカウンタースペル。でも、どんなカードを使ってくるのかわからない)


 頭にフラッシュバックしたのは先のターンの出来事。

 確か。

 その時に使ってきたのはユニットの召喚に反応するカードだった。

 けど、今は使ってこない。


(なら気を付けるべきは攻撃する時、ね)


 まだ彼女に対抗できるような戦い方は見つかってない。

 だからと言って。

 このまま思い通りに戦わせるわけにもいかない。


「私は2マナを使ってスペル『バックドロー』を発動」


 メリル

 マナ7→5

 手札8→7


「手札を1枚デッキの下に戻し、カードを2枚ドロー」


 メリル

 手札7→6→8


(……イマイチね)


 ドローしたカードはどちらもユニット。

 できるだけユニットを出したくない私としてはあまり良い引きとは言えない。

 こうなったら仕方がない。


「私は2マナを使って『水の妖精マルル』を召喚」


 メリル

 マナ5→3

 手札8→7


 『水の妖精マルル』

 アタック1/ライフ1


「召喚した『水の妖精マルル』の効果を発動。カードを1枚ドロー」


 メリル

 手札7→8


「私のバトルゾーンにコスト3以下のユニットが増えたことで『水斧の戦士』のアタックをプラス」


 『水斧の戦士』

 アタック2→3


 『セーラーアンカー』と『水斧の戦士』と『水の妖精マルル』。

 これで私のバトルゾーンにコスト3以下のユニットが三体並んだ。


「私のバトルゾーンにコスト3以下のユニットが3体。よって、手札から『絆の力』をノーコストで発動」


 メリル

 手札8→7


「そのカードは……」

「まずはカードを1枚ドロー。その後に自分のバトルゾーンにいるユニットの数だけ私のユニットのアタックをこのターンが終わるまでプラスするわ」


 メリル

 手札7→8


 『セーラーアンカー』

 アタック2→アタック5


 『水斧の戦士』

 アタック3→6


 『水の妖精マルル』

 アタック1→4


 心なしか、体が大きくなったように思えるユニットたちと水の斧を自分の体よりも大きくさせた大男。

 その姿を見たシーラが小さな声で「わあ」とこぼしたのを私は聞き逃さなかった。


(一気に攻める!)

「アタックフェイズ。私は『セーラーアンカー』で『光の聖女アリシア』に攻撃!」

「それは許容出来ない、かな。『閃光の騎士シャイナ』でガード」


 防がれた。

 けど、『閃光の騎士シャイナ』はすでにライフを減らしている。

 プラスマイナスゼロだと自分の心に言い聞かせる。

 しかし、


「バトルする時に『閃光の騎士シャイナ』の効果を発動。私のライフを3回復する」

「回復……!」


 まさかそんな効果を持っていたなんて。


(『流制の水龍フェイ・ターク』さえいてくれたら)


 その効果を無効にして破壊できたのに。


 なんて。

 そんなことを言っても意味がないのはわかってる。

 私の前でシーラの体は光に包まれていた。


 シーラ

 ライフ18→20


「私のライフが回復したことで『光の聖女アリシア』の効果を発動。アタックとライフをプラス」


 『光の聖女アリシア』

 アタック3/ライフ5→アタック4/ライフ6


「っ、でもバトルは続行よ! 行きなさい! 『セーラーアンカー』」

「仕方ないね。行っておいでシャイナ」


 お互いにユニットを送り合う。

 錨を振り上げ、一足に白いローブを着た少女に飛び掛かる『セーラーアンカー』。

 だが、その攻撃は『閃光の騎士シャイナ』が間に割って入ったことで届くことはなかった。


 『セーラーアンカー』

 アタック5/ライフ2→アタック5/ライフ0


 『閃光の騎士シャイナ』

 アタック2/ライフ5→アタック2/ライフ0


「この時、破壊された『セーラーアンカー』の効果を発動。カードを1枚ドロー」


 メリル

 手札8→9


 私のバトルゾーンからユニットが減ったことで『水斧の戦士』のアタックが減る。

 それでも。


 『水斧の戦士』

 アタック6→5


「今度こそ! 『水斧の戦士』で『光の聖女アリシア』に攻撃!」


 次に私が動かしたのは水の斧を手にした大男。

 自分の体よりも大きな得物を振り上げて、『光の聖女アリシア』へと飛び掛かる。

 迎え撃つためか。

 『光の聖女アリシア』が目を閉じて祈りを捧げ始める。

 そこに『水斧の戦士』の一撃が振り下ろされる。




 ――その時だった。




「このスペルは相手が光属性のユニットに攻撃をする時に発動できる」

「なに……!?」


「私は1マナを使ってカウンタースペル――『フラッシュバリア』を発動」


 シーラ

 マナ1→0

 スペルゾーン3→2


「その攻撃を無効にさせてもらうよ」

「っ! 攻撃無効!?」


 驚く私の前に突如現れた膜のように薄い光。

 しかしそれは、大男の力強い一撃を簡単に止めてしまう。

 『光の聖女アリシア』は祈りを捧げる姿勢のままホッと胸を撫で下ろしていた。


「これで君の攻撃できるユニットはいなくなったね」

「くっ……」


 私の場には、もう攻撃できるユニットがいない。

 癪だけどシーラの言う通りだ。


「……ターンエンドよ」


 私がターン終了の宣言をしたことで、『絆の力』による効果が消える。


 『水斧の戦士』

 アタック5→アタック2


 『水の妖精マルル』

 アタック4→1


「じゃあ私のターン、ドローっと」


 シーラ

 マナ0→7

 手札3→4


「ちょっと足りないか……そういえばメリル。君は知ってるかな?」

「……何のことよ」

「それはね」


 そう言ったシーラは何か意味ありげな微笑みを浮かべて、







「――カウンタースペルって自分のターンでも使えるんだよ」

「はっ?」







 彼女は一体何を言って……。


「というわけで2マナを使ってカウンタースペル『復活の光明』を発動」

「えっ?」


 シーラ

 マナ7→5

 スペルゾーン2→1


「『復活の光明』の効果で私は自分のドロップゾーンからコスト4以下の光属性ユニット――『白の召喚士プリモ』をノーコスト召喚」

「なんですって!?」


 シーラのフィールドにぱあっと明るい光が生まれる。

 すると、そこからさっきまで見た白装束の巫女が現れた。


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ3


「でもその瞬間、『神秘の泉』の効果が発動するわ」

「必要経費かな」

「なら遠慮なくドローさせてもらうわね」


 メリル

 手札9→10


「さてこれで揃ったね」

「……さっきから何をブツブツ言ってるのよ」

「ん? あぁ、これのこと」


 そう言ってシーラが一枚のカードを手にして私に向ける。


「ついでに3マナを使ってスペル『魔法の引換券』を発動」


 シーラ

 マナ5→2

 手札4→3


「魔法の、引換券?」

「効果でカードを1枚ドロー」


 シーラ

 手札3→4


(ここに来てカードを1枚ドローするスペル?)


 3マナに対してドローする枚数がたったの1枚。

 普通は3マナのカードであれば2枚ドローが基本となる。

 あまりにも割に合わない効果にハテナが浮かぶ。

 だけど、そうなると気になってくるのは「足りない」だの「揃った」だのとさっきの言葉。


(一体どんな効果が)


 あるのだろうか。

 疑問に思う私の前で、シーラの発動したスペルが放つ光を強くする。







「そして、『魔法の引換券』の更なる効果を発動。自分のドロップゾーンからスペルを5枚デッキの下に戻すことでデッキから追加でカードを2枚ドローできる」


「はあっ!?」







 ポカンと開く私の口。

 けれど、仮想体システムは止まってはくれない。

 無情にも処理が進められてしまう。


「ドロップゾーンから『緊急封印』『封印シール』『シャインドロー』『フラッシュバリア』『復活の光明』の5枚をデッキの下に戻してカードを2枚ドロー」


 シーラ

 手札4→6


 相手の手札が一気に増える。

 そこまで行って。

 ようやく私の頭が再起動した。


「何よそのインチキ効果!!」

「効果だからね、仕方ないね。というわけでカードを2枚セット」


 シーラ

 手札6→4

 スペルゾーン1→3


「そしてアタックフェイズ。『光の聖女アリシア』で相手に攻撃」


 相変わらず眩しい。

 白い聖女の祈りによって再び私に光が降り掛かる。

 その光はさっきよりも強く輝いて、




「私は1マナを使って手札からアサルトスペル『ミナモの水面鏡』を発動!」

「なに!?」




 ――その光が降り注ぐよりも前に一枚のカードをフィールドに投げ込む。


 メリル

 マナ3→2

 手札10→9




「その攻撃を無効にしてカードを1枚ドローする!」


 私の目の前に現れた水色の丸い鏡。

 その鏡は降り注ぐ全ての光をあちらこちらに散らすと、そのまま静かに消えていった。


 メリル

 手札9→10


「止められちゃったか」

「残念だったわね」

「少しね。でもアサルトスペルだっけ? そんなカードまで入ってるとは思ってなかったよ」

「……試しに入れてただけよ」

「そうなんだ」


 新しいカードであり、攻撃を止めることができるカードでもある。

 悪くない効果だったからお守り代わりに入れてたのだけど早速役に立つとは思ってなかった。

 心の冷や汗を一拭い。


「ターンエンドするしかないかな」

「私のターンね」


 そう呟いて。

 私はデッキに向けて伸ばそうとした手を止める。


(まだ見つからない……)


 幸いにも相手の動きは穏やか。

 そのおかげで今はなんとかなっている。


 しかし。


 相手の本来の戦い方は盤面を埋める戦い方――ロック戦法。

 そんな相手に対抗できるようなバトルスタイルがここまで来ても見つからない。

 私の心はまた少し、焦りを見せ始めていた。


「私のターン、ドロー!」


 メリル

 マナ3→8

 手札10→11


「私は3マナを使って『水撃の槍兵』を召喚」


 メリル

 マナ8→5

 手札11→10


 『水撃の槍兵』

 コスト3/水属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動する。自分のバトルゾーンにいる水属性ユニット1体を選び、そのターンのエンド時までアタックを+2する。


「召喚した『水撃の槍兵』の効果を発動。私のバトルゾーンにいる水属性ユニット1体を選んでアタックを+2できる。私が選ぶのは『水の妖精マルル』」


 『水の妖精マルル』

 アタック1→アタック3


「さらにコスト3以下のユニットが増えたことで『水斧の戦士』のアタックも増えるわ」


 『水斧の戦士』

 アタック2→アタック3


「そして! 私は『水撃の槍兵』をもう一体召喚!」


 メリル

 マナ5→2

 手札10→9


 『水撃の槍兵』

 アタック2/ライフ2


「召喚した『水撃の槍兵』の効果を発動して、選ぶのは『水斧の戦士』」


 『水斧の戦士』

 アタック3→5


「コスト3以下のユニットが増えたことで『水斧の戦士』のアタックもさらにプラス」


 『水斧の戦士』

 アタック5→アタック6


「わ、一気にすごくなったね」

「まだよ! 私は最後に2マナを使ってスペル『ストレートアタック』を発動」


 メリル

 マナ2→0

 手札9→8


「『ストレートアタック』の効果でこのターン、私のユニットは『直行』の効果を得るわ」

「『直行』? それって確か」

「バトルゾーンに出たばかりでも相手プレイヤーに攻撃できる能力のことよ!」

「へえ? ということはそういうことかな?」

「そういうことよ。アタックフェイズ! 私は『水の妖精マルル』で『白の召喚士プリモ』を攻撃!」


 『水の妖精マルル』

 アタック3/ライフ1→アタック3/ライフ0


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ3→アタック1/ライフ0


「続けて『水斧の戦士』で『光の聖女アリシア』を攻撃!」

「あ、そう来るんだ。……仕方ないか。受けよう」


 一瞬、何かを考え込んだシーラ。

 だけど。

 考える様子を見せただけで、何もしてくることはなかった。


 『水斧の戦士』

 アタック6/ライフ3→アタック6/ライフ0


 『光の聖女アリシア』

 アタック4/ライフ6→アタック4/ライフ0


(よしっ!)


 やっと攻撃が通った。

 大男の水の斧と白い聖女の光。

 二つが同時にぶつかったことでそれぞれのユニットの姿がさらさらと光の粉になって消えた。

 あとは、


「『ストレートアタック』の効果で召喚したばかりのユニットでも相手に攻撃ができる! 『水撃の槍兵』で相手に攻撃!」

「なら2マナでカウンタースペル――『シールカウンター』を発動」

「またカウンタースペル……!」


 シーラ

 マナ2→0

 スペルゾーン3→2


「私のバトルゾーンが空っぽの時にしか使えないけど攻撃してきたユニットを封印できる。そういうわけだからその『水撃の槍兵』は封印させてもらうよ」

「ぐっ!」


 オープンされたセットカード。

 そこから黒いテープが伸び、槍を持った青色の兵士をグルグル巻きにしてしまう。

 こうして。

 私のバトルゾーンには封印されたユニットが二体目に増えた。


「でもまだ終わりじゃない! 最後の『水撃の槍兵』で相手に攻撃!」

「受けるしかないね」


 『水撃の槍兵』

 アタック2


 シーラ

 20→18


「…………」


 まだ諦めてはいない。

 けれども、届かない。

 カウンタースペルの存在と大量のライフ回復。

 そのせいで、いくら攻撃をしても相手の守りを崩すことができない。

 できるのはせいぜいユニットの処理だけ。


 ここに来て、ここまで来たことで。


 私はようやく、


(そっか、私のデッキに足りなかったのは――攻撃力)


 自分のデッキに足りなかったものに気が付いた。




 相手が見せる一瞬の隙。


 その隙を逃さず捉えるための――攻撃力。


 私に必要なのは、それだ。




「これでターンエンドよ」

「私のターンだね。ドロー」


 シーラ

 マナ0→8

 手札4→5


 私のデッキに足りなかったものが、やっとわかった。


(あとは第二のバトルスタイルを見つけるだけ……!)


 数に頼らない力。

 それをこのバトルの中で見つけなくてはいけない。


(まだ終わったわけじゃない。落ち着いて、ちゃんと探せば)


 見つかるはず。

 そう思っていた矢先のことだった。


「さて、そろそろお披露目かな」

「お披露目……?」


 不意に飛び出したシーラの意味深い言葉。

 その真意に首を傾げていると、シーラが一枚のカードをフィールドに送り出した。


「私は8マナを使ってユニット――『光聖(こうせい)龍オロライト』を召喚」


 眩い光の柱が一直線にフィールドを貫く。


 やがて開くは天の空。


 そこから舞い降りるように現れたのは、真っ白な体を輝かせた一匹の大きく長い龍だった。


 シーラ

 マナ8→0

 手札5→4


 『光聖龍オロライト』

 コスト8/光属性/アタック3/ライフ12

 【効果】

 『ガード』


「光、聖龍オロライト……」


 どこまでも白い体と金色に光る長い髭。

 その姿に見惚れていた私は湧きあがる水に気付いてハッと我に返った。


「『神秘の泉』の効果でカードを1枚ドロー」


 メリル

 手札8→9


 改めて私の前に立つ強敵と向き合う。

 強敵(シーラ)はその細い唇をゆっくりと開いた。


「『光聖龍オロライト』の効果を発動。私のライフを4回復する」


 シーラ

 ライフ18→20


「回復……」


 なんとか削ったライフが、また元通り。

 でもそれは仕方がない。

 わかりきってた以上、驚きはしない。


(大丈夫。召喚したばかりのユニットは攻撃できない)


 手札も、マナも。

 それにバトルゾーンも。

 まだ私には余裕がある。

 たとえどんな大型ユニットを出されたとしても。


(大丈夫)


 次の私のターンでしっかりと対処すればいい。


「私はこれでターンエンド」

「なら、私のターン。ドロー」


 メリル

 マナ0→9

 手札9→10


(大丈夫)


 カードを一枚ドローして、考える。


(落ち着けば、大丈夫)


 大きなユニットを出されたことで揺れた心を落ち着かせる。

 私にはまだ猶予がある。

 そう思い、カードを使おうとして。


「私は」

「あ、そうだ」

「手札から、ってなによ」


 急に割り込んできたシーラをムスッと睨みつける。


「いや、先に言っておこうかなって」

「一体何を言って」




「この子――『光聖龍オロライト』の真の効果なんだけどさ」




「っ!?」


 突然放たれたその言葉に、コクンと小さく喉が鳴る。

 じわり、と流れる汗をそのままに。

 相手の言葉を待つ。


(大丈夫。私にはまだ猶予が)


 ある。

 深く息を吸って吐き出す。

 そんな私に向かって。


 シーラは口に細い線を描いて微笑むと、







「次の私のスタートフェイズ。私のライフが『20』であればこのバトルは私の勝ちで終わり――それが『光聖龍オロライト』の効果だよ」







「………………えっ?」




 からり、と私の喉が干上がる。




「だから」




 次がある。


 猶予がある。


 そう思っていた私だけど。




「『このターン』で頑張ってね」

「っ!!」




 私に猶予なんてものは一つも残されていなかった――。






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