大戦の前触れ
…オークの軍、討伐完了…か。ほとんどレジリアがやってくれたな、俺…まともに鎌すら振るえなかった……ほとんど使ってたのは敵が落とした剣や槍、持ってた刀だ……全ステータス上昇、これを抜きながらなら、鎌だって使えるんじゃないか。
「….なあ、人間。お前が誰だかわからない、だが、まだやるって言うなら俺にも手がある。誰だ、お前、こんな事をしてタダで済むと思うな…と言いたいが俺はお前に対して試したい事がある。全てを話すんで有れば、命まではとりはしない。」
背中に掛けた鎌を右手で持って、左手で腰に掛けてる刀を居合の型のように持つ。抜刀した瞬間突っ込む、距離を詰めたらすぐに鎌で叩っ斬る、机上の空論かもしれないが今の俺が戦うにはそれしかない。どんな事をしてでも、戦うには全てを使わないとならない。
「今が好機、そう聞いたのですが…どうやらスパイも役に立たないらしい。隼人様と……危ない、危うく機密情報を喋るところで…早いですね、まさか背中に背負った鎌がブラフ目的じゃなく戦う為のものとはな…。」
「ほざけ、低脳が。どういうわけだか知らんがお前…っ、やらせるか……鎌も、刀も…壊されただと!?」
「あれ?その武器…本物だったんですか?隼人様曰く一番の危険人物は貴方と聞きましたが…僕が殺せちゃいそう、"ディメンションスレイ"!」
そのスキル…隼人の…!?いや、それよりも強い。いや違う、今まで、今まであいつは…隼人はずっと、裏切りをするために今この時を求めて、ずっと…ずっと、俺たちは掌の上で転がされていた…!
「…貴方、知らないんですか。この国も、どうかしてますね。今回の奴らはゴミばかりと思っていましたがなんという事があってこうなったのでしょう、とても、面白い、"究極魔法・アルテマ"。」
アル…テマ、勇者にのみ使用が許される究極の魔法、それがどうしてこいつが、ただの…ただの人間ではないか。一体どうして、なんでだ、今の俺にこれは…止められない。そもそもどうしてオークの軍を人間が引き連れている…待てよ、全部が…ゆっくり?今までの……記憶?胸糞悪いものから…何か大事なものまで…なんなんだ、これは。少しずつ、少しずつエネルギー体がこっちに…何を、何をされて…!?
「もう遅い、如月 文也に、レジリアさん。」
直撃…っ!!!これは、死ぬ…!
「……ああ、あぁ………クソっ…。即死級の攻撃…なら、一発は耐えれるのか…レジリア、大丈…っ!?」
「ただの生命体です生き残れるわけないでしょう、即死でしょうよ。貴方は…即死級攻撃を受けたら1耐える、そんな感じのパッシブですか。ならもう一度、"究極魔法・アルテマ"!!」
まだ、まだ撃つつもりか…!魔法瓶も無い、魔法を撃つMPも、そもそも撃つ事もできない。俺はここで終わるのか、こんなところで…!!
「…何か、何か企んでる顔ですね。なら追加の魔法も与えましょう、"二連究極魔法・ツインアルテマ"!!」
これをもらったら確実に飛ぶ、どうする、どうしたらいい、一体……っ!
「……あれ、死んで…ない?どういうか…そこの絶華族も生きてる…!?な、何をした、お前!!」
…生きてる、なんでだ、SPが。溜めていたSPが思いっきり減っている、何十万もあったのが、数百に…それと同時に…HPが全回復して……….
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「起きろ、お前の中の全てが今、吐き出された。次からは気をつけろ、こんな事を何度もやっていては身体が持たない。だが今は、その戻ってきた力を使って倒せ、あの人間を。」
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ああ、わかった、任せろ。お前が使えるのであれば何の問題もない、俺を喰らえ、ゼルス。右腕だけ、ただの異形化じゃ届かない、お前の力がいる。
「底の底まで食に飢えたこの世全てを喰らう絶食の欲と生きるために喰らわなければならない矛盾をも喰らいて無二たる唯我と顕現しろ、絶食の贄となり、腐りて我が力となり世界を回す一部となれ!"絶食のソウルイーター・ゼルス"!!」
負荷が、これ以上無いほどに大きい。まともに立つのでやっとの力、こんなところで使う分にはあまりにも強大すぎる。だが一度も戦った事がない上に、勇者しか使えないはずの究極魔法。何もわからない、そんな奴を相手に戦えるわけがない。ただの普通の力であれば、だがな。
「ソウルイーター…だと、貴方、貴方のアビリティはソウルイーター、絶食は…ゼルスは既に死んでいるはず!!」
「何が言いたいかわからないが、俺は如月 文也、アビリティはソウルイーターだ。そして、ゼルスは俺の仲間で、俺を今まで助けてくれた、」
「「俺の相棒だ、」」
「ゼルス!!」
「文也!!」
「何が言いたいか知らないが、この一撃は耐えられまい!"神雷多段術式究極魔法・クアドラプルアルテマ・オーバーサンダー"!!」
空より空、上より上、どこから飛んでくるかもわからない果ての果てより多段の術式を造り出して何乗にも火力を上げる…だが俺たちを越えられると思うなよ、人間。
「レジリアを頼むぞ、俺の右腕、ゼルス。」
「愚問だ、相棒。」
「「名も無き罪人に与える罰は我らが贄となる最上級の慈悲だ、感謝し続けるがいい、罪人よ、永久に我が血肉となり力となれ!"絶食の捕食者"!!」
渇き切った土に水がすぐに染み込むように、当然のように、喰らった。染み渡る力、記憶、その全て。だがこいつもラルカの時と同じように…記憶が、一瞬で消えた。俺のところに移した記憶すらも、もう思い出せない。なんなんだ、一体、こいつも、ソウルイーターも。
「…お前、名前は。」
「トレス……いや、なんだろう、何か……何かを忘れている。ここは、どこなんですか、周りの惨事と…空から何かが…」
まずい、対処を忘れていた!ゼルスは既に引っ込んだ、だがこのソウルイーターの腕があるなら俺は、喰らえる!
「勘違いするな、お前には罪を償ってもらわないとならない、その為に今死なれるわけにはいかないんだ、そもそもこれだってお前が出したものだ!」
「僕が…こんな魔法を……!?」
ああクソ、何も覚えてないのか。やってられない、なんなんだこいつ、どうなってんだ…クソ!
「ああ見つけましたよトレスさん……あれ、文也様じゃありませんか…あれ?トレスさんもしかして…まあいいです、あなたはこっち。それじゃあまた今度、邪魔は良くないですからね。今のうちに殺そうとしましたが後ろからの殺気にすこし恐れてしまいました。ので、さようなら…。」
「待て、そいつを返せ、そいつは人間だぞ!おい!」
持っていかれた、しかし逆にいいことでもある。あの人間、トレスとかいうやつは俺たちの敵、何か重大なことを知っている…アルテマは一応、どうにか……できたが、右腕…少なからず影響を受けている。とりあえずレジリアの安否、そして…誰かに知らせないと、なんなんだよ、ああクソ!
「大丈夫か、レジリア。馬車まで運んでや」
「…ん、問題…ありません。文也様のおかげでHPもこの通り全回復しています、ですので文也様は休んでてください。」
「ああ、そうか。なら、頼んだ、なるべく早く頼む…大規模な人間の裏切り…いや、人類対魔王、その大戦が、近いかもしれない…。」
ゼルス、お前が言っていたのはこれのことか…。多すぎて、どれがどれなのかわからないんだ…がな、はは……運が良かった。クソ、なあゼルス、お前…知ってんだろ、教えてくれよ、何があるのか…
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「ん…どうした、レジリア。」
「良かった、目が覚めたんですね…。」
…そうか、途中で寝てしまったのか。最近疲れが相当溜まってる、だが止まるわけにはいかな……いや、気のせいだろう、寝不足だ。
「すまないな….何度も何度も、このままだと本当に死んだとしても放っておかれそうだ。」
「そんなことしません!」
「ああ、わかってる、ありがとうな、レジリア。」
馬車を漕いでもらってはいるが相当疲れていたんだろうな、あのスキルは負荷がすごい。まだ…まだ右腕が思うように動かない、これが、代償としては安い、俺は何を、何を…取られたんだろう。何を喰って、この力を引き出したんだろうか…何を………。




