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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~ニューカラーズ・エントリー~
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73/92

第73話 パワカの洗礼






 頭にホームランをかまされたエセ商人が膝をつく。

 ホログラムが揺らぎ、光の粉となってその姿が消えた。


「破壊されたことで『死の商人ドエグ』の効果を発動。ドロップゾーンのカードを1枚デッキの下に戻す」

「ほう? 妙な効果をしているね」

「俺もそう思うよ」


 とりあえず戻すのは裏向きになった『死皇帝の家臣』。

 『死の商人ドエグ』に関しては出た時の墓地肥やし効果のことも考えれば一応プラマイゼロくらいにはなるからそこまで気にしたことはない。

 まあたまに使いたくない時もあるんですけどね。

 『できる』じゃなくて『する』って書かれた効果だから使わなきゃいけない絶望……。

 こいつのせいでギリギリだったところに『タイムアウト』を叩き付けられた悲しみを俺は忘れない。

 強制効果は悪の文化だと思うます。


「僕はこれでターンエンドだ」

「じゃ、俺のターン。ドロー」


 クロハル

 マナ0→3

 手札5→6



(さて、どうしようか)


 金髪イケメンが取った選択は『ユニットの有利』。

 ユニットの数自体は同じだけど質で見れば相手の方が上。

 一応、こっちのユニットを全部ぶつければフィールドを空っぽにできるけど、ハンドが増えるのはちょっとなぁ。


 ヤツが使う『ゴブリン』デッキは土属性のテーマデッキ。

 要するに、いきなりライフを削られる心配はない。

 ヤツのエースモンスターが厄介ではあるけど、落ち着いてプレイすれば大丈夫。多分。


「俺は2マナを使い、手札から『死皇帝の側近』を召喚」


 クロハル

 マナ3→1

 手札6→5


 『死皇帝の側近』

 コスト2/闇属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 『ガード』

 ①このユニットはドロップゾーンから召喚できる。

 ②1ターンに1度だけ発動できる。デッキの下からカードを1枚ドロップゾーンに送り、カードを1枚ドローする。その後、自分のライフに2ダメージ与える。


「そして、『死皇帝の側近』の効果発動。デッキの下からカードをドロップゾーンに送って1枚ドロー。ついでに自分のライフに2ダメージだ」


 手札5→6

 ライフ15→13


「いいのかい? そんなにライフを減らして」

「まあな」


 カードゲームにおいてライフは投げ捨てるもの。

 死ななきゃかすり傷だからね。仕方ないね。

 それに良いカードも引けた。


 さあ、見せてやるぜ。

 たった十枚ちょっとのカードでデッキをぶん回せる化け物テーマ『死皇帝』のパワーを!


「残った1マナを使い、手札から『死皇帝の愛犬』を召喚」


 マナ1→0

 手札6→5


 『死皇帝の愛犬』

 アタック1/ライフ1


「手札を1枚捨て、『死皇帝の愛犬』の効果発動。デッキからコスト3以下の闇属性ユニット『ブラッディガール・リリィ』を手札に加え、自分のライフに2ダメージ」


 手札5→4→5

 ライフ13→11


「この時、手札の『ブラッディガール・リリィ』の効果発動。ライフにダメージを受けた時、自分のライフが15以下であればこのユニットを手札からノーコスト召喚できる。来い、『ブラッディガール・リリィ』!」


 小さい光と共に広がる黒い影。

 そこからひょっこりと顔を覗かせたのは、一人の少女だった。


 黒いドレスに紅い髪。

 小さいながらも妙に色気のある小悪魔な少女は指を頬に添えてパチリとウィンクする。


 手札5→4


 『ブラッディガール・リリィ』

 アタック2/ライフ2


『ウフフフフ』

「そ、そのユニットは……?」


 金髪イケメンはどこか困惑してるようだけど、もしかしたら見慣れないカードだったのかもしれない。

 俺もこのカードを手に入れたのは最近だったしね。


 だがしかし!


 こいつはかつて最高レアリティの一つである『SR』を与えられたカード。

 そのパワーは見た目以上に――凶悪だぞ? 


「『ブラッディガール・リリィ』の効果、発動! このユニットがバトルゾーンに出た時、自分のユニットを1体破壊することで――デッキからコスト3以下のユニット1体をノーコスト召喚できる!」

「……はっ、なんだとっ!?」


 うん、そうなるよね。

 俺も最初に見た時は今の金髪イケメンみたいに白目を剥いた。


 何を隠そう、『ブラッディガール・リリィ』はデッキからコスト3以下のユニットであればなんでも持ってくることができるのだ。

 普通に化け物。

 おかげで当初は『ブラッディガール・リリィ』の入ってないデッキは存在しなかったレベルだ。

 一時的ではあるけどデッキへの投入率100%を達成したカードはこの『ブラッディガール・リリィ』だけだったりする。

 アタオカかな?

 もちろんフルパワーで使えるのは闇属性デッキだけだったけど、効果が効果なだけにコイツは普通に入れても強かった。

 その暴れっぷりで『流制の水龍フェイ・ターク』と同じく制限になったカードでもある。

 妥当である。


「俺は『死皇帝の愛犬』を破壊し、デッキから『死皇帝の愛猫』をノーコスト召喚」


 『死皇帝の愛猫』

 アタック1/ライフ1


「コスト1のユニット……?」

「いいんだよこれで。バトルゾーンに出た『死皇帝の愛猫』を破壊して効果発動。デッキからコスト5以下の闇属性ユニット『死皇帝の家臣』をドロップゾーンへ送り、自分のライフに2ダメージ」


 ライフ11→9


「……ふう」


 墓地には『死皇帝の家臣』が二枚。

 ライフは『10』以下。


 ようやく、状況が整った。


 手札の中に眠っていた一枚のカード。

 それに目を配った俺は、思わず口角を吊り上げた。


「まずはドロップゾーンにある二体の『死皇帝の家臣』の効果を発動。そして――」


 ドクン、と不意に高鳴る胸の鼓動。

 奥底から湧いてくるような熱い何かに震えながら、


「いくぜ。コストを-4し、手札から『苦鳴の龍ベルギア』をノーコスト召喚だ!」


 指を走らせる。


「今ここに苦痛の叫びを響かせろ! ノーコスト召喚! 来い――『苦鳴の龍ベルギア』!!」


 フィールドに落ちたカードが黒い光を放ち、一体の龍を顕現させる。


 枯れ枝のように細い手足。


 獲物を射殺さんとばかりに鈍い光を映す紅い双眸。


 それでもなお。


 艶やかな黒い鱗で身を包んだ龍は、闇よりも暗い黒翼を大きく広げた。



 手札4→3


 『苦鳴の龍ベルギア』

 コスト6/闇属性/アタック4/ライフ4

 【効果】

 ①このユニットは自分のライフが10以下であれば召喚コストを-3して召喚できる。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時、または、自分のライフにダメージを受けた時に発動できる。相手のライフと相手のバトルゾーンにいる全てのユニットに3ダメージ与える。




「そ、そのユニットは一体!?」


 金髪イケメンが俺の召喚した異様なユニットを見て、顔を強張らせる。

 だけど、俺のターンはまだ終わってない。

 俺は頼れる相棒の背中越しに相手を見つめながらゆっくりと片手を伸ばした。


「バトルゾーンに出た『苦鳴の龍ベルギア』の効果発動! 相手と相手のバトルゾーンにいるユニット全てに3ダメージを与える! 行け! 苦痛の咆哮!」


『グッガアアアアアアアアアアアアア!!!!』

「うぐぁぁぁぁ!?」


 金髪イケメン

 ライフ20→17


 そのか細い喉から溢れ出すは黒塗りの衝撃波。


 痛みを伴う苦龍の一撃に膝をついた金髪イケメンはフィールドに目を向けると――その目を大きく見開いた。


「なっ!? ぼ、僕のユニットがっ……!?」


 金髪イケメンと同じように膝をつく二体の『ゴブリン』ユニット。

 しかし、そのどちらも耐えられなかったかのように小さな光となって姿を消す。

 その有様を、金髪イケメンは呆然とした表情で見つめていた。


 『バットゴブリン』

 ライフ2→0


 『アックスゴブリン』

 ライフ2→0


「……これで一旦、俺が有利になったかな」

「くっ……破壊された『バットゴブリン』と『アックスゴブリン』の効果でカードをドローする」


 金髪イケメン

 手札5→7


 さて、これで俺にできることはなくなった。


 一通りの処理も終わったことだし、




 ――攻撃するか!




「アタックフェイズ」

「……は?」

「俺は『スターヴ・ゴースト』で相手に攻撃」

「うぐぅ!?」


 『スターヴ・ゴースト』

 アタック4


 金髪イケメン

 ライフ17→13


「さらに、『死皇帝の使い魔』で相手に攻撃」

「うぶぁ!?」


 『死皇帝の使い魔』

 アタック2


 金髪イケメン

 ライフ13→11


「これで俺はターンエンドだ」


 さあ、どうする?

 『苦鳴の龍ベルギア』の背中から問い掛けるように目線を投げつける。


 まだ決着はついてない。

 佳境に入っただけで、勝負はまだ終わっていないのだ。


 だからこそ問い掛ける。


(まだやれんだろ?)


 対する金髪イケメンは肩で息をしながらも――俺のことを見つめていた。






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