第82話 パワカの連打を超えてゆけ!
「なっ! 『ニードルトラップ』!?」
コリートさんの仕掛けた罠。
そのカード名を聞いた瞬間、俺は目を剥く勢いで瞠目した。
「はいー。相手がユニットを出した時に使えるカードでしてー、相手のバトルゾーンにいるユニットのみなさんに3ダメージを与えまーす」
「くっ……」
コリート
マナ1→0
スペルゾーン4→3
『死皇帝の愛犬』
ライフ1→0
『ブラッディガール・リリィ』
ライフ2→0
『ミミック・ボックス』
ライフ2→0
(ちょっとマズイ……ってかソレ入ってたのかよ!!)
さっきデッキを見た時にもう少しカードを見とけばよかった。
(それにしても『ニードルトラップ』か)
これまた懐かしいカードが出てきたもんだ。
なんてことを考えながらせっかく出したユニットたちをいそいそと墓地に送り込む。
『ニードルトラップ』。
初期に登場したカウンタースペルでありながら、長い間環境で使われたパワーカード――その中の一枚だ。
効果は単純に『相手のバトルゾーンにいる全てのユニットに3ダメージ与える』というもの。
相手がユニットを出した時、という条件は付いてるものの、1マナでぶっ放せるのでコスパはほぼ最高。
おまけに、3ダメージというのも大きい。
なにせ序盤に出てくるユニットでライフが3を超えるようなユニットは少ない。
なので、基本的にはほとんど全ての低コストユニットを処理することができるのだ。
(くっそー。やっぱパワー高いなあのカード)
三体ものユニットが並んでいた俺のバトルゾーンが一気に更地に。
相手の場には『ストーンブロッカー』がいるので何とか態勢を立て直したい。
立て直したいけれども。
(展開するにはマナがちょっと足りないよなぁ……)
墓地を見ても落ちてる『死皇帝の家臣』は一枚だけ。
一回のコスト軽減だけじゃ半端にユニットを出して終わってしまう。
(一旦耐えだな)
「俺はターン、エンドです」
「ほほー。じゃあー私のターン、ドロー」
コリート
マナ0→4
手札2→3
「私はー3マナでユニット『宵闇のゾンビ』を召喚しまーす」
コリート
マナ4→1
手札3→2
『宵闇のゾンビ』
コスト3/闇属性/アタック3/ライフ3
【効果】
(またバニラユニットか)
もしかしてあのデッキに入ってるユニットって全部バニラなのだろうか。
だとするなら相手のバック――スペルゾーンにあるカードだけ気を付ければいいから楽ではあるな。
まあ、ステータスがデカいから無視するわけにもいかないんですけど。
「ではではー、アタックフェイズー。私は『ストーンブロッカー』君でクロハルさんに攻撃しまーす」
「くっ」
『ストーンブロッカー』
アタック2
クロハル
ライフ15→13
そろそろ厳しい……かもしれない。
次のドローで何か良さげなカードが引ければいいんだけど。
「私はこれでターンエンドですー」
「俺のターン、ドロー」
クロハル
マナ1→4
手札4→5
(うーん……微妙、か)
ドローしたカードを見て、考える。
残念なことにこっちから相手のカードを触れるようなカードは手札にない。
相手のスペルゾーンにあるカードは三枚。
どうにかしてあのセットされたカードを吐かせたいな、と。
「俺は1マナを使ってドロップゾーンから『死皇帝の愛犬』を召喚」
クロハル
マナ4→3
『死皇帝の愛犬』
アタック1/ライフ1
「手札を1枚捨てて効果発動。デッキからコスト3以下の闇属性ユニット『スターヴ・ゴースト』を手札に加え、自分に2ダメージ」
クロハル
手札3→2→3
ライフ13→11
「そして、ライフにダメージを受けたことで『スターヴ・ゴースト』の効果発動。手札からノーコスト召喚し、受けたダメージの分だけパワーアップ」
クロハル
手札3→2
『スターヴ・ゴースト』
アタック1/ライフ1→アタック3/ライフ3
「ほわぁ、本当にズルいですよねーそのコンボはー」
「……否定はしないっす」
使っといてアレだけど、俺でもそう思う時あるもん。
この『死皇帝の愛犬』と『スターヴ・ゴースト』のコンボって本当によくできてるんだよな。
先に『スターヴ・ゴースト』が手札に来て、その後にダメージが入る。
おかげで『スターヴ・ゴースト』が手札にある状態でダメージが入ったことになって効果発動。
そのまま出てくる、という寸法だ。
とんだマッチポンプである。
「バトルゾーンに出た『スターヴ・ゴースト』の効果を発動。自分のライフに1ダメージ」
クロハル
ライフ11→10
これで俺のライフはちょうど10点。
残ったマナは3。
――ヤツを召喚する条件は整った。
「俺は手札から! 自身の効果によって召喚コストを-した『苦鳴の龍ベルギア』を3マナで召喚! 来い! 『苦鳴の龍ベルギア』!」
クロハル
マナ3→0
手札2→1
『苦鳴の龍ベルギア』
アタック4/ライフ4
俺のフィールドに現れるは黒く細長い手足を伸ばした枯れ枝のような龍。
見慣れた姿でもあるけど、やっぱ好きだなこのデザイン。
(特に動きはないか)
ユニットをバトルゾーンに出しても悩む素振りはなし。
召喚とかに反応するカウンタースペルはない、と。
「ならばバトルゾーンに出た『苦鳴の龍ベルギア』の効果を発動! 相手と相手のバトルゾーンにいる全てのユニットに3ダメージを」
「あ、ちょっと待ってくださーい。その龍さんの効果に合わせてカウンタースペル『賢者の対抗術』を1マナで発動しまーす」
「はっ?」
コリート
マナ1→0
スペルゾーン3→2
はっ?
……って惚けてる場合じゃない!
そのスペルは!
「『賢者の対抗術』の効果でコスト6以下のカードの効果を無効にして破壊しちゃいますー」
「ちょっ、まっ」
それも入ってんのかよ!?
ってか入ってたのかよ!
だったらデッキの中身もうちょっとちゃんと見とけばよかった!
もう二度と流し見なんかしない!
絶対ニダ!
「ふっふっふー。ベルギアという名前のドラゴンさんには痛い目に遭いましたからねー。簡単には使わせませんよー?」
「くっ……」
俺のエースを恐ろしく早く墓地に送って歯噛みする。
何か一枚でも踏めたらとは思ってた。
けれども、だ。
(『賢者の対抗術』が入ってるなんて……そんなんアリかよ)
『賢者の対抗術』――このカードも環境で使われたパワーカードの一枚だ。
効果は『相手がコスト6以下のカードの効果を発動する時にその効果を無効にして破壊する』というもの。
要するに、コスト6以下のカードを何でも封じてしまうトンデモ効果をしているのだ。
しかもカウンター発動に必要なマナは1。
もはやコスパが良いとかそういう次元の話じゃない。
先攻を取ってこのカードをセットすればほぼ勝ち……は言い過ぎかも。
だが、一気に有利側に天秤が傾くのは確かだ。
(くっそー。最後にアプリで遊んだ時には解除されてたとはいえ、制限カードまであるのは話が違うじゃん……)
一時期ではあるけど。
それでも制限カードに指定されてたカードだ。
生半可なパワーじゃない。
悔しい気持ちがあるけど今はバトル中。
とりあえず気を持ち直さなくては。
「俺はこれでターンエンドです」
「では私のターンですねー。ドロー」
コリート
マナ0→5
手札2→3
「うむむー。そう来ましたかー。悩んじゃいますねー」
手札をジーッと見つめながら眉間にシワを寄せるコリートさん。
両手で手札を持ってるからなんか書類の粗を探してる人みたいになっちゃってる。
けど、そんなに悩むものかなぁ。
(カウンタースペルを引いた感じ……じゃなさそうだなあれは。ということはユニットか?)
いや、もしかしたらスペルを使うかどうか悩んでる可能性だってある。
カウンタースペルは確かに強力なカード。
しかし。
だからといってカウンタースペルだけで戦えるか、と言われたら――答えは『ノー』だ。
コリートさんが使うカウンターデッキは、いわゆる『コントロールデッキ』に分類されるデッキだ。
得意な戦場は長期戦。
相手の動きを妨害して。
少しずつ差を付けて。
最後には――押しつぶす。
それがコントロールデッキの主な戦い方だ。
(さあ)
ユニットで盤面を取るか。
それとも。
スペルで対応力を上げるか。
選択肢は二つに一つ。
(どう来る……?)
悩みに揺れていたコリートさんの指が一枚のカードに触れる。
彼女の選んだ一手を迎え撃つ。
その気持ちを胸に俺はグッとカードを握る手に力を込めた。
評価や感想、誤字脱字や要望などありましたらよろしくお願いします!




