自己犠牲の思い
何も、わからない。何も、知らない。でも何か、悲しい。なんなんだ、これは。まるで、わからない。
「もう、天災は終わった。なあ、お前、本当に何もかもを忘れたのか?俺は聞くぞ、もう終わったからな、少しの希望も捨てやしない、なあ文也、忘れてないよな…お前は!!」
なんの…話だ、やめてくれ、痛い。やめてくれ、痛いんだ、やめてくれ。
「嘘だと言ってくれ、お前はそんな人間じゃないだろ、なあ!!」
「もうやめてくれ、気持ち悪いんだ、痛いんだ。わからないんだ、お前が嘘を言っているようには思えない、でももうやめてくれ、嫌なんだ、これは。痛いから、嫌なんだ。覚えてないんだから、もういいじゃないか…それにお前は俺じゃない、もういいだろ、ゼル」
「ふざけるなよ、おい。逃げるなよ、'彼女'から!」
彼……女?俺に、そんな人はいない。少なくとも俺の記憶にはいない。もう、やめてくれ。
「何度だって言ってやる、無い物を仕方ないで諦めるな、今すぐじゃなくていい。でも、頭には絶対に入れておけ、お前の大事なものは、何があっても手放すな。」
重い…とてつもなく重い言葉、わからない、なんでわざわざ…そんな事を?
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蒼く澄み渡る空、亀裂が入っている地面、薙ぎ倒されている木々…そして、手に握る……何かの核。
不思議と、喰う気はしない。いや、喰いたくない、なんでか…それはわからないが、その方が、いい気がする。
何か、力を感じる、この核は…なんなんだろうか、とりあえず……帰るとするか…その方が、いいんだよな、多分。
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「王の、凱旋だ…自分で言うのもどうかしてるがな。」
次々に、魔物や天災によって、壊されていく。直しても、直しても、嘲笑うように、壊していく。
人間は…弱い、俺たち転移者も、こんな特別な力が無いなら…弱い。そもそもで元いた世界の肉体を持って来てるんだ、その影響も少なからず受ける。
だから、弱いままでいれない。付け入る隙を作るな、防戦一方なら擦り殺されるだけだ、この世界、どこを見てもあんな暗く澱む世界見たことがない。
つまり別世界だったりそういった類のものなんだろう、そこに、乗り込む準備だ。
まともに考えて世界を渡ることはできないだろう、だが現に来ている。デリモが渡って来たあの門、あそこに入れたら或いは…いや、ないなら作ればいい。
管理者であるチェタス、あいつを喰えば全てが上手くいくはずだ、一回だって、無駄にはできない。
……ここだな、どうしても、何をしても開かなかった扉、石の扉。ここだけ、だがこの先、この奥、この扉の先の先、何かがある。
「"アポカリプス・ソウル"、ぶち壊す、この扉を。」
…硬い、本気で破壊しようとしているのに傷一つつかない。どうなっているんだ、この扉は。少し、少し本気でぶっ壊す!
「力借りるぞ、ゼルス、レザイア。"絶食の暴腕"!!」
…まさか、これでもダメとはな。どうやって壊せばいいんだ、これを。
「鍵とかそんな感じなんじゃないのか、横着はよくないぞ。」
「なんで、お前がここにいる、翔也。」
「凄い音がするから見に行けと、ちょっとどいてみ、腐らしてみる。"腐敗する材"……ダメらしい、なんなんだこれ。」
この建材、この世界のものじゃないのか…?……わかるか、ゼルス、これが何か……そうか、やっぱりわからないか、それだけわかれば十分。
これは、この世のものじゃない、以前の勇者が作ったもの…喰えもしない、放置するしかない…か。
「仕方ない、もう戻ろう、壊せないし喰えもしない。」
「了解……お前、なんか変わったな。なんていうか…悩みでも解消されたか?…冗談だよ、何かあるなら言ってくれ、力になれるかもしれないからな…。」
…案外、わかりやすいものなんだな、俺…それほどに、苦手なんだろうか、ポーカーフェイスが。
「ああ、なら聞いてくれ、ずっと、悩んでいたことがあったんだ。お前は、なんだか、昔からの友人のような気がするから話す。実は、それがあってるかわからないんだが女の友人がいた気がするんだが、その記お」
「ここにいたんですか王!隼人が…隼人様がまた、何かを書いたものを持って来ました!」
「…わかった、文也、行ってこい。俺は周囲の警戒に回る、ここの城、ほとんどが石とレンガだ、燃えることはないとはないと思うが今何か焦げたような匂いがした、早く!」
「わかった、すまない。どこにいる、隼人は!」
…すまないな、せっかく聞いてもらおうとしたのに、タイミングが最悪すぎた。それにしても、彼方からはこっちの状況がわかってるようなタイミングだ。
天災が終わり、その直後。以前もそうだ、全て、わかっているようなタイミング。となるとやっぱり何処かに何かがある、門か、扉か、とにかく何かある。
「隼人…お前、なんのためにこんな事をする、理由によっては殺す!」
「殺せない、僕を殺す事はあなたにはできない。何故かって?貴方は夢を見過ぎだから、強欲過ぎるから、身の程を弁えないから。貴方の力は貴方一人の力、誰かと一緒にいたところでそれは不変、人一人分の命はそれ以上にもそれ以下にもならない。
それなのに貴方は、それを覆そうとしている、思いあがらないでください、ただの人間風情が。僕は身の程を弁えています、だから強い方についた、元の世界に帰るために。いいですよ、こっちは、人を奴隷のように使える、なんだってできる。面白い、あの叫び、悲鳴、全部、全部。種類で見たらおんなじ人間が出すもの、それなのに聞けば十人十色、聞き飽きない!
空腹時、満腹時、絶望している時、希望をちらつかされた時、目の前で愛するものを殺した時、目の前で愛するものを汚した時。面白い、どうです、貴方は強い、人にしては…ですが。こちら側に相応しい、そもそも貴方は…こちら側だ。」
「腐れ切ってる、お前と、一緒にするな、人間の屑なんて者で表すことなんて出来ない、こっちに、こい!引き摺り出してやった、さあ始めようか。ゼルス、レザイア、少し、本気でやらしてくれ。"絶暴を僻む終わりなき苦難"!!お前だけは、許すものか!!」
こいつは、殺せない、それは正しい。だが、それより苦しい痛みと絶望を与える事は出来る、許さない、人間として思うな、こいつは…魔物だ。
「では、二対一ですね、面白くなって来ましたよ、フェアな戦いをしましょう、"聖戦の闘技場"。」
何がフェアだ、スキル名がアンフェアじゃないか、クソ、どっちも一体だけならまだしも二体となると正直厳しい…エルレタールと離れるんじゃあなかった、クソ!
「貴方は一人で戦うつもりだ。」
「誰にも迷惑をかけたくないから。」
「それができるならこうはなってない。」
「僕たちの天敵なんですよ貴方は。」
「だからここで、早めに貴方を、」
「「消す」」
…マジの目だ、前と後ろ、俺の前に隼人、後ろにデリモ。ここまでか?いや終わるわけにはいかない、一人で二人を倒せばいいだけ、俺の中には五人分の力がある、終われるか、こんなところで。
「やれるものならやってみろ、俺はお前らを倒す、一人の人間として。ゼルス、アポカリプスを喰らえ、"アポカリプス・ソウル"。俺を侮るなよ、"天元解放・ソウルイーター"!!
たとえこの力が禁忌であろうと、代償があろうと、お前らを倒すためならこの身、くれてやる!」
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ほら、また言った、その言葉。




