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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~アドバンスド・スペリオル~
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第81話 試運転~久し振りの再開添え~





 あれからしばらくして。

 軽いノックと共にウェルさんは件の試運転バトルをする相手を連れて来てくれた。

 連れて来てくれた、んだけどぉ。


「あの、えっと、ウェルさん」

「はい。どうしましたか?」

「えっと、その……その人が俺とバトルする人ですか?」

「はい。そうです」


 俺の質問に、ニッコリと笑って答えるウェルさん。


 その隣には、




「お久しぶりですねー」

「アッハイ」




 同じくニッコリと笑う一人の女性、否、あの日の受付嬢さん。

 名前は確かなんとかさん。


(やべぇ、全然覚えてねぇ)


 俺があんまりマスターズ協会に行かないことと久しぶりすぎることもあって名前が出てこない。

 なんだけど。

 今の俺にはそんなことを考える余裕がない。

 多分、俺の顔はさぞや面白いことになってると思う。

 自分でも愛想笑いしてる口の端がピクピクと痙攣してるのがわかるくらいだ。


 え、元から面白い顔してるって?

 やかましいわ!


「えっと、その節はお世話になりました」

「いえいえー。私はまたクロハルさんとバトルできるのをずっと楽しみにしてたんですよー」

「そ、そうですか」


 パチンと手を合わせてポワンポワンに笑う受付嬢さん。

 その様子を見るに、本当に俺とバトルできるのを楽しみにしてたらしい。


(うへぇ……)


 ふと思い出すはあの日、受付嬢さんが見せたどこまでも冷たくて、どこまでも無機質な――黒い瞳。


 今にも殺されるのかと錯覚しそうなくらいに鋭かったソレも思い出して体がぶるりと震える。


(流石に、大丈夫だよな?)


 ほにゃんと丸い口で笑顔を浮かべる今の姿とその時の姿。

 二つの姿をどんなに重ねてみても全然一致しない。

 一体何がどうしたらこんなほんわかした女の人があんな殺気みたいなのを飛ばせるのだろうか。

 だが、好奇心はネコをなんたらかんたら。

 気になるけど知らなくてもいい、と俺は心に言い聞かせた。


「ではー、早速やりましょうかー」

「はい。お願いします」


 殺気みたいのを飛ばしてさえ来なければ大歓迎です。

 今回の形式は立体(アクティブ)バトルができないのでアナログ式の簡単(インスタント)バトル。

 俺はケースからいつものマイデッキを取り出してカットアンドシャッフル。

 それを見た受付嬢もウキウキとした様子でデッキを出して、


「コリートさん」

「はいー?」

「今日使うデッキはあなたのデッキじゃなくてこっちのレンタルデッキです」

「はいー?」

「はいー? じゃありません」

「はいー?」

「あのですねぇ……」


 あ、ウェルさんがこめかみを揉みながら溜め息ついてら。

 お疲れ様です。

 それにコリートさんね。

 ちゃんと覚えとこ。


「……あとでたい焼きメロンを買ってあげますからこっちのデッキを使ってください」

「わーい」

「……………………」

(お労しやウェル上……)


 どよーんとした空気をまとったウェルさんから青色のデッキケースを受け取る受付嬢さん。

 ただなんだろう。

 今のやり取りだけで大体どんな人かわかっちゃった俺が悲しい。


(強く生きてくれ)


 励ます意味も込めてウェルさんに心の中で二回目の合掌。

 とりあえずバトルのために予備用のケースから適当にカードを抜く。

 この適当なカードたちにはマナのカウント役として頑張ってもらうのである。


「デッキ交換しますか?」

「あ、そうですねー。お願いしますー」


 まあ、不正とかはしてこないだろうけど一応ね。


 お互いのデッキをカットアンドシャッフル。

 その後に先攻と後攻を決めて、マリガンをする。


(まあまあだな)

「そちらは終わりましたかー?」

「はい。大丈夫です」


 準備は一通り済ませたのであとはバトル開始の宣言をするだけ。

 息を吸い、ふっと吐き出した俺はコリートさんに声を掛けた。


「じゃあやりますか」

「はいー」


「「カードスタンバイ! バトルスタート!」」




 ☆☆☆




 横からウェルさんに見守られつつ。

 俺とコリートさんの試運転バトルが始まった。

 ちなみにじゃんけんは負けた。


「先攻は私ですねー」


 コリート

 マナ1

 手札5


「スタート飛ばしてー、ドロー飛ばしてー、メインフェイズですー」

「そうですね」

「私はー、手札からカードを3枚セットしますー」


 コリート

 手札5→2

 スペルゾーン0→3


「……なるほど」


 そう来たか。

 マナを使わず、ただスペルゾーンにカードをセットするだけ。

 けれども。

 俺からすればその動きだけで十分だ。


(コリートさんのデッキは『カウンター』デッキか)


 使えるマナは少ない。

 故にどんなカウンターカードがあったとしても精々使えるのは一枚か二枚くらい。


 だが――厄介だ。


 カウンタースペルはカウンター発動をするまでに手間が掛かる分、一枚一枚のパワーが高い。

 油断をすれば手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。


(慎重に行かないとな)

「私はこれでターンエンドですー」

「なら俺のターン、ドロー!」


 クロハル

 マナ1

 手札5→6


「俺は1マナを使い、手札からスペル『不等価交換』を発動」


 クロハル

 マナ1→0

 手札6→5


「カードを1枚ドローした後に手札を2枚捨てます」


 クロハル

 手札5→6→4


 さて、どうしよう。

 墓地に送ったカードを見て少しだけ考え込む。

 俺が今捨てたカードの中には――『死皇帝の家臣』が混じっている。

 つまり、動こうと思えば動ける。

 だが、相手が使うのはカウンタースペルによる妨害を軸としたコントロールデッキ。

 長期戦になるのは避けられない。


(どうするか…………)


 動くか、動かないか。

 僅かばかり逡巡して、


「……俺はこれでターンエンドです」


 俺は後者を選択した。


「そうですかー。じゃあ、クロハルさんのターンが終わる前に1マナでカウンタースペル『ドローカウンター』を発動しますー」


 コリート

 マナ1→0

 スペルゾーン3→2


「ドローカードか」

「デッキからカードを1枚ドローしちゃいまーす」


 コリート

 手札2→3


「それから私のターンですー。ドロー」


 コリート

 マナ0→2

 手札3→4


「私は手札からカードを2枚セットしますー」


 コリート

 手札4→2

 スペルゾーン2→4


(堅実だな……)


 コリートさんはカードをたくさん伏せているが、マナの関係上、使えるカードは一枚か二枚が限界。

 そうとは分かっていても、あのセットしたカードはマナが増えれば全部使えるようになる。

 早めにカードを使わせておきたい。


「俺のターンです。ドロー」


 クロハル

 マナ0→2

 手札4→5


「俺は1マナを使って手札から『死皇帝の愛犬』を召喚します」


 クロハル

 マナ2→1

 手札5→4


「そして、効果発動。手札を1枚捨ててデッキからコスト3以下の闇属性ユニット――『ダークスライム』を手札に加えた後、自分のライフに2ダメージ与えます」


 クロハル

 手札4→3→4

 ライフ20→18


「続けて1マナを使って『ダークスライム』を召喚」


 クロハル

 マナ1→0

 手札4→3


 『ダークスライム』

 コスト1/闇属性/アタック1/ライフ1

 【効果】

 ①このユニットが破壊された時に発動する。相手、または、相手のバトルゾーンにいるユニット1体を選んで2ダメージ与える。


「わあー、いきなりユニットが二体も」

「俺はこれでターンエンドです」

「そうですかー。私のターン、ドロー」


 コリート

 マナ2→3

 手札2→3


「行きますよー。私は手札から2マナで『ストーンブロッカー』君を召喚しまーす」


 コリート

 マナ3→1

 手札3→2


 『ストーンブロッカー』

 コスト2/土属性/アタック2/ライフ4

 【効果】

 『ガード』


(動いてきたか)


 思ったより早い。

 しかも出してきたのは効果を持たないユニット、俗に言う『バニラ』と呼ばれるユニットだ。

 バニラユニットは固有能力は持ったとしても効果は持たない。

 その代わりにステータスが高い、という特徴がある。

 俺の闇デッキはステータスの低いユニットが多いから真っ向からの打ち合いでは勝てない。

 え、バニラの由来?

 こ、効果が真っ白で美味しそうだからじゃないでしょうか。


「出したばかりで攻撃できないのでー……私はこれでターンエンドですー」

「ならば俺のターン、ドロー」


 クロハル

 マナ0→3

 手札3→4


「俺は2マナを使って手札からスペル『血の契約』を発動します」


 クロハル

 マナ3→1

 手札4→3


「効果でカードを2枚ドローした後、自分のライフに3ダメージ与えます」


 クロハル

 手札3→5

 ライフ18→15


「ドローカードですかー。でも、3ダメージは痛いですねー」

「そうですね」


 確かに自傷3点は痛い。

 でも、俺のデッキとの相性は悪くない。


「自分のライフにダメージを受けたことで手札から『ブラッディガール・リリィ』の効果を発動。『ブラッディガール・リリィ』をノーコスト召喚します」


 クロハル

 手札5→4


 『ブラッディガール・リリィ』

 コスト3/闇属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①自分のライフにダメージを受けた時、自分のライフが15以下であれば発動できる。このユニットを手札からノーコスト召喚する。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。自分のバトルゾーンにいるユニット1体を選んで破壊する。その後、デッキからコスト3以下のユニット1体を選んでノーコスト召喚する。


「バトルゾーンに出た『ブラッディガール・リリィ』の効果発動。俺は『ダークスライム』を破壊して、デッキから『ミミック・ボックス』をノーコスト召喚します」


 『ミミック・ボックス』

 コスト2/闇属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 『ガード』

 ①このユニットは攻撃できない。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動する。デッキの上から2枚をドロップゾーンに送る。


「破壊された『ダークスライム』とバトルゾーンに出た『ミミック・ボックス』の効果を発動します。先に『ダークスライム』の効果で『ストーンブロッカー』に2ダメージ」


 『ストーンブロッカー』

 ライフ4→2


「その次に『ミミック・ボックス』の効果でデッキの上からカードを2枚ドロップゾーンに送ります」

「はわー。一気に動いてきましたねー」

「そういうデッキなので」


 『ミミック・ボックス』の効果でデッキの上からカードを2枚パラパラと墓地に送る。

 それを見ていたコリートさんはニコニコと楽しそうに笑いながら、


「じゃあー『ミミック・ボックス』さんの召喚に合わせてスペル『ニードルトラップ』を1マナでカウンター発動しまーす」


 静かに牙を向いた――。






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