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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~ニューカラーズ・エントリー~
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76/92

第76話 後手捲り






 まず。

 目を落として手札を確認する。


(『欲望の対価』と『死の皇帝ネメシス』か……)


 ちなみに俺が今ドローしたのは『欲望の対価』。

 まさかの今引きである。

 おせーよホセ。


 まあでも、カードゲームだと遅れてくるヒーロー気取りのカードはいっぱいある。

 なんだったら来てほしくないのに来たりするカードもある。

 あまり悩んでても仕方がない。

 そう決めた俺はドロップゾーンの方に手を向けた。


「俺は1マナを使いドロップゾーンから『死皇帝の愛犬』を召喚」


 クロハル

 マナ5→4


 『死皇帝の愛犬』

 アタック1/ライフ1


「そして、手札を1枚捨てて『死皇帝の愛犬』の効果を発動」


「ならば、僕はその効果に対して『キングゴブリン』の効果を発動! 手札の『不屈のゴブリン』を破壊することでそのユニットの効果を無効にさせてもらうよ」


 クロハル

 手札2→1


 金髪イケメン

 手札5→4


 なるほど。

 ここで使ってきたか。

 光るデラックス王杖に叩かれた『死皇帝の愛犬』が消えるのを見ながら考えて。


(……ちょっと痛いかもしれない)


 手札を捨てたことで残った俺の手札は一枚。

 ただ、ちょっと。

 困ったことをされた俺はうむむ、と顔をしかめた。


「ここで破壊された『不屈のゴブリン』の効果を発動! このユニットは」

「手札にいる時に破壊されたらノーコスト召喚できる、だろ?」

「そうだ! 手札から破壊されることで、ってなにっ!? 知っていたのか!?」

「少しだけな」


 思わず口走っちゃったけど、大丈夫だよな?

 でもやっちゃったものは仕方がない。

 流石に前世のことを喋るわけにはいかないので適当に誤魔化す。

 だけど目をキラキラさせてくるのだけはやめてほしい。

 俺はゴブリンよりも……なんでもない。


(ったく、めんどくさいカードを握りやがって)


 驚いたらしい金髪イケメンは動揺をしながらも効果の処理を続ける。

 その陰で、俺は溜め息をついた。


「くっ、ぼ、僕は破壊された『不屈のゴブリン』をノーコスト召喚!」


 『不屈のゴブリン』

 コスト4/土属性/アタック3/ライフ3

 【効果】

 『ガード』

 ①手札にいるこのユニットが破壊された時に発動できる。このユニットをノーコスト召喚する。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。手札からコスト3以下の『ゴブリン』ユニット1体を選んでノーコスト召喚する。


「バトルゾーンに出たことで『不屈のゴブリン』の効果を発動! 僕は手札からコスト3以下の『ゴブリン』ユニットである『モンクゴブリン』をノーコスト召喚する!」


 金髪イケメン

 手札4→3


 『モンクゴブリン』

 コスト3/土属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。自分のライフを2回復する。

 ②このユニットが破壊された時に発動できる。カードを1枚ドローする。


 金髪イケメンの手によってフィールドに一枚のカードが舞い落ちる。

 そこから現れたのは十字架の入った小綺麗なローブを着た一匹の小鬼。

 両手で抱えた本は『モンクゴブリン』よりも大きい。

 それを見た俺は強張る顔を抑えられなかった。


「げっ、そっちかよ……」

「ふっふっふっ。バトルゾーンに出た『モンクゴブリン』の効果を発動! 僕のライフを2点、回復させてもらう!」


 その小さな両手で抱えた本が開くとそこから小さな光が飛んで金髪イケメンの体を包んだ。


 金髪イケメン

 ライフ1→3


(最悪だー……)


 ここまで来てライフを回復されるとは。

 『キングゴブリン』の効果を使わせることができたとはいえ、それはちょっとキツイ。

 だからと言って止まることもできない。

 幸いにも『キングゴブリン』の無効効果が使えるのは1ターンに1回だけ。

 あとは相手の『ガード』を突破するだけだ。

 頭の中で組んでいたプランを一回崩し、少しだけ考え込む。


(……とりあえずやってみるか)


 ある程度のプランを組み直してから俺はヨシ、と意気込んだ。


「俺は1マナを使ってドロップゾーンから『死皇帝の愛猫』を召喚」


 クロハル

 マナ4→3


 『死皇帝の愛猫』

 アタック1/ライフ1


「召喚した『死皇帝の愛猫』を破壊して効果発動。デッキから『死皇帝の家臣』をドロップゾーンに送り、自分のライフに2ダメージを与える」


 クロハル

 ライフ6→4


「俺はドロップゾーンにいる『死皇帝の家臣』の効果を発動し、このターン中、闇属性ユニット1体の召喚コストを-2できる」

「随分と厄介だね、そのカードは」

「だろ?」


 なんて余裕ぶっこいてるけど背中に流れる冷や汗の量は半端じゃない。

 今回のこのバトルには『パックの箱買い』といプレゼントが掛かっている。

 だから、俺は負けられないんだ!


 あ、でも婚約者うんぬんはどうでもいいです。はい。

 それは当事者同士で仲良く決めて欲しい所存である。


「俺は『死の皇帝ネメシス』と『死皇帝の家臣』――二つの効果を使い、ドロップゾーンから『死の皇帝ネメシス』を2マナで召喚する! 来い! 『死の皇帝ネメシス』!」


 クロハル

 マナ3→1


 『死の皇帝ネメシス』

 コスト6/闇属性/アタック3/ライフ5

 【効果】

 ①このユニットは召喚コストを-2してドロップゾーンから召喚できる。

 ②自分のバトルゾーンにユニットが出た時に発動できる。相手のバトルゾーンにいるユニット1体を選んで破壊する。

 ③このユニットが破壊された時に発動する。相手のフィールドにあるカード1枚を選んで破壊する。


 アイツにとっての王が『キングゴブリン』なら。

 俺にとっての王は『死の皇帝ネメシス』だ。


 豪華な黒のローブに金の王冠。

 白肌の顔に無表情を浮かべた死の王がふらりと手を伸ばす。


「バトルゾーンに出た『死の皇帝ネメシス』の効果発動。相手のバトルゾーンにいるユニット1体を選んで破壊する。俺は『不屈のゴブリン』を選んで破壊する」

「くっ、『不屈のゴブリン』……!」


 『死の皇帝ネメシス』から放たれた黒い光に『不屈のゴブリン』が飲まれる。

 やがて。

 その光が晴れた頃には『不屈のゴブリン』の姿は影も形も残っていなかった。


「さらに俺は1マナを使ってドロップゾーンから『死皇帝の愛犬』を召喚」


 クロハル

 マナ1→0


 『死皇帝の愛犬』

 アタック1/ライフ1


「ふっ。そんなユニットが出たところで僕には勝てな」

「俺のバトルゾーンにユニットが出たことで『死の皇帝ネメシス』の効果を発動。『タンクゴブリン』を選んで破壊する」

「なにっ!?」


 残念だったな!

 『死の皇帝ネメシス』の破壊効果が発動するのは俺のバトルゾーンにユニットが出た時。

 つまり、『死の皇帝ネメシス』がいる時に適当にユニットを出すだけでパンパカ破壊を飛ばせるのだ。

 うん。

 使っといてアレだし、今更すぎるのもアレだけど無法すぎるなこれ。


「破壊された『タンクゴブリン』の効果を発動! カードを1枚ドローする!」

「どうぞどうぞ。俺はさらに手札を1枚捨てて『死皇帝の愛犬』の効果を発動。デッキからコスト3以下の闇属性ユニット『スターヴ・ゴースト』を手札に加え、自分のライフに2ダメージ」


 クロハル

 手札1→0→1

 ライフ4→2


 金髪イケメン

 手札3→4


「俺がダメージを受けたことで手札の『スターヴ・ゴースト』の効果発動。このユニットをノーコスト召喚し、受けたダメージの分だけパワーアップする」


 クロハル

 手札1→0


 『スターヴ・ゴースト』

 アタック1/ライフ1→アタック3/ライフ3


「あとは『スターヴ・ゴースト』がバトルゾーンに出たことで『スターヴ・ゴースト』のダメージ効果と『死の皇帝ネメシス』の破壊効果を発動。破壊するのは――『キングゴブリン』だ」

「くっ……!」


 クロハル

 ライフ2→1


 俺の体にまとわりつく黒いモヤ。

 それと同時に『死の皇帝ネメシス』の手から黒い光が伸びる。

 苦しそうに呻きながら『キングゴブリン』の姿が消えていく。

 それを見た金髪イケメンはギリッと音がしそうな程に悔しそうな歯ぎしりをしていた。 


「……破壊された『キングゴブリン』の効果を発動する。僕はドロップゾーンから『ゴブリン』カードを2枚……『不屈のゴブリン』と『タンクゴブリン』を手札に加える」


 金髪イケメン

 手札4→6


 金髪イケメンの手札に二枚のカードが増える。

 だが、そのどちらも今使えるようなカードではない。


「さて、これで終わりだな」

「……あぁ」


 悔しいだけ悔しそうにして。

 かと思えば、急に静かに肩を落とす金髪イケメン。

 どこか哀愁を感じさせるその姿に少し心が痛む。

 けれども今はバトルの真っ最中。

 俺は二体のユニットに目配せをしてから口を開いた。


「アタックフェイズ。『死皇帝の使い魔』と『ブラッディガール・リリィ』で直接(ダイレクト)攻撃(アタック)だ」


 指示を受け、攻撃体勢に入る二体のユニット。

 黒いモヤの渦巻く手をそれぞれが攻撃先へと真っ直ぐに向ける。


 金髪イケメンの残りのライフは『3』。

 それに対し、『死皇帝の使い魔』と『ブラッディガール・リリィ』のアタックの合計は『4』。

 このダメージを、金髪イケメンには防ぐ手段はない。


 その一連の様子を見てから、俺は静かに目を閉じた。


(ありがとう金髪イケメン――ランクマをやってた時みたいに楽しかったよ)


 変にキザったいヤツだった。

 でも、良い奴だった。


 コリートさんみたいに。

 いや。

 もしかしたら、コリートさん以上かもしれない。

 かつての懐かしさを思い出させてくれたことに心で感謝して。

 目を開けば、そこには俺のユニットの攻撃を受ける金髪イケメンの雄姿が映っていた。








 『死皇帝の使い魔』

 アタック2


 『ブラッディガール・リリィ』

 アタック2


 金髪イケメン

 ライフ3→0



















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