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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~アドバンスド・スペリオル~
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第89話 新環境のカード応酬






「私のターン、ドローかな」


 シーラ

 マナ0→3

 手札3→4


「私は『白の召喚士プリモ』の効果を使って2マナで『白の騎士ガリア』を召喚」


 シーラ

 マナ3→1

 手札4→3


 『白の騎士ガリア』

 コスト3/光属性/アタック1/ライフ4

 【効果】

 『ガード』

 ①自分のターンのエンド時に発動する。このユニットのライフを2回復する。


 相手のフィールドに現れるは白い鎧を着た一人の騎士。

 手にした大きな盾と突撃槍がどこか輝いてるようにも見える。


 そんな騎士の足元に――ポチャリと泉の水が触れた。







「その瞬間! 『神秘の泉』の効果を発動!」

「っ!」







 やっと。

 そのいつも余裕があるようなシーラの表情に綻びが見えた。

 少し顔をしかめさせた程度だけど、これが普段の冗談に対する私からの意趣返し。

 泉が小さく揺らめき、その中から一枚のカードが現れる。

 それを手札に加えた私は不敵に笑ってみせた。


 メリル

 手札7→8


「このスペルがあるかぎり、あなたがユニットを出すだけで私はカードを1枚ドローできるわ」

「ユニットの召喚に反応するドローカード……確かに『厄介』かな」

「だから言ったでしょ? 面白いだけじゃ済まないって」

「なるほど。その泉があるかぎり、手札という名の水は枯れることがない――そういうことだね」

「その通りよ」

「これは大変そうかな」


 そう言って。

 シーラはクツクツと楽しそうに笑みをこぼした。


「ならちょっとでも有利の差を抑えとかないとね。というわけでアタックフェイズ。私は『白の召喚士プリモ』で『泉の妖精フィーネ』に攻撃」

「くっ」


 攻撃宣言が出たことで懐から一枚の札を取り出して投げ付ける『白の召喚士プリモ』。

 『泉の妖精フィーネ』はそれを迎え撃たんとその手から水の球体を撃ち出した。


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ3→アタック1/ライフ2


 『泉の妖精フィーネ』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


「そして、エンドフェイズに『白の騎士ガリア』の効果を発動。自身のライフを回復する」


 『白の騎士ガリア』

 ライフ4→4


「なによそれ。意味ないじゃない」

「効果だからね、仕方ないね。これで私はターンエンド」

「全く……私のターン、ドロー」


 メリル

 マナ0→4

 手札8→9


(どうしようかしら)


 ドローによって増えた潤沢な手札。

 その多さに軽い眩暈を覚えながらも一枚一枚に目を通していく。


「……よし。私は2マナを使って手札から『青の召喚士ルチル』を召喚するわ」


 メリル

 マナ4→2

 手札9→8


 『青の召喚士ルチル』

 コスト2/水属性/アタック1/ライフ3

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンにいるかぎり、自分は1ターンに1度だけ水属性ユニット1体の召喚コストを-1できる。


 私のフィールドに現れるは青色の装束に身を包んだ青髪の巫女。

 このユニットがいれば私はユニットの召喚コストを減らすことができる。


 ――今が攻め時。


 そう判断した私は一枚のカードに指を掛けて、







「そのユニットの召喚に合わせて、私は1マナでカウンタースペル『緊急封印』を発動」

「なっ!?」


 ピタリとその指を止めた。


「この『緊急封印』は相手がユニットを出した時にそのユニットをターンのエンド時まで封印できるスペル。そういうわけだからその『青の召喚士ルチル』はこのターンが終わるまで封印させてもらうよ」

「しまっ」


 しまった、と言いかけて。

 その時になって私はシーラが伏せたカードへの警戒心が薄れていたことに気付いた。


(完全に私のミスだわ……!)


 『緊急封印』のカードから飛び出す幾重もの黒塗りのテープ。

 抵抗する様子は見せたけれど、私の召喚した『青の召喚士ルチル』はそのまま黒いテープに包まれてしまう。

 それを見た私はグッと歯噛みした。


 シーラ

 マナ1→0

 スペルゾーン3→2


「やってくれたわね……」

「これがカウンタースペル、ね。良いカードじゃないか」

「やられた方からしたらたまったもんじゃないわ」

「相手が嫌がることをするのはバトルの基本かな」

「知ってるわよ!」


 最初に考えていたプランは狂ってしまった。

 けど狂ったなら修正すれば問題はない。

 気を取り直して私はカードに指を添える。


「私は2マナを使って『セーラーアンカー』を召喚」


 メリル

 マナ2→0

 手札8→7


 『セーラーアンカー』

 コスト2/水属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①バトルゾーンにいるこのユニットが破壊された時に発動する。カードを1枚ドローする。


 私が召喚したのは大きな錨を肩に担いだセーラー服の少女。

 どうやって自分よりも大きい錨を振り回すのか気になるけど今はそれどころではない。


「召喚したばかりのユニットは攻撃できない……私はこれでターンエンドよ」

「なら君のターンが終わる時に『緊急封印』の効果で封印したユニットを解放かな」

「そうね。帰ってきなさい『青の召喚士ルチル』」


 そう言い終わるよりも早く。

 ボロボロと黒いテープが剥がれ落ち、青装束の巫女がその中から姿を見せる。

 出足を挫かれる結果にはなったものの悪い展開ではない。

 ターンを渡したことで、相手にターンが回る。


「じゃ、私のターン。ドロー」


 シーラ

 マナ0→4

 手札3→4


「おや、これは……」

「……?」


 デッキからドローしたカード。

 それを見たシーラが不意に考える素振りを見せた。


(何か強いカードでも引いたのかしら?)


 光属性の特徴はアタックが低い代わりにライフが多く、回復手段に長けていること。

 だから仮に強いカードを引かれたとしてもそこまでアタックの強いカードはないはず。

 そう考えを巡らせる私の前でシーラが動きを見せる。


「私は『白の召喚士プリモ』の効果を使って2マナで『光の聖女アリシア』を召喚」


 シーラ

 マナ4→2

 手札4→3


 『光の聖女アリシア』

 コスト3/光属性/アタック1/ライフ2

 『ガード』


 戦場に現れた白いローブのようなものに身を包んだ敬虔そうな少女。

 その姿を見て私は首を傾げる。


(知らないユニットだわ……)

「あなたのフィールドにユニットが出たことで『神秘の泉』の効果でカードを1枚ドロー」


 メリル

 手札7→8


 おそらく、あのカードも新パックから出たカードの一枚なのだろう。

 そして。

 バトルゾーンに出た以上は何かしらの効果を持っているはず。

 そんな私の予想は、果たして的中した。


「召喚した『光の聖女アリシア』の効果を発動。私のバトルゾーンにいるユニット1体を選んでそのライフを回復する」

「ということは」

「まあ無難に『白の召喚士プリモ』を回復かな」


 『白の召喚士プリモ』

 ライフ2→3


「ライフの回復……」


 面倒ではある。

 けど、面倒としか思わない。


(それだけしか効果がない……?)


 私がそう思った――その時だった。




「ユニットのライフが回復したことで『光の聖女アリシア』の効果を発動」

「っ!」




 やはり。

 ただ回復するだけのユニットじゃない。

 それはなんとなくわかっていた。

 ならば一体どんな効果を持って、


「『光の聖女アリシア』は私か私のユニットのライフが回復されることで自身のアタックとライフを+1できる」

「えっ!?」

「というわけでドーン」


 『光の聖女アリシア』

 アタック0/ライフ2→アタック1/ライフ3


(パワーアップしたっ!?)


 白い光に包まれ、心なしか体が大きくなったかのような錯覚。

 まさかの効果を持っていたことに動揺が隠せない。


「ちょっとマズイかもしれないわね」


 流れる冷や汗を感じながら呟く。

 だが、シーラには聞こえなかったようで涼し気な表情のまま、新しいスティックのお菓子を出して一噛みしていた。


(あのユニットをどうにかしなければ私に勝機はない……!)


 このままあのユニットを放置すれば、いずれは大型ユニットと同じようなステータスになってしまう。

 そうなるとパワーの低い水属性ユニットでは対処ができなくなる。


 カードの効果で手札に戻すこともできなくはない。

 けど、それをしてしまえばあのユニットがまた出てくるだけ。

 また出てきたら、また対処しなくてはならない。


 ゆえに答えをすぐに導き出す。




 ――倒す必要がある。




「アタックフェイズ。私は『白の召喚士プリモ』で『青の召喚士ルチル』を攻撃」

「受けるしかないわね……迎え撃ちなさい!」


 攻撃と迎撃。

 お互いに一枚の札を取り出し、それを投げ付け合う。


 『白の召喚士プリモ』

 アタック1/ライフ3→アタック1/ライフ2


 『青の召喚士ルチル』

 アタック1/ライフ3→アタック1/ライフ2


「お次は『白の騎士ガリア』で『青の召喚士ルチル』を攻撃かな」

「くっ……!」


 今度の攻撃対象も『青の召喚士ルチル』。

 そこまでされればいくら私でも彼女の狙いがわかる。


(サポートユニットを退かすつもりね!)


 再び攻撃される青装束の巫女。

 だけど、私のところにそれを防げるようなカードはない。

 私はユニットへの攻撃を甘んじて受けるしかなかった。


 『白の騎士ガリア』

 アタック1/ライフ4→アタック1/ライフ3


 『青の召喚士ルチル』

 アタック1/ライフ2→アタック1/ライフ1


「そしてエンドフェイズ。『白の騎士ガリア』の効果を発動して自身のライフを回復」


 『白の騎士ガリア』

 ライフ3→4


「回復? ……はっ、まさかっ!」


 さっきまでなら少し面倒なだけの効果――としか思わなかった。

 けれど今は違う!


「ユニットのライフが回復したことで『光の聖女アリシア』の効果を発動。自身のアタックとライフを+1する」


 『光の聖女アリシア』

 アタック1/ライフ3→アタック2/ライフ4


「これでターンエンドかな」

「私のターン、ドロー!」


 メリル

 マナ0→5

 手札7→8


「私は『青の召喚士ルチル』の効果を使って2マナで『マリリン・マリネル』を召喚」


 メリル

 マナ5→3

 手札8→7


 『マリリン・マリネル』

 コスト3/水属性/アタック1/ライフ1

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。自分の手札からコスト3以下の水属性ユニット1体を選んでノーコスト召喚する。


「召喚した『マリリン・マリネル』の効果を発動。手札からコスト3以下の水属性ユニット1体をノーコスト召喚できる!」

「へえ、連続召喚か」

「それが水属性のバトルスタイルよ。私は手札からコスト3以下のユニット『アクアブレーダー』をノーコスト召喚!」


 メリル

 手札7→6


 『アクアブレーダー』

 コスト3/水属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 『ガード』

 ①このユニットが攻撃する時に発動する。カードを1枚ドローする。


 カードを一枚送り出すことで私のバトルゾーンに青い剣を握った人型のユニットが現れる。

 その背中を見送ってから、私は改めてフィールドに並んだユニットたちを見渡した。


(『青の召喚士ルチル』『セーラーアンカー』『マリリン・マリネル』『アクアブレーダー』……)


 並んだユニットの数は全部で四体。

 その数を確かめてから。


「私のバトルゾーンにはユニットが4体。よって」


 一枚のカードを動かす。


「このカード自身の効果によってコストを減らして2マナで召喚することができる!」


 フィールドにいたユニットたちから小さな光が一枚のカードへと集まる。

 そこから現れた幾筋もの大水がとぐろを巻くようにグルグルと渦を立ち昇らせる。

 そして、




「紡がれた絆が大いなる激流を支配する! 治めなさい! 『流制の水龍フェイ・ターク』!」




 透き通った水のような体に、たなびく雲のような四つの翼。

 まるで水を具現化させかのような龍が大水を弾き飛ばし。

 その中から私のバトルゾーンにその姿を顕現させた。 




 メリル

 マナ3→1

 手札6→5


 『流制の水龍フェイ・ターク』

 コスト6/水属性/アタック3/ライフ3

 【効果】

 ①このユニットは自分のバトルゾーンにいるユニット1体につき、召喚コストを-1して召喚できる。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動する。カードを1枚ドローする。

 ③相手がバトルゾーンにいるユニットの効果を発動する時、バトルゾーンにいるこのユニットをデッキの上に戻して発動できる。その効果を無効にして破壊する。




「もう出してくるんだ」


 私の出したユニットを見て、シーラが一言をこぼす。


「その子はメリルのエースユニットだったよね。まだ出てこないと踏んでたんだけど」

「あなたは何を言ってるのよ。私だってマスターの端くれ。元から出し惜しみなんてしないわ」

「そりゃマスター冥利に尽きるかな」


 カリカリとお菓子を食べながら言われても嬉しくない。

 私はシーラのことを軽く睨むだけ睨んでから溜め息をついた。


「……まあいいわ。バトルゾーンに出た『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動。カードを1枚ドローするわ」


 メリル

 手札5→6


「そしてこのままアタックフェイズ! 私は『セーラーアンカー』で相手に攻撃」

「受けようか」


 私の指示によってユニットが動きを見せる。

 『セーラーアンカー』は手に持った錨を大きく振りかぶると、それをシーラ目掛けて思いっきり投げ付けた。


 『セーラーアンカー』

 アタック2


 シーラ

 ライフ20→18


 彼女の余裕気な表情はやはり崩れない。

 それでもダメージは入った。


(この流れは止めさせない……!)


 確かに前進したその一歩を感じて。

 私は対峙する少女に目を向ける。


「アタックフェイズは終了。私はこれでターン、エンドよ」






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