第74話 小さき鬼は王様
「僕の、ターン……ドロー!」
金髪イケメン
マナ0→4
手札7→8
デッキから一枚のカードが舞い、静かに金髪イケメンの手札に収まる。
そのカードを見た金髪イケメンはちょっとばかり目を開くと、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
もしかして、来るのか?
「いいだろう。君がそう来るなら僕もそれに答えるのみ!」
「ほむ?」
「僕は1マナを使い、手札から『モブゴブリン』を召喚!」
金髪イケメン
マナ4→3
手札8→7
『モブゴブリン』
コスト1/土属性/アタック1/ライフ1
【効果】
①このユニットが破壊された時に発動する。カードを1枚ドローする。その後、手札を1枚選んでデッキの下に置く。
「さらに! 僕は1マナで『ゴブリン』を召喚!」
金髪イケメン
マナ3→2
手札7→6
『ゴブリン』
アタック1/ライフ2
「そして! 最後に2マナを使い『ホブゴブリン』を召喚する!」
金髪イケメン
マナ2→0
手札6→5
『ホブゴブリン』
コスト2/土属性/アタック2/ライフ2
【効果】
①このユニットが破壊された時に発動できる。カードを1枚ドローする。
これで遂に三体の『ゴブリン』ユニットが金髪イケメンのバトルゾーンに並ぶ。
ということは、だ。
(『ゴブリン』ユニットが三体……来るぞ!)
ニヤリ、と笑みを深める金髪イケメン。
その仕草から『ヤツ』が来ることを直感した俺はクッと唾を嚥下した。
「見せてやろうじゃないか! 僕は手札から――『キングゴブリン』の効果を発動!」
シューッと金髪イケメンの掲げたカードが光を放ち始める。
「このユニットは自分のバトルゾーンにいる『ゴブリン』ユニットを3体破壊することでノーコスト召喚できる! 僕は『モブゴブリン』『ゴブリン』『ホブゴブリン』を破壊する!」
金髪イケメンがそう叫んだ瞬間、バトルゾーンに並んでいた三匹の小鬼が眩い光と共に弾ける。
同時に。
弾けた光は消えることなく一つ、また一つと集まり始めた。
「小さき鬼の魂。今ここに集いて王杖を掲げよ! ノーコスト召喚! 現れろ! 『キングゴブリン』!!」
集まった小さな光が、少しずつ大きな光へと変化していく。
やがて。
大きく膨らんだ光の中から一匹の小鬼が現れる。
自身の背丈よりも長い豪華な杖。
自身の頭よりも大きな王冠。
何もかも不釣り合いな小さき『王』は、静かな唸りと共にその姿を現した。
『キングゴブリン』
コスト7/土属性/アタック5/ライフ10
『ガード』
(やっぱ来たか……!)
そう。
小鬼の王である『キングゴブリン』。
あのカードこそが『ゴブリン』デッキの核にしてエースなのだ。
高いステータスで『ガード』持ち。
しかも厄介な効果まで持ってると来た。
『ゴブリン』デッキを当時の環境トップ……までは行ってないか。
でも、環境に食い込むくらいの影響力はあった。
それぐらいのパワーを持っている、ということだ。
ステータスもそうだが、効果も効果なだけに出せた時の安心感もひとしおってヤツだろう。
その証拠に金髪イケメンは余裕のある笑みを浮かべていた。
「ふっふっふ。どうだ! この僕のエースたる『キングゴブリン』の姿は!」
「たくましいと思うぞ。うん」
「そうか!? そうだろう!?」
「あぁ、おう……」
ヤバイ。
適当に相槌打ったら意気投合したみたいになっちゃった。
お、俺は別にゴブリンとかす、好きじゃないから。
ほ、本当だよ?
まあ嫌いでもないんですけどね。
俺が好きなのは……なんでもないです、はい。
「おほん。さて! 僕は破壊されたゴブリンたちの効果を発動! まずは『モブゴブリン』の効果によって1枚ドローし、手札を1枚デッキの下に戻す!」
手札5→6→5
「続いて『ゴブリン』と『ホブゴブリン』の効果によりカードを2枚ドローする!」
手札5→7
マジで手札減らねぇなオイ。
「そして、アタックフェイズ! ……と、言いたいところだが、『キングゴブリン』はバトルゾーンに出たばかりだから攻撃ができない。よって、このままターンエンドとさせてもらおう!」
そうしてくれなきゃ困る。
「じゃあ、俺のターンだな。ドロー」
クロハル
マナ0→4
手札3→4
(さて、どうしよう)
デッキのカードが手札に入ったことで俺の手札は全部で四枚。
フィールドには『苦鳴の龍ベルギア』『スターヴ・ゴースト』『死皇帝の使い魔』『ブラッディガール・リリィ』『死皇帝の側近』の五体。
そして、墓地には『死皇帝の愛犬』と『死皇帝の愛猫』。
状況的に悪くはない。
デッキを回すために必要な最低限のリソースは確保できてるし、ハンドにも余裕がある。
フィールドにいるユニットで総攻撃を掛ければ全部でダメージは『14』。
ライフが『11』しかない金髪イケメンを余裕でボコれる数値だ。
(ただなぁ……)
チラリと相手の盤面に立つ『キングゴブリン』を見る。
厄介だ。
マジで厄介だ。
『ガード』持ちである以上、俺のエースであるベルギアの攻撃はほぼ通らないと見てもいい。
しかもステータスで完全に上から叩かれる始末。
となれば通るダメージは『10』点。
なんと金髪イケメンのライフを綺麗に削り切れない数字である。
(あのさぁ……マジでふざけんなよ妖怪『1足りない』ぃぃぃぃぃぃ!!)
そう考えるとどうしてもその『1』点を詰めるためのカードが欲しい。
だけど、そこで今度はネックとなるのが『キングゴブリン』の効果。
『キングゴブリン』が持っている効果は二つあって。
そのうちの一つは正直言って、どうでもいい。
問題なのはもう一個の効果の方。
その効果を使わせなきゃベルギアの効果が通らない。
「はぁ……」
マージでめんどくさい。
溜め息をついた俺はとりあえず一枚のカードに全てを掛けてみることにした。
「俺は1マナを使い、手札から『不等価交換』を発動」
クロハル
マナ4→3
手札4→3
「カードを1枚ドローし、その後に手札を2枚捨てる」
手札3→4→2
(ダメ、かぁ)
ドローしたカードを見て肩がっくし。
うん、どうしよう。
本当は『苦痛の一撃』あたりのカードが欲しかったんだけど来なかった。
こうなったら諦めるしかなさそうだ。
「仕方ない……このままアタックフェイズ。俺は『苦鳴の龍ベルギア』で相手に攻撃」
「ならば『キングゴブリン』でガードさせてもらおう!」
「ですよねー」
俺の声を受け、翼を広げて金髪イケメンに飛び掛かる『苦鳴の龍ベルギア』。
しかし、突貫虚しく俺のエースは『キングゴブリン』の思いっきり振り下ろした杖で返り討ちにされた。
『苦鳴の龍ベルギア』
アタック4/ライフ4→アタック4/ライフ0
『キングゴブリン』
アタック5/ライフ10→アタック5/ライフ6
パリン、と音を立ててはひび割れる。
体が砕け、光の塵となった『苦鳴の龍ベルギア』はそのまま静かに姿を消す。
それを見た金髪イケメンの顔に喜色が浮かんだ。
「どうだ! 見たか!? これが僕のエース『キングゴブリン』の力だ!」
「そうだな」
正直、予想できてたからちょっと嫌だなくらいにしか思わない。
俺は気を取り直してピシリと指を伸ばした。
「まだ俺のアタックフェイズは終わってないぜ。続いて『スターヴ・ゴースト』で相手に攻撃!」
「へっ? うぐぉ!?」
『スターヴ・ゴースト』
アタック4
金髪イケメン
ライフ11→7
「さらに『死皇帝の使い魔』で相手に攻撃!」
「うぶぉ!?」
『死皇帝の使い魔』
アタック2
金髪イケメン
ライフ7→5
「『死皇帝の側近』で相手に攻撃!」
「うぎぉ!?」
『死皇帝の側近』
アタック2
金髪イケメン
ライフ5→3
「最後に『ブラッディガール・リリィ』で相手に攻撃!」
「ふびぉ!!」
『ブラッディガール・リリィ』
アタック2
金髪イケメン
ライフ3→1
「……ふぅ」
これで全部、だな。
攻撃が終わったので軽く一息。
あとはターンエンドの宣言をするだけ。
このターンでは仕留めきれなかったけどここまで来れば次のターンで確実に終わる。
そう頭の中で未来地図を描いた俺は、そっと手のひらを向ける。
「これで俺はターン終了。エンドだ」
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