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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~アドバンスド・スペリオル~
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第90話 炸裂! シーラの封印戦法





「私のターン、ドロー」


 シーラ

 マナ2→5

 手札3→4


 シーラの手元にデッキの上からカードが飛んでいく。

 展開された手札。

 そこに目を落とした彼女は私のことを見てからフッと微笑んだ。


「いいね」

「……何がよ」

「何でもないよ」

「…………」


 また、()()()の冗談か。

 気にしてたらいつまでたっても埒が明かない。

 とりあえず無視することにした。


「さーて、どうしようかな」

(どう来るかしら)


 おそらく、彼女が警戒しているのは――私のエースである『流制の水龍フェイ・ターク』。


 この『流制の水龍フェイ・ターク』はバトルゾーン限定とはいえユニットの効果を無効にした上で破壊できる効果を持つ。

 それでいて。

 シーラの出した『光の聖女アリシア』は効果を発動するタイプのユニット。

 仮にこのまま、彼女が何もせずに『光の聖女アリシア』の効果を発動させれば私は『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を使って破壊することができる。

 だが、


(彼女がそのまま何もしない、なんてことはありえないでしょうけどね)


 それはきっとシーラだってわかってるはず。

 だから悩んでるわけで。


「うーん、決めた。君がそう来るなら私もお返しが必要だとは思わない?」

「あなたのお返しなんていらないんだけど」

「そうつれないこと言わないでよ」


 パッチリとウィンクしてきたけど特に何も思わない。

 むしろ反応に困るからやめてほしいくらい。

 もっとも。

 そんなことを本人に言ったら何をしてくるのかわかったものじゃないから言わないけれど。


「『白の召喚士プリモ』の効果とこのカード自身の効果によって召喚コストを-4。私は手札から2マナを使ってこの子を召喚する」


 そう言いながら、一枚のカードがフィールドに置かれる。




「さあ、おいで――『閃光の騎士シャイナ』」




 彼女の言葉と共に放たれる光。


 純白の鎧と一振りのレイピア。

 シーラと同じ金色の髪を振るって。


 光の中から現れたのは、可憐で、凛々しい一人の少女だった。




 シーラ

 マナ5→3

 手札4→3


 『閃光の騎士シャイナ』

 コスト6/光属性/アタック2/ライフ7

 【効果】

 『ガード』『先制』

 ①このユニットは自分のライフが10以上であれば召喚コストを-3して召喚できる。

 ②このユニットがバトルする時に発動できる。自分のライフを3回復する。




「そのユニットが……」

「そっ。この子が私のエースだよ」



 シーラがやったことは至極単純。




 ――エースユニットにエースユニットをぶつける。




 なるほど。

 これが彼女なりの()()()というわけだ。


(……面白い、わね)


 そう感じてしまうのは癪だけど。

 でも、面白いと思ってしまったら面白いのだから仕方がない。

 自分でも口元が緩んでいるのがわかる。


「相手のバトルゾーンにユニットが出たことで『神秘の泉』の効果を発動。カードを1枚ドロー」


 メリル

 手札6→7


「……本当に厄介だねそのカード」

「……使っといてアレだけど自分でもそう思うわ」


 お互いに顔を見合わせてみれば、シーラは少し困ったように眉間にシワを寄せていた。

 多分私も似たような顔をしてると思う。


(強いから入れとけ、なんて言ってたけどこれほどだとは思ってなかったわ)


 この『神秘の泉』というカードもオススメしてくれたのはクロハルだ。

 すごく渋そうな顔をしながらオススメしてくれたのが気になって入れてみたものの。

 その効果は私の想像以上に絶大だった。


 このスペルが私のフィールドにあるかぎり、私の手札はなくならない。

 なにせ相手がユニットを出すだけで勝手に増えていくのだから――。


「とりあえずカードを1枚セットかな」


 シーラ

 手札3→2

 スペルゾーン2→3


「そして、アタックフェイズ。まずは『白の騎士ガリア』で『流制の水龍フェイ・ターク』に攻撃」

「受けるわ」


 突撃槍を構え飛び込んでくる白色の騎士。

 その一撃を身に受けながらも水色の龍は口から大水を飛ばして迎え撃つ。


 『白の騎士ガリア』

 アタック1/ライフ4→アタック1/ライフ1


 『流制の水龍フェイ・ターク』

 アタック3/ライフ3→アタック3/ライフ2


(やっぱり狙ってきたわね)

「続けて『閃光の騎士シャイナ』で『流制の水龍フェイ・ターク』に攻撃」

「させないわ! その攻撃は『アクアブレーダー』でガード!」


 金色の髪を翻し、レイピアを振りかざす『閃光の騎士シャイナ』。

 だが。

 水龍に向かって一直線に進む白き少女の前に、飛び出した『アクアブレーダー』がすれ違いざまに剣を振るった。


 『閃光の騎士シャイナ』

 アタック2/ライフ7→アタック2/ライフ5


 『アクアブレーダー』

 アタック2/ライフ2→アタック2/ライフ0


「ありゃりゃ。止められちゃったか」

「悪いけど流石にやらせないわよ」

「それは残念かな」


 どうだか。

 肩をすくめるその姿からは残念そうな様子は見られない。


「最後に『白の召喚士プリモ』で『青の召喚士ルチル』に攻撃」

「くっ」


 ちゃっかりしてる。

 白装束の巫女と青装束の巫女が互いに札を投げ付ける。

 『白の召喚士プリモ』が投げた札は『青の召喚士ルチル』のおでこにペタリと当たると、そのままはらりと落ちていった。


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ2→アタック1/ライフ1


 『青の召喚士ルチル』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


「やられちゃったわね……」

「これで私のアタックフェイズは終わり。で、エンドフェイズ。『白の騎士ガリア』の効果を発動。……なんだけど」

「ならば! その効果に合わせて『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動するわ」

「そうなるよね」

「当たり前じゃない」


 『流制の水龍フェイ・ターク』がその身を丸め、突如として浮き上がった水に包まれる。

 それと同時に、光に包まれつつあった白騎士が突如として這い出た水に包まれた。

 弾ける二つの水球。

 散らばった水がフィールドのあちこちへと飛んでいく。


 しかし。

 その中にいたはずのユニットは、すでに姿も形もなく消え去っていた。


「ま、仕方ないかな。私はこれでターンエンド」

「私のターンね。ドロー!」


 メリル

 マナ1→6

 手札7→8


 『流制の水龍フェイ・ターク』は効果を発動するとデッキの上に返ってくる。

 なので私がドローしたカードは『流制の水龍フェイ・ターク』。

 このカードを使い始めるとほぼデッキの上が固定化されてしまうという欠点もある。

 けれども……今の私には十分に選択肢がある。


「私は3マナを使って手札から『水斧の戦士』を召喚」


 メリル

 マナ6→3

 手札8→7


 『水斧の戦士』

 コスト3/水属性/アタック1/ライフ3

 【効果】

 ①このユニットは自分のバトルゾーンにいる他のコスト3以下のユニット1体につき、アタックを+1する。


「『水斧の戦士』は私のバトルゾーンにいる他のコスト3以下のユニットの数だけパワーアップできる」

「へえ、となると」

「『水斧の戦士』以外のコスト3以下のユニットは2体。よってアタックを+2するわ」


 私のフィールドに現れた青い服を着た大男。

 その大男は握っていた水の斧を振り上げると、ググンとその大きさを変える。


 『水斧の戦士』

 アタック1→アタック3


「わお。アタック3にライフも3……ちょっと大きいかな」

「まだよ。私は自身の効果によって召喚コストを減らした『流制の水龍フェイ・ターク』を3マナで召喚! 戦場に舞い戻りなさい! 『流制の水龍フェイ・ターク』!」


 メリル

 マナ3→0

 手札7→6


 『流制の水龍フェイ・ターク』

 アタック3/ライフ3


「召喚した『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動してカードを1枚ドロー」


 メリル

 手札6→7


「そしてアタックフェイズ。私は『マリリン・マリネル』で『白の召喚士プリモ』に攻撃!」

「……受けようか。行っておいでプリモ」


 私がまず狙ったのは手負いのサポートユニット。

 あのユニットがいなくなればシーラの動きもある程度抑えられる。

 青き美女と白き巫女。

 お互いの攻撃がすれ違うようにして交差する。


 『マリリン・マリネル』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


 『マリリン・マリネル』がバトルゾーンから姿を消す。

 それによって『水斧の戦士』の持っていた水の斧が少しだけ小さくなる。


 『水斧の戦士』

 アタック3→2


「続けて『セーラーアンカー』で相手に攻撃!」

「それも受けようかな」


 シーラのフィールドにはガードユニットがいる。

 なのにガードして来ない。

 そのことを不思議に思いながらも『セーラーアンカー』の投げた錨がシーラに当たった。


 『セーラーアンカー』

 アタック2


 シーラ

 ライフ18→16


「いいの? このままじゃあなたのライフなくなるわよ」

「私のデッキは回復が得意だからね。これくらいはかすり傷にもなってくれないんだ」

「言ってくれるじゃない……その余裕、いつまで持つのかしらね? 私はこれでターンエンドよ」

「怖いねぇ。じゃあ私のターン、と。ドロー」


 シーラ

 マナ3→6

 手札2→3


 デッキからドローしたカードが手札に加わる。

 そのカードを見て――シーラの顔に笑みが浮かんだ。


「良かった。これでなんとかなりそうかな」

「なんですって……?」


 この状況で引いた、彼女が笑う程のカード。

 それは一体どんなカードなんだろう

 その答え合わせは、シーラがやってくれた。


「私は3マナを使ってスペル『封印シール』を発動」


 シーラ

 マナ6→3

 手札3→2


「『封印シール』は相手のライフ3以下のユニット1体を選んで裏向きにできる効果を持ったスペルカード」

「ライフ3以下? ……まさか!」


 それを聞いた瞬間、私の胸にざわりと嫌な予感が揺らめいた。

 私のバトルゾーンにいるユニットは全部がライフ3以下。

 もし、彼女がその中から選ぶとしたら……。


 シーラのカードが真っ白な光を放ち、その中からいくつもの黒いテープが飛び出す。

 その先にいたのは、




「私が選ぶのは当然――『流制の水龍フェイ・ターク』」




 白雲の翼を靡かせる透き通った青き龍。




「フェイ・ターク!」


 絡み付く黒いテープに水色の龍が抵抗を示す。

 だが、その抵抗も虚しく。

 何重にも絡み付いたテープが最後に残したのは一つの黒い球体だった。


「くっ、私のエースが!」

「真っ向から突破するにはちょっと厳しかったから封印させてもらったよ」

「封印……」


 その言葉を聞いて。

 目の前で実際に起きたことを見て。

 私はすぐに彼女の戦い方を『理解』した。


「私のユニットを封じることでフィールドを支配する。それがあなたのバトルスタイルってわけね」

「おや、バレちゃったか。流石だね」

「……たまたまよ」


 自分で口にした言葉とは裏腹に。

 私は内心でひどく焦っていた。


(マズイわね)


 私のバトルスタイルは豊富なサポートカードを使い、ユニットを大量に並べて攻める、というもの。

 それに対して。

 おそらくだけどシーラのバトルスタイルは相手のユニットを封印してバトルゾーンを埋め、抵抗できなくなった相手を一気に落とす、というもの。


 相性が悪い、どころじゃない。

 まさに最悪。


(ユニットを並べたら……バトルゾーンを埋められる……!)


 ひたり、と。

 私の背中に冷たい何かが流れ落ちていった。






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