表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~アドバンスド・スペリオル~
PR
80/89

第80話 (環境の)夜明けぜよ




「こちらが此度のパックに封入される新しいカードとなります」


 そう言いながら目の前に置かれた四枚の新しいスペルカード。

 そのカードを、俺は食い入るように見ていた。




(『カウンタースペル』『アサルトスペル』『∞スペル』、そして、『エリアスペル』か)




 この四つのスペルは前世でも嫌という程に見たし使ったカードだ。

 一癖も二癖もある。

 代わりに通常のスペルと同じ、あるいはそれ以上にパワーがある。

 それがこれら四つのスペルの特徴だ。


 『カウンタースペル』と『アサルトスペル』。

 この二つはどちらも『相手ターンに発動できる』という特徴を持ったスペルカードだ。


 『カウンタースペル』はスペルゾーンにセットすることで『カウンター発動』ができるスペルカードのこと。

 『カウンター発動』というのはセットしてから発動すれば、通常よりも少ないマナで発動できるようになる発動方法のこと。

 その代わり、セットしたターンには『カウンター発動』ができないという特徴がある。

 一応、発動する条件さえ合ってれば手札からも使うことはできる。

 けどその場合は通常通りにマナを使わなきゃいけないのでちょっと気を付けなきゃいけない。




 んで。


 もう一方の『アサルトスペル』は手札から直接発動する『アサルト発動』ができるスペルカードのことだ。

 この『アサルト発動』も『カウンター発動』と同じで通常よりも少ないマナで発動できるようになる発動方法。

 まあ、こっちの場合は手札から直接発動しなきゃいけないんだけどね。

 その代わりに発動条件さえ達成していればすぐに発動できるという手軽さがウリだ。


 ただ、気を付けなきゃいけないことがある。


 それは、




 ――『セットしたらいけない』ということだ。




 セットしてしまうと通常通りにマナを使わないといけないので、だいぶ損をすることになる。


(一応、セットしてカウンタースペルに見せかける、ってこともできるけど……それは上級者過ぎるんだよなぁ)


 そういったブラフみたいなやり方はそもそも発動条件の付いてるスペルじゃないとできないからね。

 ちなみに俺はやったことない。

 やられたことはあるけど。




 そして。


 残りの『∞スペル』と『エリアスペル』。

 このスペルはどちらも一度出せば『フィールドに残り続ける』という特徴を持っている。


 普通のスペルは一度発動したら使い終わった後にドロップゾーンに行ってしまう。

 けれども、この二つのスペルはずっとフィールドに残って効果を発揮してくれるカードなのだ。


 細かい違いとして。


 『∞スペル』はスペルゾーンに五枚まで出せるけど張り替えたりはできない。


 『エリアスペル』は専用のゾーンに一枚だけしか出せないけど張り替えることができる。


 といったものくらい。


 効果とかに関してはカウンタースペルとか、アサルトスペルよりは地味なものが多いかな。

 中には化け物みたいなカードもたまにあったりはするけど。


(ユニットの効果の永続無効……スペルの発動不可……墓地メタ……うっ、頭が)

「? クロハルさんどうかしましたか?」

「あ、いえ。なんでもないです」


 いけないいけない。

 意識が変な方に飛んでくところだった。

 あれは『キンマス』界のパンドラボックスにして黒歴史。

 あんなクソカードは思い出す必要なんてどこにもないのである。


「ウェルさん」

「なんでしょうか?」

「デッキってこの三つだけなんですか?」

「えぇ。まだ完成したばかりなのでそこまで数はないのですよ。デッキ一つ作るのも大変でしたし……」

「そ、そうだったんですね」


 あ、ウェルさんの目が遠くを見ちゃってら。

 デッキ作りが大変だっていうのは俺もわかるけど、この感じだとかなり大変だったんだろうな。


「あれも入れたいだのこれも入れたいだの、挙句にはそれぞれの好きなカードまで入れようとする始末……一体レンタルデッキのことをなんだと思って……」


 あっあっ、目が、目が凄んでますよウェルさん。

 気付いて!

 早く気付いて!

 いや、念じてもダメそうだこれ。


「あの、その、さっきの試運転の話なんですけど……」

「はい? ……あ、あぁ、そうでしたね」


 もしかして、忘れてた?

 今の一瞬で?

 ……本題を忘れるくらいってどんだけ大変だったんだろう。


(想像はちょっとしたくない、かなぁ)


 お労しやウェル上。

 俺は思っていたより苦労人をしてるらしいウェルさんに心の中で合掌した。


「失礼しました。試運転の話でしたね」

「はい」

「では早速なのですが、クロハルさんにはこちらのレンタルデッキを相手にバトルしていただきたいのです」

「えっ」


 あれって俺が選ぶとかそういう流れじゃなかったの!?

 ビックリしてついウェルさんに開いた目を向ける。

 そんな俺の気持ちに気付いたのか、ウェルさんは困ったように苦笑した。


「いえ、実は最初はそのつもりだったのですが……いきなり新しいデッキを使わせるのは酷だろうという話がありまして」

「はあ」


 なんともまあ親切というかなんというか。

 俺としては別にいきなり新しいデッキを使わされるでも良かったんだけどなぁ。

 ……でも決まっちゃったものは仕方がない。


「まあ、そういう話があったというか、そう言い出した人がいるというか……」


 あれ、なんで急に歯切れが悪そうになってんだ?

 頭にハテナを浮かべて首をかしげる。

 そこで俺は気になった言葉にポロッと疑問をこぼした。


「あの、今『そう言い出した人がいる』って言いませんでした?」

「えぇ……言いましたね」

「それってまさかとは思うんですけどその人一人の意見で決まっちゃったんですか?」


 いやいや。

 そんなバカな。

 って思いたいんだけどウェルさんの雰囲気を見るに冗談とかではなさそう。


(ウソだよね……?)


 話を聞いた感じだとレンタルデッキの試運転って、結構大事なことだと思うんだけど。

 救済制度に関わるものだし。

 なのにそれの話を一人で左右しちゃうって、そんなにヤバい人がおるん?

 ジーッとウェルさんを見つめ、無言の質問で問い掛ける。

 ウェルさんはついにその顔から笑顔を消してこめかみを指先で揉み始めた。


「……決まっちゃったんですよ。その一人のせいで」

「えぇ!?」


 横暴じゃん!


「それって良いんですか?」

「良いわけがないでしょう」

「なら」

「……バトルです」

「へ?」

「その人がさっきの意見を賭けて会議にいた人全員にバトルをふっかけて――勝ってしまったのですよ」


 ウソでしょ……?


「……全員に、ですか?」

「……全員に、です」


 お、おう。

 それで決まっちゃったのか。


(確かにこの世界だと大事なことをバトルで決めたりするのは知ってたけど……)


 自分の意見を通すためにも使えるのかよ。

 想像以上の無法っぷりに体がぶるりと震える。


(バトルの重要性って大きいんだな)


 この世界では、バトルが全てだ。


 俺は『キング オブ マスターズ』が好きで。

 バトルをするのが楽しくて。

 だけど、勝ち負けにはこだわって。

 勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。

 でも、それだけで済むのは――俺が生きていた前の世界だけ。


(……『強ければ生き、弱ければ死ぬ』ってヤツか)


 勝てば小さな我が儘すら通すことができる。

 だが、負ければ、




 ――全てを失う。




(……っ!)


 まさに弱肉強食。

 そうだ。

 そうだよ。

 俺はそんな世界に来てしまったんだ。

 そんな大事なことを俺はいつの間にか忘れ……。


「どうかしましたか?」

「……いえ、なんでもないです」


 そういえば、まだウェルさんと話してる途中だったな。

 忘れかけてたことを改めて意識することができたんだ。

 それでいい。

 俺は一人、心の中で気を引き締めた。


「では、これから人を呼んできますのでクロハルさんはここでお待ちください」

「わかりました。……ん?」


 あれ。

 つい流れで返事しちゃったけどバトルスペースに行かなくてもいいの?

 デッキの試運転をするんじゃなかったっけ。


「あの!」

「はい? どうかしましたか?」

「もしかしてなんですけどここでバトルするんですか?」

「ええ、そうですけど」

「えっ」


 うそ。

 ここでやんの?

 ここだと狭いから立体(アクティブ)バトルなんてやったら二次被害とか凄そうなんですけど。

 物とか壊れて弁償うんぬんって話になったら嫌だよ俺。

 なんてことを考えていたら顔が引き攣ってしまった。

 そんな俺の様子を見たウェルさんは何かに気付いたのか「あっ」と声をこぼした。


「クロハルさん、もしかしてですけど今は立体(立体)バトルができないことをご存知ないですか?」

「えっ? …………えっ!?」


 立体(アクティブ)バトルができない?

 それってどういうことなの!?

 まさかの衝撃。

 白黒する俺の目と頭。

 そこから何かを察したのか、ウェルさんは小さな溜め息をついた。


「実は新カードの導入にあたって、仮想体システム側に少々不備があったことが発覚しまして」

「仮想体システムに不備」


 何それ怖い。

 もしかして『オーバーブレイク』ってヤツだったり?


(いやでも、この前やった時はそんなことなかったけどなぁ)


 思い出すは金髪イケメンとのバトル。


 記憶が合ってれば俺が立体(アクティブ)バトルをやったのはその一戦が最後だ。

 俺自身は一度『オーバーブレイク』を経験してるし、その時の感覚も未だに覚えている。

 けど、金髪イケメンとやった時は特にこれといったような違和感とかは全然なかった。

 となれば『オーバーブレイク』ではない、か?


「それって……大丈夫なんですか?」

「えぇ。幸いにも一部フィールドの機能不全だけだそうでして本日中にも復旧が終わる予定になってます」

「ほぇー」


 そうだったのか。

 ウェルさんの言葉に安心してホッと胸を撫で下ろす。


「ちなみにそのフィールド機能ってなんですか?」

「申し訳ないのですがそれを私の独断でお伝えするわけには」

「あ、そうですよね」


 そうだよな。

 そんな大事な話を勝手にペラペラと言うわけにはいかないよね。

 失礼しました。


「それではこれから少し人を呼んできますね」

「あっ、はい。お願いします」


 なんか、その。

 長く引き止めちゃってすいませんでした。

 そんなことを思いながら。

 俺は少しだけ哀愁の漂ってるウェルさんの背中を見送った。







評価や感想、誤字脱字や要望などありましたらよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ