第72話 お坊ちゃまは癖が好き?
できるうちに投稿しておこう大作戦。
手札に来たいくつかのカードを選んでデッキに戻す。
するとすぐにデッキから戻した分のカードが返ってきた。
ほんと便利だよなー、このシステム。
名前忘れたけど。
だってほぼ全自動で処理してくれるんだもん。
なんだったらカードに直接触る必要もないときた。
科学の力ってすげー。
で。
どうしてこうなったんだろう。
手札交換を済ませた俺はふと対面に立つ金髪ロールバックイケメン男を見た。
(やる気満々って感じだなー)
相手も準備は終わってるらしい。
そのキザったらしい目がこっちを真っ直ぐに向いている。
……本当にどうしてこうなっちゃったんだろう。
試しに商品棚の後ろから覗いているシーラを恨みがましく睨んでみる。
おい、こっち見ろよ。
あ、目を逸らされた。
ふざけんな!
あと残ったのはバトル開始の合図だけ。
……ほんと、どうしてこうなっちゃったんだろうな?
「さあ、準備はいいかね?」
「ああ」
さあて、お手並み拝見としゃれこもうか。
「「カードスタンバイ! バトルスタート!」」
クロハル
ライフ20
マナ1
手札5
金髪イケメン
ライフ20
マナ1
手札5
「先攻はいただく! 僕は1マナを使い、手札から『ゴブリン』を召喚する!」
金髪イケメン
マナ1→0
手札5→4
『ゴブリン』
コスト1/土属性/アタック1/ライフ2
【効果】
①このユニットが破壊された時に発動できる。カードを1枚ドローする。
(え、イケメンのくせして使うのは『ゴブリン』なの!?)
おっといけない。
動揺してしまった。
そ、そうだよな。
癖なんて十人十色だもんな。
うん……。
小さな光と共に現れるずんぐりとした小柄な小鬼。
その緑色の肌とボロ切れの腰巻きはもはや様式美と言えるかもしれない。
おまけにこん棒付き。
まあ幾分かデフォルメ、というかマイルドにはされているけどね。
『男の人』から随分と人気のあるそのユニットを見て、俺はぶはーっと溜め息をついた。
うわあ。
これまためんどいデッキが相手だよ。
『ゴブリン』も『スライム』と並ぶくらい有名だったり、そうじゃなかったりするカードだけど『キンマス』じゃそうはいかない。
おそらく金髪イケメンが使ってくるのは『ゴブリン』テーマ。
同じ名前が入ったカードで構成されるテーマデッキは厄介だから困る。
「僕はこれでターンエンドだ」
「俺のターン。ドロー」
クロハル
マナ1
手札5→6
(さて、どうしたもんかねぇ)
フィールドを形成している水色のプレートに指を立ててトントントン。
相手の使う『ゴブリン』デッキの特徴は破壊する効果に強いこと。
おまけにリソースを集める力もそこそこあるから長期戦にも強い。
なのでできれば早め早めに圧力を掛けて行きたいところ。
なんだけどねぇ。
正直、こうやってもったいぶって指トントンしてるけど実は何もないんだよねぇ。
はい。
1マナで使えるカードがありません……。
完璧な手札だ!
マリガンした意味とは?
もう少し未来の環境だったらまだしも初期環境に近い今の環境だと長考はブラフにならない。
一応、2マナからは動けるので完全な手札事故ではないけども。
先手を取られた上に1マナからきっちり動かれたのは痛い。
どうすっぺ。
まあ、とりあえず、
「……ターン、エンドだ」
「ほう?」
なんか金髪イケメンもシーラも面白い、とでも言いたげにこっち見てるけどやめてほしい。
なにもできないだけなんです。
許してください本当にマジで。
「どういう作戦かは知らないが、精々潰させてもらおうか」
潰されるような作戦は何もないです。
「私のターン。ドロー!」
金髪イケメン
マナ0→2
手札4→5
「僕は2マナを使い、手札から『バットゴブリン』を召喚する!」
マナ2→0
手札5→4
『バットゴブリン』
コスト2/土属性/アタック2/ライフ2
【効果】
①このユニットはバトル中、アタックを+2する。
②このユニットが破壊された時に発動できる。カードを1枚ドローする。
『ゴブリン』の隣に小さな光と共にもう一匹の『ゴブリン』が現れる。
だが、その手には一本の細いバットが握られている。
多分名前の前後を入れ替えれば岩でも何でも壊せるんじゃないかな。
知らんけど。
「そして、アタックフェイズ! 僕は『ゴブリン』で直接攻撃!」
「うぐっ」
クロハル
ライフ20→19
いってぇ!
これタンコブできたりしないよな?
こん棒で叩かれた頭をさすさす撫でる。
叩かれた時の感覚あるの嫌すぎるんですけど。
システムにはそこらへんも頑張ってほしい。
「ふふん。これで僕はターンエンドだ」
まあいいや。
次のターンから本気出す。
「俺のターン、ドロー」
クロハル
マナ1→2
手札6→7
「俺は2マナで手札から『死皇帝の使い魔』を召喚」
マナ2→0
手札7→6
『死皇帝の使い魔』
アタック2/ライフ2
「『死皇帝の使い魔』の効果発動。デッキの上から3枚を見て、その中から一枚をドロップゾーンに送り、残りを好きな順番でデッキの下に戻す。その後、俺のライフに3ダメージを与える」
「なに……?」
金髪イケメンが訝しげに見てくるけど無視。
うちの『死皇帝』デッキはとにかくライフの消耗が早くて速い。
できればライフに余裕があるうちに準備を整えておきたい。
スススッと目の前に来た三枚のカードに目を走らせた。
(おっ、良いカードあんじゃーん)
俺はコイツにするぜ!
一枚のカードを選んで残りはデッキの下にバイバイ。
ちょうどカードがデッキの下に戻ったところで俺の体を黒い靄が包み込んだ。
クロハル
ライフ19→16
「この瞬間、俺は手札から『スターヴ・ゴースト』の効果発動。『スターヴ・ゴースト』をノーコスト召喚し、受けたダメージの分だけパワーアップ。おまけに召喚時効果で自分のライフに1ダメージ」
手札6→5
『スターヴ・ゴースト』
アタック1/ライフ1→アタック4/ライフ4
クロハル
ライフ16→15
「あ、アタック4……!?」
まだ終わっとらんよ。
「俺はドロップゾーンから『死皇帝の家臣』の効果を発動。このカードを裏向きにすることで、このターン中、俺は闇属性ユニット1体の召喚コストを-2できる」
「な、な」
「この効果を使い、手札からコスト2のユニット『死の商人ドエグ』をノーコスト召喚」
手札5→4
『死の商人ドエグ』
アタック1/ライフ2
「バトルゾーンに出た『死の商人ドエグ』の効果発動。デッキの上から2枚をドロップゾーンに送り、カードを1枚ドロー」
手札4→5
うん。
落ちがちょっと微妙だけど他は悪くないかな。
「俺はこれでターンエンド」
「くっ、僕のターン、ドロー!」
金髪イケメン
マナ0→3
手札4→5
「むむ……」
五枚もの手札を扇状に展開させた金髪イケメンの目が、手札とフィールドを行き来し始めた。
そんな悩むことある?
確かにうちの『スターヴ・ゴースト』は中々のステータスだけどぶっちゃけ効果なしのユニットとそこまで変わらない。
質だけで見るなら正直、金髪イケメン側の方が有利とまで言える。
しかも俺のライフは残り『15』。
俺のデッキの特性も含めればポコポコ顔面を殴るだけですぐにライフ消えるぞ。
「……僕は3マナを使い、手札から『アックスゴブリン』を召喚する」
金髪イケメン
マナ3→0
手札5→4
『アックスゴブリン』
コスト3/土属性/アタック2/ライフ2
【効果】
①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。手札、または、バトルゾーンにいるユニット1体を選んで破壊する。その後、このユニットのアタックを+2する。
②このユニットが破壊された時に発動できる。カードを1枚ドローする。
今度は斧持ちかぁ。
しかも、こいつはこいつでめんどくさい。
「召喚した『アックスゴブリン』の効果を発動! バトルゾーンにいる『ゴブリン』を破壊し、このユニットのアタックを+2する!」
『アックスゴブリン』
アタック2→アタック4
「さらに破壊された『ゴブリン』の効果を発動! デッキからカードを1枚ドローだ!」
手札4→5
あぁぁぁぁダルいぃぃぃぃ!
そう、そうなんだよ。
なんか知らないけど破壊されたらドローできるせいでハンド減らないんだよ。
ゴブリンのわらわら増殖するイメージをドローで再現しないで欲しい。
どうせ増殖するなら……いや、なんでもないです。はい。
「さあ行かせてもらおうか」
(来るか)
おそらくアタックフェイズに移るはずだ。
『アックスゴブリン』は召喚したばかりで攻撃はできない。
今、攻撃ができるのは『バットゴブリン』だけ。
俺のライフを削るか。
それとも、俺のユニットを減らすか。
どう来る?
「アタックフェイズ! 僕は『バットゴブリン』で――
――『死の商人ドエグ』を攻撃する!」
そう来たか。
黒いターバンを着たエセ商人。
その頭を思いっきし勢いの付いた細いバットが打ち抜く。
フルスイングをかました『バットゴブリン』の表情はどこか晴れやかだった。
『バットゴブリン』
アタック2/ライフ2→アタック4/ライフ1
『死の商人ドエグ』
アタック1/ライフ2→アタック1/ライフ0
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